新書大賞 2014の大賞に選ばれた里山資本主義 日本経済は「安心の原理」で動く (角川oneテーマ21)
を読了したので、その簡単な感想と読書メモを公開しておこうと思います。
本書はひとことで言ってしまうと、木質バイオマス発電の紹介本といったところかな、と。
また本書で紹介されている銘建工業については日経でも(人間発見)里山の可能性を信じてという連載で社長の中島浩一郎氏のインタビューが紹介されていたりしました。
個人的に覚えておきたい本書のキーワードをメモっておくと、
- エネルギーの地産地消
- ベース電源は原子力発電
- 日本の強みは省エネ
- 少ないエネルギー消費で問題を解決できる工夫がより必要
- 個人レベルでは、エネルギーを使わない努力(節電)
では、以降ご参考までわたしの読書メモです。
はじめにー里山資本主義のススメ
➤経済100年の常識を破る
- 便利な都会暮らしを捨て、昔ながらの田舎暮らしをしなさいというわけではない
- 経済の常識にとらわれている人のイメージ
- もっと稼がなければ、高い評価を得なければと猛烈に働いている人、帰って寝るだけの人
- (経済の常識なのか、それ…)
- ここで大事な点は猛烈に働いている彼は、実はそれほど豊かな暮らしを送っていないということ
- 今の経済は「ちまちま節約するな、どんどんエネルギーや資源を使え。それを遥かに上回る利益をあげればよい。規模を大きくするほど利益があがる。それが豊かということ」という生活を奨励している
- (奨励しているかは知らないが、それが基本的な資本主義だろ)
- 猛烈に働いていた青年がリストラされて田舎に帰り、田舎暮らしによって豊かになった話ー6
- →しかし、これが都会でできないと意味がないのでは?と
- グローバルな経済システムに組み込まれる中で、仕方がないと諦めていた支出を疑い、減らしていけば豊かさを取り戻すことができる
➤発想の原点はマネー資本主義
- リーマンショックをきっかけに経済100年の常識を疑うことにした
- マネー資本主義というNHKの番組制作
- 一証券会社の破綻が世界を危機に陥れるのはなぜか?
- (一証券会社だけの問題ではなく、CDSなどの構造的な問題があったからだろう)
- やくざな経済への転落(アメリカ型資本主義の失速とそれを延命させることに血道をあげた世界経済の牽引者たちの、当然の帰結)
- ことのはじまりはニクソンショック
- リーマンショック前にはカーディーラーでは新車購入時に職業も収入も尋ねない仕組みになってしまっていた
- →ローンを組ませればいいから、と
- そのローンを組み合わせた金融商品をつくることで、元々がみえなくなっていた
- 金融工学→貸し倒れリスクを取り出し、リスクだけを集めて、それをまた金融商品にして売るという離れ業をやっていた
- お金がないのに物が買えるという狂った時代、それがリーマンショックではじけた
- 世界は今もってその後遺症を引きずっている
➤弱ってしまった国がマネーの餌食になった
- なぜ今、里山資本主義なのか?
- 一言で言えば、世界中の人がグローバルなマネーの恩恵にすがるしかない仕組みはやはりおかしいから。少しでも切り崩し、「かたぎの経済」にできないか
- 年金の仕組みは企業が想像を絶する成長を続ける中で拡大した。では、前提となる成長がとまったらどうなるのか?
- 実際、成長がとまったら、年金を予定通りに増やしたい年金マネーがうそで固められた高利回りの金融商品に殺到することになった→破綻
- そして経済を立て直そうという国がその借金を肩代わり
- しかし、そもそも老後を豊かに暮らすためには、みなが年金をもらう必要があるのか?
- 晴耕雨読でよいのでは?
- 注目すべきは晴耕
- 老人は年金をもらわずに生活できる、なぜならお金のかかる生活をしていないから
- (それは人によるだろうし、住むところにもよるだろう)
- 農村での暮らし、天然の恵みを享受する暮らしを年金に頼る暮らしの「サブシステム」に組み込んではどうか?
- (眉唾で読み進める)
➤マッチョな経済からの解放
- 311の経験
- いざとなったらマネーなど何の助けにもならない
- (そんなことはないだろう、震災のただなかではそうだろうが、復興にはマネーはかかせない)
- 広島で目から鱗の体験
- のうなんかしよう
- 価値観の転換
➤世の中の先端は、もはや田舎の方が走っている
- 里山資本主義の番組
- デフレの正体の藻谷氏
- ものが売れないのは景気が悪いからだ、というのは常識ですか?
- (常識ではないだろ、いいものは売れる)
- 日本経済が停滞している根本は景気ではなく、人口の波による
- 働き盛りの人の数、生産年齢人口が戦後急拡大し、それが減少に転じたことで日本では物が売れなくなった
- (それはただの状況説明で、質問の回答ではないと思う)
- スマートシティはむしろ里山に
第一章 世界経済の最先端、中国山地ー原価ゼロ円からの経済再生、地域復活ー27
➤21世紀のエネルギー革命は山里から始まる
- 里山資本主義の語るエネルギー問題は、自然エネルギーに切り替えて脱原発を実現しようというものではない
- 舞台は岡山県真庭市
- 世界最先端のエネルギー革命
- 木材産業で栄えた街
- 製材所での発電、銘建工業→すべて工場で必要な分をまかなっている
- 製材の過程ででる木くずを使用
- 木質バイオマス発電
- 出力は2000キロワット時、2000世帯分
- それでも100万キロワット時という原子力発電に比べたら微々たるもの
- 問題は発電量の多寡ではなく、目の前にあるものを燃料として使って発電ができているということ
- どれだけの経済効果があるかが大事
- 木くずを産業廃棄物として処理するのにかかっていた年間二億四千万円もゼロになった
- 発電施設そのものの建設には10億円かかった
- 時代はあとからおいついて、売電もできるようになった
- バイオマス発電導入から14年、減価償却はとっくに終え、十分すぎるくらいの元手はかせいだ
- 不必要な経費を、プラスに変えることによって再構築をなした事例
➤石油に変わる燃料がある
- 同銘建工業
- 木くずの他の使い道、年間4万トン
- かんなくずを円筒状にぎゅっと固めて燃料として販売することにした→木質ペレットという
- 燃費がとてもよいらしい
- 木材を燃やして冷房といった使い道も
- 行政の強力な後押しも力に
- バイオマス政策課
- 民間主導で始まった新しい取り組みに対し、行政が予算措置も含めて後押し。ここが真庭市の成功を語る上での重要なポイント
➤エネルギーを外から買うとグローバル化の影響は免れない
- 現代の農民が専業でたべていくには?
