ながらく読了しても読書メモを公開してこなかったですが、また再開していこうと思います。
前回、最後に読了本の読書メモを公開してから間がだいぶあいているのでそこそこストックがあるのですが、まずは炭水化物が人類を滅ぼす~糖質制限からみた生命の科学~ (光文社新書)から紹介したいかな、と。
一言で言うと本書は糖質制限についての著者の「仮説」を説明している本で、米・小麦を主食とすることをやめることによって、より健康になれるといったことを謳った本でした。
大事なのは著者が実践して実体験しているとはいえ「仮説」だということで、すべてを鵜呑みにするのは危険だということですかね。
わたしの場合、少し参考にさせてもらって夕食に米をあまり食べるのをやめたり、間食をとるのをやめるようにしたりしてみています。少し前からランニングを始めたことも加えて、以前に比べると大分カラダが締まってきたように思います。
とりあえず糖質制限を実践してみるとしても、過度にやりすぎるのは控えたほうがいいとわたしは思います。(何より米はおいしいですからね。)
では、以降からがわたしの読書メモです。ご参考まで。
はじめに
- しかし、いつ中年オヤジでもスリムに変身できる方法の紹介
- 短期間で努力なしに、ほぼ確実に痩せられる
- 至極簡単なその方法は「糖質制限」
- 炭水化物と砂糖類を食べないというシンプルきわまりないもの
- 男性に読んでほしいのではなく、女性に読んでほしくて書いたという
- 外傷の湿潤治療のインターネットサイトを運営する著者、外科医
- 専門外だがなぜ?
- 単純に医学的・科学的に糖質制限が面白いから
- 自分の体を実験台にできる面白さ、自分の体重と体質がみるみる変化する面白さ
- 糖質制限は「ホモサピエンスの本来の食べ物は何だったのか?」「人間はなぜ穀物を栽培するようになったのか?」「農耕はどのようにして始まったのか?」というような人類史の根幹に迫る手がかりを教えてくれる
- 人類と食を考えるなら弥生時代ではなく、縄文時代ということになる
- 糖質制限で体質が改善し、体重が減るという現象を解き明かすキーワードが「縄文時代の食生活」
- 穀物栽培によりホモサピエンスが失ったものも多
I やってみてわかった糖質制限の威力
➤1 体型が学生時代に逆戻り!
- 著者、半年で11キロやせて59キロに
- 当時、朝はオールブランなどのシリアルだけ。昼は売店で買った弁当。夜はビール、日本酒と野菜炒めと焼き魚、主食なし。な生活
- しかし、上半身は貧弱なのにお腹ぽっこり体型だった
- 江部康二氏のインターネット記事を読んで
- それを、昼食のご飯を半分残し、三分の二を残しとご飯の量を減らしていった
- そうしたらお腹が凹んでいった
➤2 高血圧も高脂血症も自然に治っていた
- 糖質制限開始から5ヶ月、高血圧が治っていた
- 昼食のごはんを食べなくなったのと、日本酒を飲まなくなっただけで。
- 中性脂肪、LDLコレステロールの値も正常化
- 唐揚げやフライは普通に食べていた
- 糖質制限では脂肪とタンパク質は好きなだけ食べられる
- カロリー制限なし、脂肪摂取制限なしで
- 医学の常識のほうが間違っているのではないか
➤3 昼食後に居眠りしなくなった
- 一般的には「ご飯や麺類は消化がよい、しかしお肉は消化に悪い」。これが大きな間違い。
- むしろ逆だという
- 肉類は胃酸で速やかに消化されて小腸に送られるため、胃滞留時間は短い
- 胃の外科手術でも残っているのは米粒、麺類、そして野菜のことが多いという
- ゲロの中身をみてもそれは明らかという
- 二日酔いについて
- しめに雑炊やラーメンを食べると、それらは胃袋に残り続け胃は胃酸を出し続ける
- つまりより二日酔いになりやすくなる
- 逆流性食道炎
- 二日酔いの原因は酒ではなく糖質
- (どっちにしても飲み過ぎはよくないだろ)
➤5 睡眠時無呼吸が治った
- 睡眠時無呼吸の原因
- 肥満
- 糖質制限で肥満が解消したら治った
➤6 糖質センサー、発動!
- こうなってくると自然と主食を食べるのが苦痛になってくる
- 脳みそが自然と拒否するようになる
- 食べ物に入っている糖質に敏感に反応するように
- 糖分に対して味覚がセンシティブになっていく感じ
- デンプンにも反応。
- ビールや日本酒も量を飲めなくなった。
➤7 病院で糖質制限、流行中
- 自分の勤めている病院で、ということ
II 糖質制限の基礎知識
➤1 「糖質」って何?