- 手間暇と創意工夫が不可欠
- 真庭の農家、清友氏、トマトのハウス栽培
- いくら農産物は地産地消でも、それをつくはためのエネルギーを外から買っていてはグローバル化の影響は免れない
- →ペレットボイラーを使用
- エネルギー白書 2012
- エネルギー利用の内訳のうち、熱利用(エアコンや給湯など)がほとんどを占める
- 真庭市、今は全市で消費するエネルギーのうち11%を木のエネルギーでまかなっている
➤1960年代まで、エネルギーはみんな山から来ていた
- 真庭市の取り組みは、つい最近まで日本人の誰もがしていた営みを現代の技術で蘇らせたもの
- 国土面積の66%が森林の国土
- (無計画にでは木材事業を増やしていいか、といえばそれは違うと言えよう、そこは勘違いがないようにしたい。あくまで余り物をいかに効率的に利用しているか、だと思う)
- 中国地方はたたら製鉄で栄えた
- もちろん燃料は木材
- 無計画に伐採して禿げ山を増やした(やはり単純な話ではない)
- 広葉樹は伐採した翌年には伐採あとから芽吹き、再生がはじまる。炭木を伐採してもすぐに山地は樹林で覆われたらしい
- こういった従来の熱資源の仕組みを破壊したのが、戦後圧倒的な物量で海外から押し寄せてきた資源
- 特に石油はとても安く、便利で使いやすかった
- さらに追い打ちをかえたのが、1960に始まった木材の輸入自由化
- 今、日本では育ちすぎた樹木が活用されないまま放置されている
➤山を中心に再びお金が回り、雇用と所得が生まれた
- 真庭市がすすめる、山の木を利用することで目指すエネルギーの自立
- ふんだんに手に入る木材が地域の豊かさにつながらないのはなぜか、という問いかけから始まった取り組み
- 廃棄物ではなく、副産物という考え方✔
- 新たな産業は雇用も生む
- バイオマス集積基地
- 木くずを燃料のチップにする工場
- 震災後は、売電の買取額もあがったー45
➤21世紀の新経済アイテム「エコストーブ」
- 広島県の最北部、庄原市
- 65歳以上の高齢化率、40%以上
- 里山暮らしを現代風にアレンジ、和田芳治氏
- エコストーブ
- 単なる暖房ではなく、煮炊きなどの調理に使えば抜群の力を発揮する
- 使い方も簡単らしいー47
- 手作りできて、制作費も安い
- 山を燃料源にすれば無尽蔵に燃料を得ることができる
- 山の木は一度切ってもまた生える(短絡的に言い過ぎな気はするが)
- 定期的に伐採した方が環境はよくなる(?)
- 適度に間伐された山では木と木の間に程よい隙間ができ、日光が十分にさす
- →すると二酸化炭素の吸収がよくなる
- 若木の方が二酸化炭素の吸収力は強い
➤里山を食い物にする
- エコストーブはもともと1980年代、アメリカで発明された
- ロケットストーブと呼ばれていた
- 元々のものは大型で持ち運びできない→改良して小さくなった
- 里山を食い物にしよう、を合い言葉に里山暮らしのよさをアピールする活動、前述の和田氏
- 原価ゼロ円の生活の追求
- 畑にはエコストーブと同じくらいの秘密兵器
- カボチャ
- 傷をつけておくとその部分が浮かび上がる→ありがとう、とかメッセージを送るのに使ったりしている
- お金がないから物々交換さるのではなく、楽しいからする
- 田舎暮らしはお金をかけるより豊かなことで満載
- (それは人の価値観によるだろう)
- もう一回生活を見直してみる時代ではないか?
- 恵まれた自然の活用
- 文明が忘れてきた何かを取り戻す生活
➤何もないとは、何でもやれる可能性があるということ
- 田舎には田舎の住民も気づいていない魅力があるのではないか
➤過疎を逆手にとる
- 和田氏、都会の人向けにアピールできるイベントの企画を頼まれる
- 見向きもそれまではされなかった花を見つける
- セツブンソウ(実は日本でも珍しい花だということを知った)
- 節分草祭りを開いた
- 1982、過疎を逆手にとる会
- 昔ながらの保守的な風潮が強い田舎では目立つ行動に対するやっかみもあった→それすらもエネルギーに変えた
- どんなネガティブな言葉も前向きに解釈し、いいように作りかえた
- 田舎をマイナスのイメージでとらえるのではなく、楽しいものだと考えるための言葉遊び
- 例えば、高齢者ではなく「光齢者」などー57
➤豊かな暮らしをみせびらかす道具を手に入れた
- 田総川に外来魚が増えていると聞けば、じっくり調理しておいしく食べようじゃないか、という
- (食べるのはいいと思うが、、、あくまでもこれも駆除の副産物としての考え方)
- 田総川をおいしく食べる会
- 逆転の発想があれば、役にたたないと思っていたものも宝物となり、何もないと思っていた地域は宝物があふれる場所となる
- 楽しさばかりを言うのは、楽しくなければ定住してもらえないと思うから
- 都市部の人々を惹きつけるにはまだ足りないと思っていたところにみつけたのがエコストーブ
- 各地でエコストーブ講習会をひらく
- 震災を経て、その要望はさらに増えたという
- しかし、和田氏もエコストーブがあれば原発を止められるとは思っていない
- あくまでも楽しみながらの笑エネ(省エネ)
- 原発をとめることはできなくても、里山では電気使いたい放題「でない」暮らしができる
- むすこやむすめたちに、努力に努力を重ねてふるさとを捨てさせるのはもうやめにしたい
第二章 21世紀先進国はオーストリアーユーロ危機と無縁だった国の秘密
➤知られざる超優良国家
- ギリシャの財政赤字が発端のユーロ危機、2009
- そうしたなか、ありあまったマネーはヨーロッパに向かった
- CDS を買い漁る銀行
- マネーの嵐を最小限に食い止めている国、それがオーストリア、経済の世界で実に安定した健康優良国ー各種指標がしめすー65
- そのオーストリアの経済が安定する理由こそが、里山資本主義
- 前述の真庭市のように、オーストリアも木を徹底活用して経済の自立を目指す取り組みを国をあげて行っている
- 国土はちょうど北海道くらい
- 日本の15%ほどの森林面積だが、日本全国で一年間に生産する量より多少多いくらいの丸太を生産
- オーストリアは最も身近な資源である木を大切にしている
- しかし、こうした暮らしを発見したのはほんの数年前
➤林業が最先端の産業に生まれ変わっている
- 四年に一度、オーストロフォーマ
- 世界中から視察団が訪れる
- 一つの山を丸ごと展示会にする規模の大きさ
- 日本からも参考にと木材産業者が訪れる
- 日本が参考にできるモデル
- 機械
- タワーヤーダー、大量の木材を山から運ぶ
- チッパー、木材をチップにかえるための道具
➤里山資本主義を最新技術が支える
- オーストリア屈指の製材所、マイヤーメルホルン社
- 木の伐採、加工、そしてバイオマス利用まで幅広く手がける
- ペレットはオーストリアでも活用されている
- 町全体でペレットを活用する仕組み
- ペレットを運ぶタンクローリー→個人宅に
- 家庭ではペレットボイラーを使う
- 床暖房や給湯として利用
- 年間13万円ほどで暖房と給湯すべてをまかなえる→電気と変わらない費用
➤合い言葉は「打倒!化石燃料」
- (いい言葉だな、と)
- ボイラーメーカーの合い言葉
- ペレットボイラーの開発
- 力を入れてきたのは燃焼効率の向上と排ガスの抑制
- 木を熱してでる炭化水素と酸素を混合させて燃焼させる、燃焼温度がポイント
- 酸素をまぜるタイミングを研究、排出される一酸化炭素や炭化水素も極限まで減らすことに成功
- ペレットが燃え尽きたあとに排出される灰をとことん減らすことにもこだわった
- 灯油にくらべて価格が安定しているペレット
- 石油を上回るコストパフォーマンス
- しかし、まだまだペレットボイラーそのものが高額(一台約130万円)
- 低価格化にむけて開発が進む
- 他のどこの国もやっているような大量生産・大量消費の技術ではなく、身近な資源を活かす技術を極めつつあるオーストリア
- 日本も同じ道を歩く選択肢はある
➤独自技術は雇用も生むー76
- オーストリアがペレットボイラーの技術革新に力を注ぐ理由
- オーストリアは小国だが、独創的な人材は豊富。多くの中小企業はどうしたら大量生産型市場から脱却できるか、知恵を絞ってきた
- 日本と同様に地下資源には乏しい→エネルギーを他国に依存しなければならなかった
- そこで石油やガスをペレットに置き換えたら安心・安全を守れると考えた
- 外国から資源を輸入しているモデルでは雇用は増えない、しかし、ペレットをエネルギー源にすることで労働需要が国内で高まった
- たとえばペレット専用のバーナーの生産、ペレットそのものを製造する機械
- 世界に先んじてバイオマスの世界を突きすすむことは後の世代への責任
- 再生エネルギーのために働くことは負担ではなく、むしろこよなくを生み出すチャンス
➤林業は持続可能な豊さを守る技術
- 当然浮かんでくる疑問
- オーストリアでは森林破壊が進んでいるのではないか?
- オーストリアはきちんとした対策をこうじている
- 森林マイスターという制度
- 業務や役割に応じたさまざまな資格ー80
- 森林官→500ヘクタール以上の山林の管理を行う(ほとんどが修道院らしい)、なるのは難しくとても高い地位
- 500ヘクタール以下の森林は森林マイスターが管理をしている
- 森林マイスターの仕事→山林全体の資源量の管理、一年間に伐採できる木材の量の決定、伐採区域の決定、そして販売先の確保
- 現在は世襲制
- オシアッハー森林研修所→研修
- 研修所では口を酸っぱくして、林業は短期の利益を追求するのではなく、持続可能な豊さの追求をしなければならないという理念が伝えられる
- 一方、日本ではお金にならない多くの山林が間伐されることもなく放置されている。オーストリアは山林所有者に森をすみずみまで管理することを義務づけている
➤山に若者が殺到した
- 日本では林業というと3Kなイメージだが
- オーストリアでは今はそんなことはない(かつては同じくだったが)
- 林業従事者の作業環境が安全に
- お金になる産業だという認識の広まり
- 林業という中身そのものが変わったこと→高度で専門的な知識が求められるようになった
- →それらを後押しするのが、バイオマス利用の爆発的な発展
- 今後もこの傾向は続くと見られる
- 現在、オーストリアのエネルギー生産の約28%は再生エネルギー
- EU は2030までにバイオエネルギーの割合を34%までにする目標をかかげている
- 林業と仕事が体系化されるにつれて、会社と協力しながら仕事をする機運も高まる
➤林業の哲学は「利子で生活するということ」
- 森林が一年間に生長する量の100%を利用することを目指しているのでは、100%を超えてしまったときどうするのか?という質問
- そのような事態は起きていない
- それを未然に防ぐ最良の方法が教育
- 扱ってもよい資源量がわかっていれば資源を維持しようと努力する
- 森林が生長したぶんだけを切る
- オーストリアでは徹底した森林調査も行っている
- その結果、森林面積は今でもどんどん増加している
- よつするに、オーストリアの林業な元手にてをつけることなく、利子だけで生活している状態
- 最近では短期間でどこまで収穫できるかという新たな森林資源の研究も開始
- 変動より安定、短期より長期という根底の発想
- オーストリアの一人当たりGDPは日本のそれを上回っている(というか、日本が低いんじゃ…)
➤里山資本主義は安全保障と地域経済の自立をもたらす
- オーストリアは世界でも珍しい「脱原発」を憲法に明記している国家
- しかし、もともと反原発だったわけではない
- きっかけは1977、著名な地震学者が原発の建設地の直下で地震が発生する危険性があることを指摘したこと
- 1986のチェルノブイリの事故も拍車
- 輸入電力で原発エネルギーが使われているものにも拒絶反応をしめすように
- 2011、エコ電力法→バイオマス発電を増やすことを目的にその発電技術利用拡大のための補助金を増額
- 嫌原発
- チェルノブイリ事故
- パイプラインによってロシアから天然ガスを供給されていることもある→ロシアがそれを止めるという政治的圧力をかけてくるため
➤極貧から奇跡の復活を果たした町
- オーストリア、ハンガリーとの国境の町、ギュッシング市
- 人口は4000
- 訪れる人の目をひくのが、巨大発電施設
- バイオマス発電、木材およびそれから生産されるチップが山積み
- 熱利用では、ペレットとは異なる仕組みを利用→それがバイオマスが占める割合をさらに高める
- →それが地域暖房→発電の際にでる排熱を暖房や給湯に利用しようというコジェネレーションシステム
- ギュッシングでは結果として、エネルギーの自給率が72%
- オーストリアの国全体ですらバイオマスエネルギーはまだ10%しかしめていないところで。
- ギュッシングでここまで町全体でシステムをくむことができたのは、住民一人一人の決断
➤エネルギー買い取り地域から自給地域へ転換する
- 1990、ギュッシング議会は全会一致で、化石燃料から木材にエネルギー源を置き換えることを決定した
- グローバル化による安い農産物および資源の流入により貧しく
- 単にエネルギー問題からだけでなく、地域経済の再生の切り札としてとらえてもいた
- コジェネレーションによる発電の開始
- 国の買い取り制度を利用した売電
- エネルギー自給率70%の達成
- 1800万ユーロの売上高を達成(2005)
➤雇用と税収を増加させ、経済を住民の手に取り戻す
- さらにギュッシングの話がつづく
- オーストリアではたとえ数百人単位の集落であったも大事なことを決めるときは住民投票
- 燃料となる木材、自分たちで出し合う
- ギュッシングではエネルギーの値段は自分たちでコントロールしている
- 市場の需給に依存しなくてすむ
- こうした取り組みの結果、農業が主体だったギュッシングにヨーロッパ中から企業がやってくるようになった
- 雇用も生まれた
➤ギュッシングモデルでつかむ「経済的安定」ー99
- ギュッシング市長、ペーター・バダシュ氏の話
- エネルギーの輸入は自分たちに何の利益ももたらさない
- 世界経済はある一握りの人たちに牛耳られている、それは健全なことではない
- しかし、エネルギーという非常に大切な分野において、ある程度の主導権を握ることはできる
- 大事なのは住民の決断と政治のリーダーシップ
- ギュッシングモデル
- 地域でのエネルギーの自立に止まらない
- グローバル経済に対して、その歪みに苦しむ人たちが、もう一度、経済を自分たちの手に取り戻そうとする闘い
➤開かれた地域主義こそ里山資本主義
- 20世紀は経済の中央集権化が突き詰められていった時代だった
- 鉄、コンクリート。重厚長大な産業を基盤に発展していくには莫大な投資や労働力の集約が必要だった
- そのため国家主導で大資本を優遇して進めざるを得なかった
- そのために弱肉強食がすすんだ
- 目的は国家をより強くすること
- その過程で巨大なインフラネットワーク
- さらにIT革命
- その中央集権的なシステムは、山村や漁村など競争力のない弱い立場にある人々や地域からいろんなものを吸い上げて成立するシステムだった
- しかし、21世紀
- モノがあふれるようになって私たちが気づいたこと
- 全国どこに行っても同じ表情の国、それに違和感
- 里山資本主義は、経済的な意味でも地域が復権しようとする時代の象徴
- ただし、注意すべきなのは、自己完結型の経済だからといって排他的ではないということ→開かれた地域主義こそ、里山資本主義
- しなやかさー真庭市の例を再びー104
- 勉強熱心さ
➤鉄筋コンクリートから木造高層建築への移行が起きている
- CLTという集成材
- クロス・ラミネイト・ティンバー
- 直角に張り合わせた板
- 建築材料としての強度が飛躍的に増した
- オーストリアから生まれた
➤ロンドン、イタリアでも進む、木造高層建築
- オーストリアの例
- CLT による高層建築
- もともとのCLTはドイツで考案
- しかし、製材部門のない会社だった→で、オーストリアの製材所が採用
- CLT で壁をつくりビルにしてみたところ鉄筋コンクリートに匹敵する強度をだすことができた
- 石造りが基本だったオーストリアが木造へとシフトしていった
- 地震は大丈夫なのか?という疑問
- イタリアでも普及(日本と同様に地震が多い国)、ラクイラ地震
- イタリアの国立森林木材研究所→地震にもつよいことを証明
- 震度7にも耐える
- 耐火性の試験も重ねられている
➤産業革命以来の革命が起きている
- CLT を使ったアパートの話ー111
- 木材が起こす革命
- 木材は投資が少なくてすむ一方、地域に多くの雇用が発生する、経済的にとても優れた資源
➤日本でもCLT産業が国を動かしはじめた
- 日本では建築基準法上の制約
- 三階建て以上の木造建築に制約が多い
- 2010に「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」→すこしだけ前進はある
- 日本CLT協会の設立
- 前述の真庭市の中島氏が主導
- 2012、耐震実験の実施
- 2012にはCLT専用の製造ラインをつくったりしている
- 建築基準法には大臣認定という制度
- 特別な手続きを経れば、CLTでの建設は不可能ではない
- 木材産業、比較的低リスクで産業構造を根本から変えていく力を秘めている
- 開かれた地域主義もまた、お互いの知恵の吸収を助ける
- 地域がベース、お互いがつぶし合うということをしない
中間総括「里山資本主義」の極意ーマネーに依存しないサブシステム
➤加工貿易立国モデルが、資源高によって逆ザヤ基調になっている
- 人が生きるのに必要なのは、お金か、それとも水と食料と燃料か?