- 簡単にいうと、「血糖値を上げる栄養素(食品)」
- 摂取したあと、速やかに血糖に変わるのが糖質
- 問題の本質は血糖値を上げるか、上げないかだけ
- 血糖があがると人体に害
- それゆえに体はそれを筋肉細胞などに取り込むことによって減らす
- しかし、糖尿病の人の場合には血糖を減らす機能のスイッチとなるインスリンがうまく働かないため、高血糖状態に→目の網膜や腎臓に障害が起こることがある
- 血糖を最も効率的にあげるのがブドウ糖(グルコース)
- 糖質制限ではブドウ糖そのものが含まれるものは避ける
- 体内でブドウ糖に変わるデンプンも避ける
- しかし、同じ炭水化物でも食物繊維のように人体が分解も吸収もできないものであれば食べても問題ない
- 果物に含まれる果糖(フルクトース)などは中性脂肪に変化して太る原因
- 乳糖(ラクトース)は摂取してもよいよう
- 人口甘味料のたぐいも血糖をあげる作用はない
- 問題は血糖値の上昇なので、血糖値と関係ない食品(タンパク質、脂肪)は摂取を控える必要はないし、摂取カロリー数を計算する必要もない
➤2 食べていいもの、駄目なものー41
- 米、小麦(うどん、パスタ、パンなど)、蕎麦
- 原則的に食べてはいけない
- 玄米も血糖をあげる
- 砂糖が含まれるもの
- 食べてはいけない
- 肉、魚、卵
- いくら食べてもいい
- 大豆製品(豆腐、納豆、枝豆など)
- いくら食べてもいい
- 野菜(葉物など)
- いくら食べてもいい
- 野菜(根菜類)
- ニンジン、レンコン、イモは糖質が多く食べないほうがいい
- キノコ類、海藻類
- いくら食べてもいい
- 果物
- アボカドは食べてもいいが、その他の果糖の多い果物は肥満の原因になるので摂取を避ける
- 乳製品
- チーズはいくらでも大丈夫
- ヨーグルト、牛乳は大量に飲まないこと
- ナッツ類
- 食べても大丈夫(例外→コーン、ジャイアントコーン)
- お菓子、スナック
- 原則的に食べてはいけない
- 油類
- いくら食べてもいい
- マヨネーズ、バターも大丈夫
- 揚げ物
- フライ、唐揚げの衣程度なら、大量摂取しなければ大丈夫
- 食べすぎは駄目。衣には結構糖質
- ジュース、炭酸飲料、缶コーヒー、スポーツドリンク
- 無糖以外は駄目
- 酒類
- 醸造酒は駄目
- 蒸留酒はよい
- 甘くない赤ワインは大丈夫
➤3 糖質制限の種類
- プチ糖質制限
- 夕食のみ主食ぬき
- スタンダード糖質制限
- 朝食と夕食のみ主食ぬき
- スーパー糖質制限
- 三食ともに主食ぬき
- まず、糖質制限に興味をもったら、プチ糖質制限にチャレンジしてみるべき
- スタンダード糖質は、それに慣れたサラリーマンむけ
- スーパーは糖尿病患者向け
III 糖質制限にかかわるさまざまな問題
➤1 「主食」という言葉を忘れてみる
- 日本人の食事は基本的に、ご飯(主食)とおかず
- その上下関係が明らか
- しかし、それは人類普遍のものではない
- 欧米言語には主食に該当する言葉がない
- 糖質制限のすごいところは、この日本人の食の原点ともいうべき「主食」を完全否定しているところ
➤2 個人で始めるのは簡単なのに
- 糖質制限そのものは簡単
- 必要な知識は食材に含まれる糖質の量だけ
- 今日の昼からごはんをやめるか、で始められる
- 朝食、夕食ではじめるとなると大変
- 家族の食事をどうするのか、という問題
- 傷の湿潤治療並みのパラダイム・シフト
➤3 パラダイム・シフトにおける個人と組織
- 個人が変化を受け入れるのは難しくないが、集団では難しい
- しかし、変化を受け入れられる人間は必ずいる
- やがて、その人間の説明を受け入れようとする人も増える
- つまり、今後糖質制限をする個人が増えることはあっても減ることはない
➤4 単身赴任者、独身者ほど、糖質制限を始めやすい
- 居酒屋、コンビニという強い味方
- 最近のコンビニはおかずだけで売っている
- おかずだけかって食えばいい
- また、味付けが単純で使われている食材も分かりやすい
- 人類はつい最近まで1日二食だった。三食腹一杯のほうがむしろ不自然
➤5 高級和食、本格中華、イタリアンの問題
- 高級料理ほど、使っている食材が複雑で分かりにくい
- 筆者のホームページに「プロの技を込めて作った糖質制限食」の紹介
➤6 角砂糖に換算してみよう
- SUGAR STACKS というサイト
- アメリカで売られている食品に含まれている糖分をまとめたサイト
- 角砂糖に換算
- スポーツドリンクが盲点
➤7 唐揚げ、フライは食べても大丈夫?
- 糖質制限をするならあまり生真面目、ストイックに考えない方が長続きする
- なんちゃって、でもそれなりの効果
➤8 糖質オフのアルコール飲料
- 人工甘味料があますぎる(著者意見)
- 糖質オフの飲料の味を決めるのは糖質制限をしている人であるべき
➤9 糖質制限とエンゲル係数
- 糖質制限をはじめると最初に直面するのはエンゲル係数の増加
- 食費がよりかかるようになる
- 米や小麦の方が安い
- 満腹感を与えてくれるものこそ炭水化物
- 糖質制限は「安くて腹一杯食える炭水化物」を食べない食事法
- 炭水化物を減らした分を何かで補わなければならなくなる
- その候補は、タンパク質と脂肪以外にない
- しかし、いずれも炭水化物よりも高い
- しかし、糖質制限に慣れてくると逆にエンゲル係数は下がる
- 豆腐などの値段の安い大豆製品がごはんの代わりになる
- 糖質制限をするとそれほど量をたべなくてよくなる。一食分が確実に減る
- 食べ物から得られる栄養素とカロリーには関係はない。炭水化物を減らした分を同量の肉で補う必要はない
IV 糖質セイゲニスト、かく語りき
- 著者のインターネットサイト
- 新しい創傷治療に寄せられた「糖質制限を実践してみた人の声」、その紹介ー66
- 糖質制限をしたら
- 痩せた
- 抜け毛が減った
- 花粉症が軽くなった
- 生活が規則正しくなった(寝起きがよくなった)
- 高タンパク、高脂質、糖質ゼロ
V 糖質制限すると見えてくるもの
(1)糖質は栄養素なのか?
➤1 糖質を食べると眠くなる
- 糖質食により血糖値があがり、それに応じてインスリンが分泌され、今度はその働きによって低血糖になるため
- だから、逆に糖質をとらないと眠くならない
- 糖質制限をすると昼間に眠らなくなるため、夜熟睡できる
- 睡眠障害の原因のひとつも糖質食である可能性は否定できない
- 抗うつの効果も?
- 糖質を食べると眠くなるという現象が、本来の人類は糖質を摂取していなかったことを証明
- 糖質をとって眠りこけていたら、肉食動物に食い殺されていた
➤2 「甘くない」デンプンの罠
- 素うどん一玉=角砂糖14個
- 同じ量の糖質を含んでいるデンプンなら簡単に食べられてしまう
- 炭水化物は食べ続けでも飽きがこず、おかずの味付けによって変化を加えればいくらでも食べられてしまう罠
- デンプン→アミラーゼ(唾液)が分解、ブドウ糖へ
➤3 炭水化物は必須栄養素なのか
- 栄養学の教科書では、「糖質(炭水化物)、タンパク質、脂質が三大栄養素」
- 脂質の比率は25-30%に抑えるべき
- 炭水化物は60%
- と書いてある
- 三大栄養素のなかで最も重要とされているのは炭水化物
- しかし、糖質制限をしてみると人間は炭水化物がなくても普通に生活できる
- そのうえ、肥満、糖尿病、高血圧、高脂血症も治ってしまう
- 著者の知る限り、糖質制限に切り替えて不健康になった人はいないという
- 生物学的な証明
- 糖新生→タンパク質さえあれば、アミノ酸を材料にしてブドウ糖を合成できる
- 必須アミノ酸、必須脂肪酸のように人間が体内で生合成できないからいやでも外部から取り込まなければならないということがない
- 現在の栄養学は科学から程遠いところにある
➤4 糖質は嗜好品だー89
- 人間にとって糖質とは何か?