- これまでの日本では問えなかった
- すべてお金で買わざるを得ないから
- そしてお金を稼ぎ続けるためには経済が成長し続けるしかなかった
- だからこそ今の日本にもっとも必要なのは成長戦略
- 日本の国際競争力は地には落ちていない
- 日本製品は売れている
- 海外投資も金利配当をもたらしている
- しかし、そのお金が貯蓄されるばかりで国内の消費に回らない
- 金融緩和が進んでも名目GDPは成長を止めている
- 一方、海外に支払う燃料代は年々増えている
- 資源を買ってきて製品にして売るという加工貿易立国モデルが資源高のせいで逆ザヤ基調になっている
➤マネーに依存しないサブシステムを再構築しよう
- 生きるのに必要なのは、お金ではなく、水、食料、燃料の方
- これらをかなりのところまでお金をかけずに手に入れている生活者は日本各地の里山に存在する
- 里山資本主義は、お金の循環がすべてを決するという前提で構築された「マネー資本主義」の経済システムの横に、こっそりと、お金に依存しないサブシステムを再構築しておこうという考え方
- (従来の資本主義を捨てようというわけではないことが、ポイント)
- お金が乏しくなってきても水と食料と燃料が手に入り続ける仕組み。安心のネットワークを予め用意しておこうというもの。
- 里山資本主義は誰でもどこでも実践できるわけでもない
- マネー資本主義では不利だった過疎地域にこそ、自然エネルギーが大きく、より大きな可能性がある
- また、里山資本主義はマネー資本主義の経済指標、たとえばGDPや経済成長率をかならずしも大きくはしない
➤逆風が強かった中国山地
- エネルギー革命が木炭という現金収入を奪った
- そういった地域で里山資本主義の小さな狼煙があがりはじめている
➤地域振興三種の神器でも経済はまったく発展しなかった
- 三種の神器とは?
- 高速交通インフラの整備
- 工業団地の造成
- 観光振興
- 中国山地ではそれではまったく発展しなかったー125
- 悪条件が揃えばこそ
- →過疎を逆手にとる会の活動が息長く続けられた
➤全国どこでも真似できる庄原モデル
- これまで地元福祉施設は地域外の大産地から運ばれてきた食材を買って加工。全国レベルでみれば効率的だが、地域レベルでみればお金がでていくだけ
- しかし、捨てていた食材を地元で消費するようになれば福祉施設が払う食費は安くなり(輸送費分はすくなくとも)、しかも払った代金は地元の農家の収入になって残る ↓
- 全国レベルでみればマネー経済が縮小なのだが
- 地域レベルでみれば活性化以外のなにものでもない
➤日本でも進む木材利用の技術革新
- 真庭市の中島氏たちによるエネルギーの地産地消の取り組みは全国でみれば微々たるもの
- そもそも中国地方は原発をとめても電力が余っている地域
- しかし、真庭という地域にとってはお金を払って廃棄物として引き取ってもらっていた木くずが燃料に化ける分、地域外に払っていた燃料代が浮くー130
- 注意しなければならないのは、ペレットによる発電は、製材屑の再利用としては十分採算に乗るものだが、新たに木を砕いて木くずにしてからペレットを製造するというコストまではまかなえないということ
- (当たり前だと思う、あくまで廃棄費用の代わりに製造し、プラスアルファで儲ける感じだもの)
- 真庭市のすごさは地域のエネルギーのかなりの部分をまかなうことのできる量の製材屑がでるところにある
- センスのいい現代建築を支える材料としての確固たる地位を固めたところにすごみ(輸入材料に負けないという意味で)
- 集成材の魅力
- まだまだその一方でこういった木材利用の技術革新は日本の多くの建築物では活用されているとは言い難い
➤オーストリアはエネルギーの地下資源から地上資源へのシフトを起こした
- 里山資本主義は過疎地の専売特許ではない
- オーストリアでは国をあげた木質バイオマスエネルギー活用が進みつつある
- 国難はむしろ日本よりオーストリアの方が多く直面してきた
- 隣国ロシア
- 日本以上に条件不利なオーストリアで国産自然エネルギーの活用がどんどん進んでいる事実にもっと目を向けたほうがいい
- 日本の都道府県単位のレベルでできることがいくらでもあるだろう、と
- しかし、オーストリアで木質バイオマスエネルギーが急速に普及したのは真庭市と同様にペレットにできる製材屑が豊富にあるからだということ
- 石灰石鉱山の多い日本
- セメントが唯一、自給できる鉱物資源
- 鉄鉱石は自給できないが、世界有数の製鉄国
- 日本の鉄コン筋クリートを後押しするもの
- とりわけ建築に使う鋼材は、電炉会社が国内で発生する廃材をリサイクルして製造→エコフレンドリーともいえる
- だから諦めるというのは違うのでは?
- 日本国全体で化石燃料代で貿易赤字
- 一部産業の既得権を損なっても自然エネルギー自給率を高める意義はある
- 日本では国でできないことを地方から先にやってしまうことが、コトを動かす秘訣
➤二刀流を認めない極論の誤り
- マネー資本主義を里山資本主義は否定しない、あくまでサブシステムの再構築
- 最初はリスクヘッジが動機かもしれない
- 弁証法
- 矛盾する二つの原理をかち合わせ、止揚することで、一次元高い段階に到達できる
- ドイツ文化圏で生まれる→オーストリアもドイツ文化圏
- 日本は辺境民のせいなのか、単一の原理にかぶれやすい
- 落ち着いて歴史を眺めると、一瞬極端に高まる外来の極論への熱狂はいずれは現実を突きつけられて幻滅に変わり、輸入原理はその後、時間をかけて日本流に変容していくのが常
- しかし、マネタリスト経済学(小泉政権以来)はまだむき出しの輸入原理のまま
➤「貨幣換算できない物々交換」の復権ーマネー資本主義へのアンチテーゼ(1)
- マネー資本主義に対するサブシステムである里山資本主義では、貨幣を介さない取引も重視
- 二通りの物々交換
- 貨幣で買ったものの交換
- 貨幣で買ったものではない交換
- 特定の人たちの間で物々交換が重ねられると、そこに絆、ネットワークと呼ばれるものも生まれる
➤規模の利益への抵抗ーマネー資本主義へのアンチテーゼ(2)
- 一括大量生産のほうがコストは下がり無駄は減り経済は拡大する
- しかし、地元でとれた市場にだせないような野菜を地元福祉施設で消費するというような営みが地域内の経済循環を拡大し、金銭換算できない地域内の絆を深めているということもある
- 規模の利益の大きな落とし穴
- リスクの拡大でもあるということ
- システムがうまく回っている分にはよい、齟齬が生じたときに大きな経済的な打撃をうける
➤分業の原理への異議申し立てーマネー資本主義へのアンチテーゼ(3)
- 比較優位の原則への異議申し立て
- リカードが提唱した比較優位
- 里山資本主義は全部を自分でこなす
- 田畑を自分で耕し、大工仕事も料理も全部
- それが意外と効率的
- コンビニのバイトがいい例で全部をひとりでこなす(効率、いいかどうかはしらない、大変なんで)
- リカードの原理は各自の守備範囲を明確に区分することができて、かつその守備範囲に重複がなく空白部分ができないという条件が整った場合にはセオリー通りに有効
- しかし、世の中はなかなかそうはきれいに区分けされない
- 現代社会は下手に分業を貫徹しようとすると、各人に繁閑の差がでたり、広い漏れがでたりする
➤里山資本主義は気楽に都会でできる
- 田舎の資源を活かして楽しそうに暮らしている、というだけのものではない
- たとえば、スーパーで生産者の顔がみえる商品を買ってみるのも狭義の里山資本主義だという
- ふるさと納税もそうなる
- できるだけ自分の地域のものを選んでみる
- そうこうしていれば、少子化もあいまって都市部であっても空き地ができてくるかもしれない
- (それはないように思う。過疎地は過疎がより進み、都会により人が集中するのが今起きていること。流れが変わるならあり得なくはないが)
- 情報は企業、NPO、サークル等が発信していたりする
➤あなたはお金では買えない
- 里山資本主義を国を挙げてやるべき、は筆者は思わない
- こういうことは、自発自立的に自然と広まるべきという意味で。
- たとえば、SNSの利用が爆発的に進んだように
- 参加することが面白く、何か満足が得られるなら自然とひろまるもの。強制されるものではない。
- マネー資本主義に染まりきっていると、自分の存在価値=稼いだ金額になりがち
- お金はあくまで手段であって、持ち手の価値を計るものさしではない
- (しかし、その手段故に多く持っていた方が便利であるのはいうまでもないだろう)
- 持つべきはお金ではなく、第一には人との絆
- そういう考え方もある
- 第二は自然とのつながり
- (むしろこちらが本当は第一では?)