- 必須栄養素ではない
- 摂取しなくても問題ない
- かえって摂取することでトラブルを起こしているだけ?
- 採らないと人生が味気なくなる人が多数
- それは糖質が嗜好品だということ
- タバコや酒に似たもの
- 嗜好品の4条件
- 食べなくても生きていける
- 薬ではない
- 食べると精神的な満足感、幸福感
- 食べられないとわかると寂しい感じがする
- 糖質中毒
- 血糖がそれを欲せさせる
- 血糖切れがそれをより欲せさせる
- 血糖値を上げるために糖質を欲するようになってしまっている
➤5 これがバランスのとれた食事?
- WHO の推奨
- 総炭水化物:総タンパク質:総脂質=55-75%:10-15%:15-30%
- 砂糖、ささみ肉、サラダ油に換算ー96
- 砂糖330-450g
- ささみ253-380
- サラダ油40-80
➤「食事バランスガイド」は糖質過多だ
- 1日にごはんなら中盛り4杯、うどんや蕎麦なら3杯、食パンなら6枚
- 砂糖に換算→一食分110-150g
➤この「ガイド」はそもそも科学ですらない
- 厚労省、農水省のガイドは毎食必ず角砂糖38個食べなさいと言っているようなもの
- このガイドは日本人の平均的な食事を調査し、その平均値から割り出したもの
- 科学ではない、と
(2)こんなにおかしな糖尿病治療
➤1 糖尿病の食事療法は矛盾だらけ
- 糖尿病
- まずは食事制限。内服薬。それでも血糖値が下がらないなら、インスリン注射
- 食事療法とは?
- 一日の総カロリーを1600カロリーに抑える
- 糖質:タンパク質:脂質=60%:16-20%:20-25%
- 脂質の取りすぎがよくないという観点
- 血糖値をあげるのは糖質なのだから、それはおかしくないか?
- 糖質6割をとっているかぎり、糖尿病は治らない
- つまりインスリン注射するしかない
- これこそマッチポンプではないのか
- この詐欺的治療が成り立つ条件
- 患者が血糖と糖質の関係をしらない
- 医者のいうことを疑わず頭から信じている
- 糖質制限についてしらない
➤2 糖質制限はすべての人に福音か?
- 糖質制限が一般化して普及すると2型糖尿病(肥満による成人型糖尿病)そのものが日本から姿を消す可能性がある
- 高血圧、高脂血症も
- 糖質制限が福音とならないのは、既存の糖尿病治療でめしを食ってきた人々
➤3 糖尿病はドル箱
- 製薬会社にとってのドル箱
- 患者数が多く、一生涯治療が必要
- 医者が治すのではなく、投薬に依存している
- 糖尿病、高血圧、高脂血症
➤4 治っている病気、治っていない病気
- 高血圧治療は近視とメガネの関係に似ている
- メガネをかけたら近視は治っているのか?
- 高血圧が治るとは、降血圧剤を飲まなくていい状態
- 薬を飲み続けている状態は治ったとは言わない
➤5 治らない病気こそ儲かる
- 病気や怪我には二種
- 骨折や肺炎のように治ってしまうと治療が必要なくなるもの
- 高血圧や糖尿病のように一生涯、治療(内服薬や注射)が必要なもの
- 後者のほうが儲かる
- つまり、それをなくしてしまう糖質制限は、そこで儲けている人々にはありがたくない
➤6 糖尿病学会側から糖質制限を見ると
- 糖質制限は最強の糖尿病予防法なのだが
- 糖尿病学会とそれに所属する糖尿病治療専門医には困った存在
- 仮にそれを糖尿病の専門医が知ったとしても、それを患者の治療に応用するのは現実的に困難
- むしろ混乱を招くという
➤7 「糖質制限は危険」のネガティブキャンペーンの正体
- では、糖尿病の専門医や学会の理事がとるべき道は?(二通り)
- 糖尿病学会を無用の存在として解散・消滅させる
- 自分の権威を守るために、糖質制限を攻撃・否定する
- 後者を選択した結果
- 糖質制限の安全性は確立されていない。別の病気が増えるかもしれない、という見解
- 患者を守るか、治療法を守るか?
- こういうことはこれまでもあった
- 虫垂炎治療論争
(3)穀物生産と、家畜と、糖質問題
➤1 穀物の現状
- 日本人が日々食べているものはほぼ糖質そのもの
- 米
- 小麦
- トウモロコシ
- 芋類
- サトウキビ、甜菜
- 人類の食を支えているのは穀物であり、糖質
- 穀物と無縁なのは、
- 大豆食品、魚介類、野菜類、果物
- 米だけが自給
- ほかはアメリカ、オーストラリア
- 世界の穀倉地帯
- 世界の穀倉地帯は先行き不透明
- 環境破壊型農業
- 持続可能型農業の二通り
- なぜ先行き不透明か?
- 窒素肥料による「緑の革命」の弊害
- 塩害
- 地下水の枯渇
➤2 穀物生産の危うい現状
- 原人類の人口増加を支えてきたのが穀物の栽培
- 1960年代の緑の革命→穀物生産と食料生産に大革命
- 単位面積当たりの収穫量が右肩上がりに上昇
- 化学肥料、農薬の大量使用。機械化、大規模化。品種改良。灌漑技術。
- 中核をなすのが、窒素肥料の開発と、灌漑技術の進歩
- アンモニア合成法
- 連作障害を気にせず耕作できるように
- しかし、過剰投与された窒素肥料が湖沼や海に流れ出し、富栄養化を起こした
- →赤潮
- 灌漑農法も不毛の大地を緑の耕作地にしたが、塩害をもたらした
- 耕地を増やそうと水をまけばまくほど塩があがってきてしまう
- 地下水の枯渇(灌漑で汲み上げてしまったから)
- つまり現在の大穀倉地帯での穀物農業は環境破壊型農業→破綻するシステム
- アメリカ、オガララ帯水層
- 淡水不足ー127
- 海面からの蒸発量は太陽からのエネルギー、人間側で制御できない
- 画期的な淡水化の技術ができないかぎり解決できない
- 人類が70億人まで増えることができたのは穀物、糖質のおかげだが、その穀物生産そのものが危うい状況にある
➤3 穀物生産が途絶える日
- 世界の人口は2050年に96億人と言われているが、そのまえに穀物不足がくる
- 穀物をたべつつ、穀物で育てた牛や豚を食べるという、穀物生産を前提とした食料生産・消費システムの破綻がくることを意味する
- 穀物生産が破綻したら
- 最初に家畜を穀物で育てて肉を食べるというシステムが破綻
- トウモロコシ生産の破綻をきっかけ
- アメリカ
➤4 非穀物食への道
- 糖質食にこだわってそれを奪い合うよりも生き延びる可能性はあるかもしれない
- 農業
- 大豆などの豆科の植物に転換するしかない
- 窒素肥料が少なくてすむ利点
- タンパク質も豊富
- 根に根粒菌という共生バクテリア
- 大豆だけでは、というのを補うのが蛆
- (ハエの幼虫)
- 育てて収穫してプロテイン粉末にする
- (すごいアイデアだ…)食べたい人だけ食べればよいということらしい
- 食料としての蛆を提案する理由
- 蛆は人間がたべないものを餌に育つ→競合しない
- 成長が早い。しかも餌をタンパク質に転換する効率がよい
- タンパク源として良質。
- 小規模の工場でも養殖可能。複雑高度な設備が不要。
➤5 牛はずっと草(セルロース)を食べてきた
- 牛にトウモロコシという本来の食物でないものを食べさせて霜降り肉にしている不自然
- コロンブス以前の牛はトウモロコシを口にしたことはなかったー134
- 牛の本来の食べ物は草(セルロース)
- 4つの胃袋に膨大な数の微生物や細菌を共生させることでいきている
- 動物が分解できないセルロースという高分子を、セルロース分解能力をもつ細菌を消化器官内に住まわせることで栄養素として利用している
- トウモロコシは炭水化物の塊
- 食物繊維はほとんどない
(4)食事と糖質、労働と糖質の関係
➤1 中世ヨーロッパの庶民は食事を楽しみにしていたのか
- 毎日毎日、同じ食事の繰り返しで単調だった
- でも毎日飽きることなく食べた
- 糖質制限に慣れると、自分が以前ほど「食事に執着していない」ことに気づいた(著者)
- 食べることを楽しみとしない人生も可能
➤2 快楽としての食
- そもそも食べるとは?
- 生命維持に絶対必要な行為
- 動物にとっては食とは、楽しみとは無縁のものではないか
- 人類も本来はそうだったはず
- いつから食は楽しみになったのか?契機は?
- 小麦や米といった、デンプンを大量に含んだ味も良い穀物が大量に栽培されてふんだんに手に入るようになったこと
- カリブ海でのサトウキビの大規模プランテーションにより、安価な砂糖が庶民でも入手できるようになったこと
- 食物を楽しみに変えたのは、砂糖と穀物
- 食事が快楽でない場合、食べる量を決めるのは胃袋の容量であり、容量以上に際限なく食べることはない
- しかし、食事が快楽になると食欲には歯止めがかからない
- 快楽としての食事は肉体の限界をものともしない
➤3 明暦の大火と1日三食
- 1日三食は当たり前ではなかった、最近まで
- 穀物食との深い関係
- 明暦の大火のあとの復興、昼夜働き通し、朝と夕では足りなくなり、昼も。
➤4 食べるために働くのか、働くために食べるのかー穀物の奴隷
- 米なしに明暦の大火からの復興はなかった
- 保存が利く
- しかし、長時間労働には不向きな食材
- それで三食に
- 糖質制限なら1日2食でも足りる、が糖質主体だと1日3-6回たべないと空腹に襲われる
- 食べるために働くのか、それとも働くために食うのか
- この考え方自体、穀物が主体になってから生まれた考え方なのではないか
➤5 砂糖漬けの食事が好まれた時代ーイギリス
- 18-19世紀、一般的な労働家庭、妻や子供も働いていた
- 工場の労働で疲れ果てた女性でも簡単に作れる食事が工夫された
- その中心が砂糖
- 紅茶、ジャム、果物の砂糖煮、冷肉
- カリブ海の西インド諸島で生産された砂糖が大量にヨーロッパに輸入されて価格が下落し、一気に下流階層にも広まった背景
- ヨーロッパ、西アフリカ、西インド諸島をつなぐ悪名高き、三角貿易
- サトウキビも成長のために大量の水を必要とする環境破壊型の作物
- 過酷な労働も強いられる
- ゆえに労働力として奴隷を用いた
- 砂糖
- その白さで奴隷労働の悲惨な現状を覆い隠し、甘さで人間を魅了
➤6 疲労回復の妙薬
- 当時は栄養価が高い、健康食品という位置付けだった
➤7 糖質が労働の意味を変えた
- 安いコストで高い生産性をもとめる工場主が、休憩時間に砂糖たっぷりの紅茶を提供するのは工場運営と生産のコストパフォーマンスから考えたらベストの選択だった
- 日本でいうと米に塩辛いおかずを組み合わせると至福の美味
- 一度、それを覚えたら昔ながらの雑穀や大根飯にはもどれなくなった
- 雇用者側は安い賃金で長時間働かせたい
- そこに砂糖や米を介在させると、労働者側の欲求をうまくすり替えることができた
- 働くために食うのか、食うために働いているのかわからなくできた
VI 浮かび上がる「食物カロリー数」をめぐる諸問題
(1)世にも怪しい「カロリー」という概念
➤1 糖質制限で痩せるメカニズムー脂肪の摂取が増えても痩せる
- 健常人の血液には一リットルあたり、1gのブドウ糖
- 脳が一番のブドウ糖消費地
- 四六時中、脳は動いているので血管の中にはつねに最低必要量のブドウ糖がながれていなければならない
- ブドウ糖濃度(血糖値)維持システムがある
- このブドウ糖は食物に含まれるブドウ糖ではない→寝ているときにも消費される、食物由来のブドウ糖はあてにできるとはかぎらない
- それはタンパク質による糖新生で賄われている
- 糖質セイゲニストの場合
- 食事からのブドウ糖供給がない(少ない)
- 血糖の維持はすべて糖新生でまかなわなければならない
- つまり、身(タンパク質)を削って血糖値を一定に保っている
- 物質の分解にもエネルギーが必要→そこで脂肪を消費
- 結果として痩せるー159
➤2 三大栄養素のカロリー数
- 炭水化物とタンパク質は1gあたり4キロカロリー