第三章 グローバル経済からの奴隷解放ー費用と人手をかけた田舎の商売の成功
➤過疎の島こそ21世紀のフロンティアになっている
- 大企業を見限って、過疎の地域に飛び込んだ若者たちの話
- 山口県、周防大島
- これまでの日本
- 農業の大規模化を推奨
- 農業基本法、1961
- これにより、周防大島での自給自足的なみかん栽培は破壊された
- 結果、島から若者は流出
- それが最近、若者がすこしづつ増えてきている
- なぜ?
➤大手電力会社から「島のジャム屋」さんへ
- 周防大島での先進的な成功事例
- 松嶋匡史氏
- カフェを併設したジャム屋さん
- 辺鄙な場所ながら客足が途絶えない
- パリのジャム屋にインスパイアされた
- 銀行員から一転、独学で
- 妻の父親の誘いで周防大島で開店
- 静かな海辺を選んだ
➤自分も地域も利益をあげるジャム作りー161
- ジャムを買ってくれた人にリーフレット
- 過疎高齢化が進む小さなジャム屋が思うこと
- 今の時代に求められているのは、地域の価値に気づき、その地域に根ざした活動を展開することではないか
- 大量生産・大量消費に対する決別宣言
- 地域に利益が還元される形で物作りをする
- ジャムづくりに地元の農家たちがヒントをくれる
- 焼きジャム
➤売れる秘密は「原材料を高く買う」「人手をかける」
- どうすれば農家に利益を還元できるのか?
- 原材料となる果物に高い価格で買い取り
- 従来、一キロ10円を100円で
- 均一なら味をもとめない
- 一瓶一瓶で味が違う
- 徹底的な手造り
- もちろん商品の値段は高くなる
- 155g で700円
- 地域全体が最適化されることで自分たちにも利益がまわってくる
➤島を目指す若者が増えている
- 都会から過疎地への流れがある
- NPO 、ETIC.
- 年に数回、日本全国!地域仕掛け市
- 若者の5人にひとりが農業や漁業に挑戦したい
- (偏りのあるクラスタにとったアンケートのような印象をうけなくもない)
➤ニューノーマルが時代を変える
- 依然としてもちろん年収はじめ、お金を求める風潮が強いのは事実
- いち早く感じた若者はそういう価値観とは違う人生の選択
- 三菱総合研究所、阿部淳一氏
- ニューノーマル消費
- リーマンショック後の概念
- 自分のための消費(ブランド品など)ではなく、つながり消費(地域、家族とのつながり)をもとめる
➤52%、1.5年、39%が語る真実
- 対するオールドノーマル、「成長が是」
- 戦後の日本、売上は伸びたが、利益はそれほど増えていない
- (投資した結果ならよい話だが、そうではないと言えてしまうのが悲しい)
- 日本企業は縮小する市場のなかで、成長するアジアと消耗戦を繰り広げてきた
- 52%、発売から二年以内に消えるヒット商品の割合
- 1.5 年、新しく発売した商品から利益が得られる期間
- 39%、仕事の満足度
- 蟹工船のヒットが示す舞台裏
➤田舎には田舎の発展の仕方がある!
- 過疎高齢化の進んだ地域
- アイデア次第でとっておきの宝物がまだまだ眠っている
- リスクも少ない
- 土地や人件費がやすい
- ただし、見知らぬ土地故にそこを目指す若者にも困難は多い
- 周防大島、「島くらす」
- I ターン、Uターンによるネットワーク
- スムーズな地域への定着
➤地域の赤字は「エネルギー」と「モノ」の購入代金
- 域際収支
- 商品やサービスを地域外に売って得た金額と、逆に外から購入した金額の差
- 国でいうところの貿易黒字か赤字か
- 大都市圏が大幅プラスー176
- 多くの農漁村をかかえる県は流出が巨大
- それを穴埋めするために従来は
- 公共事業や工場の誘致
- 補助金といった再分配のしくみで賄っていた
- 地域の衰退は止められないのか?
- そんなことはない、高知県の例
- 品目別の収支をみてみる
- 農業、漁業は黒字
- 二次産品が利益を押し下げる(加工品は域外から買っている)
- 里山資本主義は、こうした赤字部門の産業を育てることによって外に出て行くお金を減らし地元で回すことができる経済モデル
- 六次産業化も近いニュアンス
➤真庭モデルが高知で始まる
- 域外収支最下位の高知県
- 林業は黒字なのに、それをベースにした製材事業者は赤字
- その改善が知事の肝いりで始まっている
- 真庭モデルの踏襲
- 大豊町
- 過疎高齢化の進んだ限界集落といわれた町
- 町の面積の九割は山林野、そのうちの七割は人工林
- 2013、ここに大規模な製材所ができた
- 木くずを利用した発電も始まった
- CLT 建築も導入開始
- 真庭モデルが他でも成功できるかという試金石
➤日本は「懐かしい未来」へと向かっている
- スウェーデンの女性環境活動家、ヘレナ・ノーバーグ・ホッジ氏の言葉
- 人類の歴史、物質的な量の拡大を続ける時代と、質的な、本当の生活の豊さなどに人々の関心が移っていく時代の繰り返し
- 今はまさにその質的なものへの転換期
➤シェアの意味が無意識に変化した社会に気づけ
- グローバル時代は強い者しか生き残らないという考え方自体が、誤解。
- われわれはグローバルジャングルに生きている
- ジャングルには強いものもいれば弱いものもいる
- それぞれが生態系を支えあっている
- シェアの意味が変わってきている
- 市場占有率から、分かち合いという意味合いが濃く
➤食料自給率39%の国に広がる耕作放棄地
- 過疎高齢化
- 従事できる人がいなくなったのだから仕方ない?
- 輸入食料の価格にはかなわない(農業全般)
- 果たしてそれは正しいのか?