- 脂質は9キロカロリー
- しかし、このカロリー数の測定方法はインチキ臭いという
➤3 なぜ食物をカロリーで考えるようになったのか
- 17世紀まで遡る
- エネルギー保存の法則
- 内燃機関における、投入した燃料と出力としての仕事量の関係に近い解釈
➤4 カロリーの算出法
- 1883、ルブネル
- 食物の熱量=食物を空気中で燃やして発生した熱量-同量の食物を食べて出た排泄物を燃やして発生した熱量
- ボンブ熱量計
- 保有エネルギー
- 物理的燃焼熱
- しかし、たとえタンパク質1gを食べたとして、5.56キロカロリーの熱エネルギーを摂取できるわけではない
- そこで精密でなくていいから概算値が得られる方法
- アトウォーターのエネルギー換算係数が用いられている
- 食物繊維(吸収しにくい)も分解効率に含めたのが修正アトウォーター係数
➤5 カロリー数への疑問
- 体温は40度前後、人体の中で脂肪も炭水化物も燃焼しない
- 細胞内の代謝と大気中の燃焼は全く別の現象
- エネルギー換算係数をかけて得られた熱量はキリのいい整数→数学的には不自然で恣意的。胡散臭い
- 動物界を見渡すと食物に含まれるカロリー数以上のエネルギーを食物から得ている動物が多数存在
➤6 チューブワームの生き方ー摂取カロリーゼロで生きる
- 深海生物
- 口も消化管も肛門もない
- 摂取カロリーゼロでいきる
- 体内に共生する硫黄酸化細菌がキー
- 硫黄バクテリアが硫化水素を取り込み、それの作り出したエネルギーの一部をわけてもらっている
- 太陽とも無関係に生きる
- 硫黄分子も減ることはない(形をかえて循環しているだけ)
- マグマ活動が生存のもうひとつのキー
- マグマ活動をもたらす地球内部の熱はどこからくるのか
- 地球生成時に微惑星や岩石が持っていた運動エネルギー
- ウラン、トリウムなどの天然放射性元素の自然崩壊による熱
- マントルの重金属(鉄、ニッケル、銅)が地球の核に移動する際の摩擦熱
(2)哺乳類はどのようにエネルギーを得ているのか
➤1 ウシの摂取カロリーはほぼゼロ?
- 反芻動物
- セルロース(植物の成分はセルロースと水がほとんど)が食事の大半
- しかし、ウシはセルロースを消化も吸収もできない
- これも共生生物との関係がキーを握る
- ウシは食物である草をすりつぶすメカニズムさえ提供すれば、あとは胃袋の中の微生物たちがセルロースを分解してくれる仕組みを手に入れたー177
- 複数の胃袋がそれを可能にする
➤ウマの生き方
- ウシに比べると無駄が多いー179
- 胃袋はひとつ
- 微生物との共生もない
- ゆえに穀物や芋類、マメ科の植物を食べる必要がある
- 摂取カロリーがある程度はないと生きていけない生き物
- ウマ科とウシ科だとウシ科の方が圧倒的に多い
- 食物からエネルギーを取り出す効率の差が影響?
- (人間の関与が関係あるようにも思わなくもないが…)
- ちなみに細菌は生存できる条件が整うなら、宿主がセルロースを食べてくれれば、宿主は何でもいい
➤3 肉食哺乳類の生き方ー182
- 食材としての食物の大きな問題点
- 食物を摂取する目的。生きるためのエネルギー源をえること。身体を維持するための材料をえること。
- 植物の体には一般にタンパク質と脂質はない
- 草食動物が植物を食べて体を維持するためには、植物に含まれる物質をなんとかして、体用の成分につくりかえなければならない。→消化管の共生細菌や微生物に頼る
- 動物の体をつくる素材として動物の体は理想的
- 必要な物質が過不足なく揃っている
- 草食動物と肉食動物の違い
- 食糧を手に入れるときに苦労するか、食糧からエネルギーと身体をつくる材料を手に入れる段階で苦労するかの違い
➤4 雑食哺乳類の腸管と共生細菌
- ヒトの場合はどうか?
- 消化管の構造をみる限りはもともとは肉食動物
- マウンテンゴリラやオランウータンは基本的に草食→巨大な結腸をもつ
- ヒトの場合、腸内細菌
- 人間の糞便の半分以上は腸内細菌→発熱量が正確に測れるわけはない
- 腸内細菌の働き
- 外部から侵入した病原菌の増殖抑制と排除機能
- 栄養産生機能
- 雑食動物は、食べられる食物の種類が多いので、環境の変化には対応できるが、食物の種類が増えるに従って、消化管の構造は肉食動物より複雑になるし、自前で準備しないといけない消化酵素の種類も増えてくる
(3)低栄養状態で生きる動物のナゾ
➤1 食べない人々
- 千日回峰行など
- 科学的に考えると人々は絶対に死んでいる
- 説明をしていく
➤2 肉食獣パンダがタケを食べた日
- もともと肉食だったのは腸管の構造からほぼ確定
- 本来の生息地を追われてタケや笹といった新たな食料に適応した
- 消化できる酵素を持たないのになぜ笹を食うのか?
- パンダの消化管には、他の草食動物の腸管と同じセルロース分解菌がいる
- 13種類は既知のセルロース分解菌、7種はパンダ特有のセルロース分解菌
- この変化は数万年かけて行われたものではない
➤3 細菌は地球に遍在する
- 地球は細菌の王国
- 動物にとって食物に付着して細菌が侵入する危険性は想定の範囲内
- 新参者の外来細菌が入り込もうとしても隙間すらない
- 腸管常在菌は互いにネットワークをはっていて、外来菌、とくに宿主にとっての病原菌の侵入に対しては一致団結してそれを排除しようとする
- しかし、それでも、細菌は食物を介して次々と入ってきて、一部は確実に大腸に到達している
➤4 草食パンダの誕生
- パンダが土地を追われて移動した先
- 草食動物がいるならば、セルロース分解菌は必ず存在する
- 排泄物に付着→タケの上にも付着→パンダはタケとともにその細菌も摂取→一部は胃酸でも溶かされずに大腸に運ばれる
- 細菌は、温度や酸素濃度などの生息条件から大きく外れなければ水と微量の栄養分で生存・増殖できる
- パンダの大腸も草食動物のそれも生存環境としては変わらない
- そして、新参者のセルロース分解菌にとってパンダの腸管内は競合が少なかった
➤5 1日青汁一杯の謎解き
- 森氏
- 腸内細菌叢を調べてみると人間離れしていて、草食動物のそれに近い
- 人間の腸内でセルロース分解菌が育つ環境をつくったということ
- 絶食療法→大腸内が貧栄養状態→腸内常在菌の数も種類も減った
- そこに青汁を飲む→経口的にセルロース分解菌が入るか、腸管内のセルロース分解菌が残っていれば奇跡が起こる→粉末状のセルロースはセルロース分解菌にとっての最適の栄養源
- (最初に断食していたことが重要だったのではないか)
➤6 セルロースが示す可能性
- 一般人がいきなり粉末状セルロースだけで生きていくのは難しそうだが、前もって絶食・断食を行い、それに慣れた時点で「粉末状セルロース+セルロース分解菌」の組み合わせを経口摂取すれば普通の人間でも生存可能かもしれない
- この推論が正しいなら、人類はセルロースの粉末を食料にすることができることになる
- 大量のセルロースを含むために食用と考えてこなかった植物、微生物が食料として脚光を浴びるかもしれない
(4)「母乳と細菌」の鉄壁の関係
➤1 母乳にオリゴ糖が含まれる理由
- オリゴ糖は問題
- 人間は基本的に分解できないから
- では、なぜ?役割は?
- 新生児の腸管にビフィズス菌が定着、増殖するのを助け、同時に有害細菌の定着を阻害する役割ももっている
- 有機酸や短鎖脂肪酸
- 母乳には、ブドウ糖もデンプンも含まれていない
- 脳が必要とするブドウ糖は経口摂取した糖類とは無関係という証明
➤2 共生体としての子ども(新生児)ー206
- 新生児が母乳から得るエネルギーの多寡を考えるなら、糖質のすべては乳糖であるべき
- そうでないのは?
- 母体にとっては無駄なことをしている→130種類のオリゴ糖を生成
- オリゴ糖によって作られる腸内細菌叢のメリット
- 新生児死亡を減らす
- 母体が費やすエネルギーをはるかに上回るメリットではないか?
➤3 [母乳+ビフィズス菌] ユニット
- 母乳と一緒にビフィズス菌を飲み込んでいる
- 子宮内にいるときの胎児の腸管内は無菌
(5)哺乳類はなぜ、哺乳をはじめたのか
➤1 子どもはなぜ、小さいのか
- 親と同じサイズで生むのが理論的には理想的
- 母体の都合上それは無理
- 卵生の動物でもそれは同じ
- 親より小さな子どもを産まざるを得ない
- しかし、なぜ母乳で哺乳類は子どもを育てるのか?
➤2 親と異なったものを摂取する動物
- 食物の問題
- 親と同じものを食べるか食べないか
- 前者は魚類、爬虫類、鳥類、昆虫
- 後者は哺乳類と完全変態する昆虫
- 前者と後者の違い
- 大人になる前に消化管の仕様変更が必要か否か
- 仕様変更が必要な場合、その期間は体は脆弱な状態になる。昆虫ならさなぎ。
- 肉食主体の雑食動物である人類の乳児にとって炭水化物のみの離乳食は、時として命取りとなることを示している
- 低タンパク質状態になってしまうから
➤3 草食動物の新生児は草食で生きられるか
- 体積は長さの三乗に比例するため、体のサイズが倍に増えれば容積は8倍。
- しかし、逆に小さくなる分には1/8になるということ
- その分、共生菌が住む量も減る
- つまり、草食動物はある程度のサイズに育つまで完全草食には切り替えられない
➤4 肉食動物の新生児は肉食で生きられるか
- 肉食水動物は可能
- 水中にはプランクトンが豊富
- 陸上は困難
- 口をあけていればプランクトンが入ってくる水中とは異なるため
➤5 子ども(新生児)に何を与えるか
- 必要なのは、タンパク質と脂質と必須ビタミン、微量元素など
- 液体か半流動体が望ましい(咀嚼機能が十分ではないから)
- 保温にも注意が必要
- そんな都合のいいものが、皮膚腺分泌物
- ようは母乳ってことになる
(6)皮膚腺がつないだ命の連鎖
➤ 1 アポクリン腺とエクリン汗腺
- 汗などはエクリン汗腺
- アポクリン腺、ワキガの原因などで有名
- しかし、動物界ではアポクリン腺が一般的
- その分泌物の成分
- タンパク質、糖類、ピルビン酸などの脂肪酸、鉄分、ステロイド類、リポフスチン色素、アンモニア、尿素
- 広がりやすく、水分の蒸発を防ぎ、水に溶けにくい必要があった
- 皮膚と毛を守るため
- 新生児に必要な栄養素と同じ
➤2 アポクリン腺から乳腺へ
- 母体を舐めるだけで新生児はトータルとして必要な量のタンパク質や脂肪酸を得られる
- 母体にもメリット
- 新生児を育てるための新しい器官をつくる必要がなかった
- アポクリン腺が全身に偏在しているため、子どもの成長に従って栄養要求量が増えた場合にも、個々のアポクリン腺の分泌量をちょっと増やすだけで対応できた
- 哺乳類の乳腺はほぼ、このアポクリン腺から進化したことはほぼ間違いない
- 比較解剖学、生化学
➤3 皮膚から見た動物の進化
- 現在の哺乳類は哺乳形類から「皮膚・皮膚腺・体毛」を受け継いでいる、ワンセットで。
- 柔軟でしなやか
VII ブドウ糖から見えてくる生命体の進化と諸相
(1)ブドウ糖ーじつは効率の悪い栄養
➤なぜ脳はブドウ糖を主たる栄養源にしているのか?
- 人体の多くの組織のエネルギー源は脂肪酸
- 脳に必要なブドウ糖が足りなくなることはないー前述
- しかし、なぜ脳はブドウ糖を栄養源にしているのか?