➤「毎日、牛乳の味が変わること」がブランドになっているー188
- 鳥取県、洲濱正明氏
- 耕作放棄地は有数を誇る県
- この耕作放棄地をただで貸してもらい、牛を放す。牛乳を売る。
- 美しく蘇った耕作放棄地
- 海外産穀物の高騰
- その常識を疑ってみる余地はあるということ
- そのひとつ、穀物を食べさせないと濃い牛乳は生産できないという常識
- 草だけの牛乳でも濃かった
- 牛乳の価格はおさえないと売れないという常識
- 洲濱氏の牛乳は五倍でも売れる
- (それは毎日飲むものとしてではないからでしょ)
- 自然放牧ならではの、毎日牛乳の味が変わることも強みにしようという試み
- 私たちは均質のものをたくさん以外の価値観も持ち合わせている
- ワインのビンテージもの
- 自然放牧ならではのストーリーを売る
➤「耕作放棄地」は希望の条件がすべて揃った理想的な環境
- 都会でないと仕事がなくて暮らせないわけではない
- 耕すシェフ、島根県
➤耕作放棄地活用の肝は、楽しむことだ
- 松江市、耕作放棄地、素人たちが楽しそうに耕すのをみていて、プロ農家のやる気が復活した
- 島根県、八頭町
- 耕作放棄地の活用。儲けるためにやるのか、それとも楽しみのためにやるのか?
- ホンモロコという魚の養殖
- 新規参入者による産地間競争が起きた
- もともと何のためにはじめたのか?
- 楽しい以外に、地域を誇らしく思う気持ちの大切さ
- われらが田んぼで高級魚がとれるという、それそのものが誇らしい
➤「市場で売らなければならない」という幻想
- ことの本質
- 常識を外せば案外道はひらける
- 耕地で育てるからには、相当額のお金に姿を変える経済行為でなければならないという常識
- 自分で食べたっていいではないか
➤次々と収穫される市場「外」の「副産物」
- 耕作放棄の菜園で野菜を育てている市民はスーパーでその分、野菜を買う必要がない
- 支出さえ抑えられれば、実はそれほど収益性の高くない「業」でも暮らせる
- 手に入る豊さは、金銭的なものだけでなく、楽しさや誇りといった形の副産物ではいってくる
- ありがとうというバロメータ
- 感謝というコミュニケーションは人を元気にする
第四章 無縁社会の克服ー福祉先進国も学ぶ過疎の町の知恵
➤「税と社会保障の一体改革頼み」への反旗
- 国にお金がなくなり、年金や社会保障が切り捨てられたのはギリシャだけではない
- フランスでも。
- 日本は今、1000兆円の国債をかかえる
- 返済のめどはなく、高齢化ばかり進む
- 歳入をふやすか、歳出をへらすかの二択しかないのか
- 別の道を模索するのが、里山資本主義
- 本当に年金がなくなったら飢えるしかないのか?
- 無縁社会への問いかけでもある
- 最後の頼みが年金
- 地縁や血縁のセーフティーネットを古臭いものとして忌み嫌い、そこから抜け出して豊かさや幸せを追い求めた時代
- 私たちが本気で取り組むべきなのは、新たな前提を受け入れた上での根本的な再設計ではないか?
➤ハンデはマイナスではなく宝箱である
- 広島県、庄原市
- 空き家が多い
- それゆえに福祉の実験として思いついた人がいた。熊原保氏。社会福祉法人の理事長
- 過疎を逆手にとる会のメンバーでもある
- 空き家の活用
- ただで使える地元の資源がまた増えた
- デイサービスセンターなどにした。地域のお年寄りが集まる。
➤腐らせている野菜こそが宝物だった
- デイサービスセンターに通う高齢者、自分の菜園でとれた野菜を施設の食材としてつかう、という発想
- でないと余らせて腐らせてしまっていた
- 余剰すぎるくらいにつくらないと菜園が逆によわる
➤「役立つ」「張り合い」が生きがいになる
- 前述の自宅菜園の成果物を施設の食材に使う件
➤地域で豊かさを回す仕組み、地域通貨をつくる
- 野菜の対価として、地域の中で使える通貨をつくることにした
- 法人がそれまで使ってきた年間一億2000万のうちの一割をお年寄りの野菜で賄うことにした
- その対価としての地域通貨
- 地域の中で閉じた経済圏がまたできる
➤地域でこそ作れる母子が暮らせる環境
- 地域通貨は地元のレストランで使える
- ただのレストランではない、敷地のみならずなかに保育園が併設
- これも社会福祉法人が経営
- レストランの厨房をまかされるのは、子どもの母親
- 働くチャンスに子どもを預けられる、一石二鳥
- 田舎は子どもを育てる環境として最適
- 一方で働き口がないという問題
- それを解決しようという取り組み
- 逆に都会には子どもを預けられる施設がないというハンデがあることも忘れてはならない
➤お年寄りもお母さんも子どもも輝く装置
- 前述のレストランを設けることで、田舎のお年寄りが楽しくランチをする場所がないというハンデを解消する
- 子どもと遊ぶことも。
➤無縁社会の解決策「お役立ち」のクロス
- 前述のやり方には、従来の社会問題な、ついて回っていた「孤立」がない
- 単体では弱者にみえる人も、実は他の人に役に立つし、その「お役立ち」は互いにクロスする
- クロスすればするほど助かる人は増える
- してもらう負い目を感じてばかりいた人たちが張り合いに目覚め元気になっていく
- 孤立していた人々がつながる
➤里山暮らしの達人ー223
- 西山昭範氏
- エコストーブも改良して現在の形にした
- その暮らしぶりのレポート
- 会社勤めをしたこともあるが、毎日が同じことの繰り返しであることに嫌気。田舎暮らしはその点、やらなければならないことがたくさんある
- (それは考え方次第だと思う)
- お金をかけずに手間をかける暮らし
- 里山暮らしの一番の楽しみであり知恵とは?→「手間返し」
➤「手間返し」こそ里山の極意
- 地域の人々がお互いにお世話をしあい、お返しをする無限のつながり、をさしていう
- 東京などでは政府が悪いとか、何か絶対助けてもらわないと困るとかいうけれど、僕らはそうではない。田舎の手間返しと呼ぶのは、お金じゃなくて人間の力。自分ができることをして、自分ができないことを隣がしてくれる。自分がつくれない時間をつくってくれる。時間をつくってもらったら、また自分が手間をかけてそれを返す
➤ 21世紀の里山の知恵を福祉先進国が学んでいる
- フィンランドからの来客
- まるごとケアの考え方
- お年寄りの野菜の活用による富の循環システム
- などを説明
- ここで注意しなければならないのは、新聞でも広告をみたわけでもなく、ダイレクトにフィンランドの教授が熊原氏の優れたシステムにアクセスしてきたということ
第五章 「マッチョな 21 世紀」から「しなやかな 21 世紀」へー課題先進国を救う里山モデル
➤報道ディレクターとして見た日本の20年
- 故郷にかえれないホームレスが増える一方で、ふるさとは空き家だらけにという奇怪な事態
- 無縁社会が流行になる日本という社会
➤「都会の団地」と「里山」は相似形をしている
- 企業で比較的クリエイティブな仕事をしてきたリタイア組が里山資本主義を「水」のように受け入れている
- 前述の光齢者
- 第二の人生は田舎で悠々自適
- 今のリタイア組は年金というセーフティーネットを持ち合わせている
- それプラスアルファがあればぐっと生活が豊かさを増す世代
- 若者にくらべてハードルがぐっと低い
- 彼らが渇望感をいだいているのがコミュニティー
- 孤独死に危機感を抱き、コミュニティーの再生に汗を流すリタイア組と、地方に入り込んでガタガタになりそうなコミュニティーを立て直そうと意気込む人たちは、ほとんど同じ志をもつ人たち
➤里山資本主義への違和感こそつくられた世論
- 里山資本主義を毛嫌いし、評価に値しないという「油」のような人たちはどんな人たちか?
- かつての経済成長率をとりもどし、あるいは競争の激しい新興国の成長市場での戦いに勝つことを日本再生の最優先課題に掲げる人たち
- それはつくられた世論ではないか?