- 脂肪酸のほうがエネルギー生成効率ははるかによいのに
➤2 脳が脂肪酸を使わない理由
- ブドウ糖とケトン体は水溶性。脂肪酸は脂溶性物質。
- 細胞膜を自由に通れるか、否か、ということ
- 脳は前者を選んだ
- 脳の仕事、現在の状況を把握し、必要な行動を決め、その命令を手足の筋肉に送る
- 肉体を取り巻く環境は刻々と変化、柔軟な対応ができないといけない
- 情報伝達物質が飛び交っている
- そこに情報攪乱物質である脂肪酸が動き回ったらどうなるか?→ゆえに脳は脂肪酸が入らないようにした
- 脳や抹消神経には脂肪酸は使いたくても使えないエネルギー源
- DHA は例外
- EPAのような神経細胞の細胞膜に必要な機能的な脂肪酸も例外
- 脳にとってブドウ糖は都合のよいエネルギー源
- 水溶性
- 細胞膜を自由に通り抜けることができない
- 細胞膜を通り抜けるにはトランスポーター物質が必要→つまり脳にとっては制御しやすい
- 結果、主にブドウ糖を使っているのは、脳、網膜、赤血球になる
- 赤血球にはミトコンドリアがないため、脂肪酸をつかおうにも使えない
➤3 動物の血糖値ー活動性は血糖値で決まっている
- 脳の活動を維持するためには、 100mg/dl という血糖値
- 体温36度、血圧120、体重60kgの正常値
- 多くの哺乳類がその近辺の値
- 活動量で異なる値の分布
- ほとんど動かない→30程度
- 活発に動く→100程度
- 飛行する→300程度
- 鳥類は特殊ー237
- 鳥類はインスリン感受性が高い
- 哺乳類と全く異なる血糖低下メカニズムを有していて、血糖を高く維持するための特殊なシステムを備えている
- 血管系の神経支配が哺乳類と全く異なっていて高血糖状態が続いても哺乳類にみられるような糖毒性が発生しない
➤4 脳は惜しみなく糖を奪う
- そのために以下のものが必要になる
- 血糖値の低下を鋭敏に感知するセンサー
- ブドウ糖を補充して血糖値を保つシステム
➤5 糖質を摂取せずに血糖は維持できている
- 血糖低下の感知部門
- グルカゴン、アドレナリン、コルチゾール、成長ホルモンなどのホルモンが担う
- 複数あるのは、低血糖が直接的に清明の危機をもたらすから
- 血糖値を維持するためのブドウ糖は食事由来ではない(前述にもある)
➤6 糖新生と皮下脂肪
- 動物たちは血糖の維持を糖新生によって行っている
- 糖原性アミノ酸
- ピルビン酸
- プロピオン酸
- グリセロール
- 乳酸
- 糖新生は常に起きている
- そのエネルギー源は脂肪酸
- これが人間が皮下脂肪組織が発達している理由かもしれない
➤7 脳はブドウ糖に固執した
- 脳神経細胞が直接脂肪酸を取り込むことは脳の機能維持に不都合
- また、脳は多細胞生物進化の早い段階で完成し、その当時の最先端システムであるブドウ糖を利用する代謝システムを採用したが、その後、他の組織が脂肪酸という最新鋭システムに乗り換えたときに変化に乗り損ねてしまったのではないか
- 根本から構造を変えるのはリスクが高い、うまく機能しなければ命取り
(2)エネルギー源の変化は地球の進化とともに
- タイトルどおり、時系列で代謝の仕組みの変化を追っている内容
➤1 生命誕生もブドウ糖
- 好気性代謝
- 嫌気性代謝
➤2 そして脂質代謝が始まる
➤3 真核細胞の誕生とブドウ糖
- 地球上の全生命体は3つのグループに分かれる
- 古細菌(アーキア)メタン生成菌
- 真正細菌(バクテリア)
- 真核生物(ユーカリア)
- 最終的にメタン生成菌はαプロテオバクテリアを細胞内に飲み込んでしまった
➤4 全球凍結が真核生物にチャンスを与えた
- 由緒ある先住民である古細菌や真正細菌よりひ弱な新参者が生存できたのはなぜか?
- 地球環境の激変→全球凍結
- これが原始真核細胞にとってプラスに働いた
- 幸運だったのは、細胞内のαプロテオバクテリアが酸素を使った好気性代謝ができたこと
- もともと酸素は活性酸素を発生してDNAを直接破壊する毒物
- 全球凍結後、シアノバクテリア大繁殖
- シアノバクテリアによって酸素濃度が増えた
- 逆に古参は嫌気性代謝
- ある意味、真核細胞が生き残ったのは奇跡的
➤5 2度目の全球凍結
- 14-10億年前に地球最初の多細胞生物
- 多細胞生物が脂肪酸の貯蓄と利用をはじめるのは、2度目の全球凍結(7億6000-7億年前)ではないか(著者の推察)
- 溜め込んだ脂肪酸を活用して少しずつそれを生存のためのエネルギー源として使う術を編み出した
- ブドウ糖を難溶性多糖体に変換して溜め込む方式(現在の植物)
- 中性脂肪を溜め込む方式(現在の動物)
➤6 最後の全球凍結
- 生物がより俊敏に動けなければならなくなっていくー270
- 脂肪代謝という新型エンジン
- 情報攪乱物質である脂肪酸を神経から切り離す必要も生じたはず
➤7 非常用貯蔵物質としてのグリコーゲン
- ブドウ糖がグリコシド結合で重結合した高分子
- 分解することでブドウ糖が得られる
- 人間では肝臓と筋肉に貯蔵
- 動物界では普遍的に存在する高分子
- 日常的な動作や作業では脂肪酸代謝で得られるATPで十分だが、突発的な事件が起きたときにはそれだけでは、エネルギーが不足する
- そんなときにグリコーゲンが使われる
- グリコーゲンの合成促進を行うホルモン
- インスリン
- 一方の分解促進には、グルカゴン、アドレナリン、成長ホルモン
- 緊急時のためのものなので、リスク分散。複数のホルモンで分解できるようにしている
VIII 糖質から見た農耕の起源
(1)穀物とは何か
➤ 穀物栽培が糖質摂取を可能にしたー274
- ヒトがどのようにして、農耕を開始するに至ったかについての考察の章
- 三大栄養素の違い
- タンパク質、脂質は動物性食物からも摂取可能
- 炭水化物は、植物性食物からのみ
- 人間は元々は肉食
- 炭水化物はほとんど取得しなかったはず
- 大量の糖質をもつ植物(稲など)が登場するのは人間が品種改良したから
- また17世紀以前の人類の圧倒的多数は砂糖とは無縁の生活をしていた
- 人類と糖質のつきあいは穀物栽培からはじまった
- そして穀物栽培の開始とともに人類の人口増加がはじまった
- 穀物が長期保存が可能で、狭い耕地で大量に栽培できたから
➤2 穀物とは?
- 一般的な穀物とは
- 人間が食料としている植物のうち、デンプンの多い種子を食用にしたもの
- 生物学的・植物学的な分類ではなく、人間の食を基準にしている
- 狭義の穀物
- 稲科の植物の種子をさす
- 広義の穀物
- 稲科の他にマメ科、タデ科も含まれる
- 穀物はなぜ種子にデンプンを含んでいるのか?