➤次世代産業の最先端と里山資本主義の志向は「驚くほど一致」している
- 東日本大震災以降のスマートシティのシステムをつくっていくプロジェクト
- 先端企業の集まり
- その議論の内容、つまり彼らが何をおもしろいと感じ、何をしていけば日本は世界の中で勝っていけるとおもっているか
- それは一言でいえば、「企業版・里山資本主義」
- スマートシティとは?
- 町の中、あるいはすぐ近くで作り出す小口の電力を地域の中で効率的に消費し、自立する21世紀型の新システム
- マルダースシティー中東UAEが代表例
➤里山資本主義が競争力をより強化する
- 使う電力として重視するのは、身近に設置できる太陽光パネルや風力発電機でつくった小口の電気
- ただし、日本のエネルギーを代替できるわけではない
- しかし、消費エネルギーを減らすことはできる(外から買う)
- 発電量の変動に対応し安定する技術こそ、今日本が世界の先頭を走っている得意の技術
- 日本の電力制御技術は世界一
➤日本企業の強みはもともと「しなやかさ」と「きめ細かさ」
- 日本で使う大きなエネルギーは原発や火力で大量につくった方が効率的ではないのか?に対する反論
- シェールオイルもあるし、と。
- 発電に関連する産業は日本にとって重要。中でも発電用タービンの技術では世界と戦っていかなければならない。しかし、それと日本が電力浪費社会であっていいか、という話とは話が全く別。
- 日本の強みは省エネ
- それを成し遂げてきたのは、日本人のしなやかさであり、きめの細かさ
- メイドインジャパンに共通するお家芸
- たとえば、ビルは外光をできるだけ取り込み、使わないライトはその都度コンピューターが感知して消し、クーラーの効きすぎた部屋のエアコンは切るなど
- 天ったら蓄電
➤スマートシティが目指す「コミュニティー復活」
- スマートシティのシステムを導入するマンションはエネルギーの効率的なシステムと共に、住民のつながり、みまもりを復活させるシステムを併せ持つことを目指している
- 各戸の消費電力を把握し、コントロールするということは、住民がどう暮らしているかということを管理しているということ
- 情報の漏れには細心の注意が必要
- データ加工の上で使えるものを使っていこうということ
- (とても微妙)
- 結果として、都会の孤独を解消できないか、を目指す(というが)
- 昔、ご近所で醤油を貸し借りしたり、荷物を預かったり、安否を気遣ったりしたのと同じことがマンションライフで提案できないか?
- (余計なお世話な人も多い話だな、と)
➤「都会のスマートシティ」と「地方の里山資本主義」が「車の両輪」になる
- 人口減少、無縁社会、エネルギーや食の自給率、国際競争を担う産業を生み出せない問題等をこの両輪が解決するのではないか?
- (人口減少してもよいという意味なら、そうかな、と)
- 多様であることが豊さを育む
- ユニクロよりも、おばあちゃんの手編みのセーターなどがもてはやされる時代
- (例えが微妙…)
- みんなが世界と戦う勇者でなくてもよい。その一方で地域のつながりに汗を流す人、人間と自然が力を合わせて作り上げた里山を守る人がいてもいいし、いなければならない
- そうした環境でこそ人は増える(なくていいと思うが)、次の世代の勇者がそこから育つ。
最終総括「里山資本主義」で不安・不満・不信に訣別をー日本の本当の危機・少子化への解決策ー251
➤繁栄するほど「日本経済衰退」への不安が心の奥底にたまる
- 根本原因分析
- 何かが起きている原因は何かを考える
- 根っこの原因は何なのか?
- それで現在の不安・不満・不信の原因をさぐる
- 筆者は、今、日本人が享受している経済的な繁栄への執着こそが日本人の不安の大元だと思っている
- 繁栄すればするほど、食料も資源も自給できない国の繁栄など砂上の楼閣ではないかという不安
- 全体の繁栄がむずかしいとなると、誰かを切り捨てるという発想がでてきやすい
- 自分が切り捨てられるのではないかという疑心暗鬼も
- そこに大震災
- いよいよ日本そのものが切り捨てられるのではないかという不安も広がった
- 安倍首相が人気なのは、みんなで不安・不満・不信を共有し、自分のそばにたって行動してくれる人だから(????)
➤マッチョな解決策に走れば副作用がでる
- 短期間でコロコロ変わる政権では解決できない→このような不安・不満・不信
- 経済的な繁栄への執着を捨てるのはみなが仏にでもならないかぎり難しい
- マネー資本主義的な解決策はではどうなるのか?
- マネー資本主義の勝者に返り咲くこと
- 金の力をもって土木工事で自然災害を封じ込める
- アベノミクスもその解決策のひとつ
- マッチョな選択にならざるをえないので、無理や困難が多々
- インフレに転じる円安もかならずしもメリットばかりではない、副作用は必ずある
- 株高もそれにこしたるはなしだが、国債にながれていた資金が株に回れば(それそのものは自然)異常に額の膨れ上がった国債の新規消化は次第に困難になる
- 経済の問題は肩こりににていて、一時的にほぐすことはできても、もみ返しのような副作用なしにすっきり問題を消し去ってしまうようなことは難しい
➤「日本経済衰退説」への冷静な疑惑
- そもそも戦後の日本人が享受してきた経済的な繁栄は本当に失われつつあるのか?
- みんながそう思っているからそうなんだろうという根拠のないものではないのか?(筆者)
- 別段失われていないし、ゆっくり落ち着いて適切に対処していけば、今後とも失われない(筆者)
➤そう簡単には日本の経済的繁栄は終わらない
- 仮に今のマネー資本主義的な繁栄がゆっくりと弱まって行くようなことがあったとしても、里山資本主義的な要素をすこしづつ取り入れていけば、生活上はそんなに困ることはない
➤ゼロ成長と衰退との混同ー日本ダメダメ論の誤り(1)
- 日本のGDPがバブル崩壊以来増えていない
- しかし、逆に減ってもいないことに注目したい(筆者)
- 生産年齢人口の伸び率は先進国最高
- 経済はゼロサムというのは考え間違い
- 個々の問題ごとにそれぞれ根深い問題がある
- 苦しい人々がいる反面、うまくいっている人々がいるため、全体では差し引き微増(それをゼロサムというのではないのか)
- 世界最高
- 平均寿命
- 凶悪犯罪
- 困窮者が暴動を起こしたりしない
➤絶対数をみていない「国際競争力低下」論者ー日本ダメダメ論の誤り(2)
- ならばなぜバブル後20年の今、当時と比べ円高なのか
- 米国が相対的に凋落した→ドル安
- ユーロショック
- 中国は成長しているのに人民元を安く抑えている
- 円高なのは輸出が増えたから
- 日本の輸出の絶対額をみるべきー261
- 1985、42兆円
- 2012、61兆円
- 円高が原因で値上がりしても買わざるを得ないほど非価格競争力のあるモノを日本が輸出してきた証拠
- だから直近の円安誘導をダンピングと非難する諸外国もある→ほかに比べて日本の製品だけが急にやすくなる
- 貿易赤字は原発が止まっていて、さらに円安で化石燃料の価格が高騰し輸入が増えたから
- 日本が赤字を貢いでいるのは、資源国ばかり
- それ以外では継続して黒字を保っている
- 企業や個人は世界に余剰資金を投資している
- その配当は黒字
- 日本は未だに外貨を稼いでいる経常収支黒字国を続けている
- むしろこれ以上円安が進みすぎる方が危険
- (このへんは同一意見)
➤「近経のマル経化」を象徴する「デフレ脱却」論ー日本ダメダメ論の誤り(3)
- 物価が下がり続けるということは、金銭を稼いでいない、貯蓄に頼って生活している層には貯蓄のみならず加地が目減りするどころか増えていくことになり、実は都合がよい
- しかし、現役層には自分の経済活動の価値がどんどん下がっていくという厳しい状態
- 設備投資も減る
- 経済を冷やす悪循環
- しかし、世界の通常の国はインフレで日本だけがデフレということは、円高がどんどん進行し、結果として日本の経済価値は減らないということになる
- 国内では価値は下がっても、海外からみた日本の価値は下がっていない
- デフレ脱却、リフレ
- 日銀の金融債緩和
- 際限なくお札を刷ればいつかはインフレ。
- しかし、インフレが緩やかに始まるという根拠を保証できるほど、理論的成熟も実証データの蓄積もない
- 加熱してしまったインフレを制御できる施策があるかというと、ない(せいぜい金融引き締め)
- 市場経済は政府当局が自在にはコントロールできない
- 近代経済学のマルクス経済学化→それができると考える
➤真の構造改革は「賃上げできるビジネスモデルを確立する」こと
- 日本で「デフレ」といわれているものの正体は、不動産・車・家電・安価な食品など、主たる顧客層が減りゆく現役世代であるような商品の供給過剰を、機械化され自動化されたシステムによる低価格大量生産に慣れきった企業が止められないことによって生じた「ミクロ経済学上の値崩れ」
- (これはそのとおりだな、と思う)
- (消費増税も結果として売れないので、価格を下げざるを得なくなると思っているし。)
- これを解決するには「企業による飽和市場からの撤退と、新市場の開拓」がデフレ脱却をもたらす唯一の手段(これが、イノベーション、構造改革、成長戦略と政府が呼ぶもの)
- 構造改革とは?
- 賃上げできるビジネスモデルを確立すること
- 賃下げにより足元の利益を確保することで自分の国内市場を年々自己破壊していくことではないー271
- 年平均1%でいいので人件費水準をあげていけば(別の言い方をするならば、年平均1%勤労者が減っていくなかで給与総額を横ばいに維持できれば)日本経済は衰退しない
- (それはリタイアが前提になっている)
- 年間100万人の死者が平均で残す財産は3500万円→年間35兆円が次世代に引き継がれている
- あらゆる手段をつかって高齢富裕者層から女性、若者にお金を回させること
- 東アジア諸国でも少子化は深刻
- さらなる金融緩和で事態は解決すると主張するリフレ論が横行すればするほど、旧態依然の低価格大量生産の企業に限って政府の助けを期待し、自らのイノベーション、構造改革を怠る結果になる
➤不安・不満・不信を乗り越え未来を生む「里山資本主義」
- マネー資本主義はしょせん地に足つかぬ空中戦
➤天災は「マネー資本主義」を機能停止させる
- 大都市圏では燃料、食料はもちろん飲料水すらまったく自給できない→天災のときには地方のほうがよい
- 可能性としてはかなり低い
- しかし、その低い可能性でも心配してしまえるほど高度に発達した人間の業というものが、不安・不満・不信の根源をつくりだす
➤インフレになれば政府はさらなる借金の雪だるま状態となる
- 毎年の国債の増発
- 極度のインフレが起きたら、これまでの金銭的蓄積を元も子もなくす事態が起きる危険性もある
- これまで際限なく国債残高を増やし続けてこれたのは買い手がいたから
- その九割は日本の企業ないし個人
- 経常貿易収支黒字が減り続けるということは国内での国債消化能力が大なり小なり下がっていくことは避けられない
- →それは低金利では難しい
- 金利の動きは世の気分次第で極端な動きをする
- 金利が上がれば国の資金繰りも無事ではない
- 現状でも年間の国債金利支払額は10兆円→政府の年間税収の四分の一
➤「マネー資本主義」が生んだ「刹那的行動」蔓延の病理
- 問題をここまでにしてしまったのには、瞬間的な利益を確保するためだけの刹那的行動に走ってしまって重要な問題を先送りにしてしまうマネー資本主義に染まった人間共通の病理がある
- このような社会では日本人自身が内心で自分たちの明るい未来を信じなくなる
- 土木建造物の老朽化も一般に認知されないなど、この病理が露呈することがしばしば散見されるようになってきた
- 福島の原発事故もしかり(筆者)
➤里山資本主義は保険。安心を買う別原理。
- 刹那的行動は我々日本人がマネー資本主義の先行きに対して根源的な不安を抱き、心の奥底で自暴自棄になってしまっているところからきている
- またそのマネー資本主義のシステムが機能停止してしまったときのバックアップシステムが存在しないところからもきている
- そのようなふあんとの訣別→里山資本主義
- 身近なものから水と食料と燃料を得られているという安心
- 里山資本主義の保険の掛け金はお金ではなく、自分自身が動いて準備することそのものである
- 保険なので有事でないと稼動しないかもしれないがいざという時、天地の差になる
➤刹那的な繁栄の希求と心の奥底の不安が生んだ著しい少子化
- 年間1.6%で14歳以下人口が減っている
- 過去30年間で日本で生まれる子どもは四割減った
- (個人的にはそれそのものが悪いこととは思っていないので、あまりこのあたりには賛同するところがない。子どもを増やすことが必ずしも生産につながるという話はあまりにも短絡的だから)
- 少なくとも生産年齢人口は大幅に減る
- 移民はこれを解決しない
- 移民先の国民と同化すればするほど出生率も移住先の国民と同レベルになるまで急速に低下するから
- シンガポールでも進む少子化
- ただし、少子化の原因はこれだというものはでてきていない
- 要因が複雑に絡み合っているから
- しかし、推定はできる
- 首都圏が特に低く、地方は高い
- むしろ若い女性が働いていない(首都圏は働いていない???)地域より、夫婦ともに働いている地域のほうが出生率が高い
- (あまり釈然としない。首都圏の方が働いていそうな印象がある)
- 子育てに親世代や社会の支援が厚く、子育て中の収入も確保しやすい地域ほど子どもが生まれている
- (こちらは納得できる)
➤里山資本主義こそ、少子化を食い止める解決策
- 未来を信じられなくなり子孫を残すことを躊躇う一種の自傷行為が子どもを産むことを躊躇わせる
- (中には自分の人生を自分のために使いたいと思っている人間もいるということはわかってなさそう)
- 少子化は日本だけではない
- (しかし、後進国では逆に増えているわけで地球全体でみたら、どんどん増えている。マクロでみたら子どもを増やすことが発展につながるレベルを逸脱している。日本の今くらいに里山資本主義の考え方をプラスして自活するのがベストのように思われる)
- 地方にも職場は心配するほどではない状態になってきているー289
➤「社会が高齢化するから日本が衰える」は間違っている
- 少子化とは別問題として横たわる高齢化問題
- 一言です言えば、高齢者の絶対数の増加
- 75-ないし、85-の人口の急増
- 2040、85歳以上の人口が1000万人をこえる
- ただし、2070には大きく減る。少子化と異なり時間が解決するとも言える
- 里山資本主義が明るい高齢化の道を進ませる
➤里山資本主義は「健康寿命」を延ばし、明るい高齢化社会を生み出す
- 里山資本主義の普及でさらに日本の健康寿命が延びる
- 長野、男性の平均寿命最長
- しかし、一人当たりの医療費は最低レベル
- 入退院をくりかえさせるのではなく、家庭に出向いて大きな生活習慣病を防ぐ予防治療が取り組まれてきた
- 長野県が日本有数の里山であることも無視できない(筆者)
- 田舎に移住しなくても道はある
- 大都市周辺で増える空き家→それを次世代が家庭菜園にすることはできる
- びゅうヴェルジェ安中榛名
➤里山資本主義は「金銭換算できない価値」を生み、明るい高齢化社会を生み出す
- 明るい高齢化社会の根拠(2)
- 里山資本主義の普及が金銭換算できない価値を生み出し地域内での好循環をつくりだすと思われるから
- 例として庄原の高齢者福祉施設(前述)
- 地域で循環する分、GDPは下がるが国民は豊かになる
- お金を稼がずとも社会的な価値を生み出す高齢者ももっと評価されていい