- 植物が育つための最初のエネルギー源
- 発芽して光合成がはじまるまでの。
➤3 なぜ穀物だったのか、なぜ小麦だったのか
- まずエジプトからメソポタミアにかけての肥沃な三日月地帯には野生種の小麦が広く自生していた
- 文明揺籃の地においてもっとも目立っていたので、選びやすい・選ばれやすい植物だった
- 稲科
- 一般的に、穂が熟しても脱粒しない突然変異が生じやすいという特徴→まとまった数の種実を得やすかった
- また小麦は毎年種子をつけ、毎年世代交代する
- 脱粒しにくい突然変異をみつけて容易に固定化できる
- さらに、自家受粉するので、自分で品種改良しやすい
- 稲科を食物にするのは、昆虫を除けばネズミと小鳥くらい
- 灌漑農法で育てた小麦の圧倒的な生産性
- 天水栽培とは比較にならない
(2)定住生活という大きなハードル
➤1 定住してはいけない生活から、定住しないといけない生活へ
- 狩猟中心から農耕中心への変化は容易ではなかった
- 人間は基本的に定住しない動物だから
- 動物としての本能に逆らう
➤2 巣をもつ動物、もたない動物
- 定住する動物
- 子育てをする動物、巣をもつ
- 巣の中では排泄しない(巣をもたないなら、常に移動するのでどこでしてもよい)
➤3 オムツをする赤ん坊
- 人間にとっての定住は当たり前ではなかった。他の霊長類と同様にヒト属の基本は遊動生活
- 人間の赤ん坊をみれば顕著
- 排泄物は垂れ流し
- だからオムツが必要
- オシッコは我慢しなければいけない、は後天的に獲得する習慣
➤4 定住だけでも大変なのに
- 定住かつ共同の生活になる
- 定住をしはじめたことで、それまでしていなかった赤の他人との共同生活をはじめるようになった
- 他人の家のトイレの事情もくむ必要
- 他人と付き合うための技術がもとめれるようになった
- ゴミについてもどこでも捨ててよくはなくなった
- もめ事が起きたときの基本ルールもきめておかなければならなくなった
- ルールなしからルールありへ
- 定住生活では、嫌なことがあっても逃げればすむということはなくなってしまった
➤5 定住が先、農耕はあと
- 順序としては
- 狩猟採集+遊動生活
- 狩猟採集+定住生活
- 農耕生活
- 人類が乗り越えるべきは、農耕を始めることではなく、定住に慣れることだった
- 定住なしにいきなり農耕ははじめられない
- では、なぜ人類は七面倒臭い定住生活に踏み切ったのか?
(3)肉食・雑食から穀物中心の食へ
➤1 初期人類は何を食べていたか
- 肉食ないし、肉食をメインとした雑食だったと考えられる
- 小型哺乳類、爬虫類、さまざまな昆虫、そして貝類
- 木の実や果実
- 水路沿いに生息範囲をひろげていった
- 防寒衣服の獲得→氷河期をのりこえた
➤2 ピスタチオとドングリの森
- 最終氷河期のあと
- 広葉樹がひろがる森に生息地を移した
- 地中海東岸、ピスタチオの原生地
- ドングリ、そのままでは食べれない→石臼でひいて粉にする技術の獲得
- 一方で作業が大変なため、定住を強いられるように
- ドングリはそのほとんどが炭水化物
- やぎなどを非常用の食糧として飼い始める→やぎ、ひつじの家畜化のはじまり
➤3 ドングリの森からコムギの平原へ
- ドングリに依存した定住生活→2000年続いた
- それが平地にむかった
- 明確な動機はわかっていない
- ドングリの収穫量が安定的ではなかったからではないか
- また、収穫に種を撒いてから何年もかかる
- そこにメソポタミアの無人の平原にコムギを見つけた
- 最初は天水栽培
- 食用にするのも容易ではなかったが、石臼の技術が役立ったのではないか
- このころから今まで以下のループが続いている
- 安定した食糧をみつける
- 人口増加
- 食糧不足
- 新しい食糧みつける
- 人口増加
- …
➤4 灌漑農業の始まり
➤5 灌漑農業と文明
- 穀物はその生産性の高さから、狭い耕地でも多くの人口を支えることを可能にした
- 結果として集落の規模が大きくなった
- 灌漑に適した土地を広く所有する者は、多くの穀物の種子を所有することができるように→原始の貧富の差
- 社会の階層化
- コムギの栽培があったから、コメを栽培するようになれた
- コムギと違い、コメはもともとその他大勢な草だった
- コムギに似たような草をみつけようというモチベーションでみつけたのではないか
(4)穀物栽培への強烈なインセンティブ
➤1 穀物栽培開始は必然なのか、偶然なのかー309
- コムギの灌漑農耕がはじまったからこそ、コメやトウモロコシの栽培もはじまったし、穀物の生産性があがったからこそ、私たちは一年を通じて一日三食、デンプン主体の食事が食べられる
- また、穀物栽培は人口増加をもたらした
- 人類の分布地域を拡大させた
- 人類が穀物栽培を始めたのは必然だったのか、偶然だったのか?
- 偶然の要素が強いのではないか?(著者)
- 採集はともかく栽培しよう、は自然と発生しない発想だと思う
➤2 最初の1人がいなければ、何事も始まらない
- コムギ原種をみて食用だと認識するはずがない
- それでも最初にコムギの栽培に挑戦した人がいたからこそ農耕ははじまった
- 何かインセンティブがあったはずだ
➤3 「甘み」は人間を虜にした
- 最初の栽培者はコムギの甘みに驚き、それをもっと味わいたくて栽培をはじめたのではないか
- 栽培するインセンティブ、モチベーションにつなげたのは、「甘み」ではないか
- それ以前に食べていたドングリには同じタンパク質でもそのままでは甘くないし、茹でたり焼いたりしないとたべられない
- コムギの麦芽は手を加えなくても甘い
(5)穀物に支配された人間たち
➤1 そしてコムギ栽培が始まった
- コムギの甘さの虜になる「糖質依存症患者」が増えれば増えるほど、人為的にコムギを増やすことのメリットが増大した
- 穀物の神格化ー317
➤2 穀物栽培は、人間に福と健康をもたらしたのか
- 穀物栽培
- 安定した収穫をもたらした
- 保存性の高さ
- しかし、穀物は「空腹を満たすもの」としては優れているが、「食料」として優れているわけではなかった
- 体が必要とするタンパク質と脂質に乏しかったから
- 実際、穀物栽培が始まったとき、人間は「栄養不足」に見舞われている
- 科学朝日41巻12号「骨で見分ける古代人の生活ぶり」
- 狩猟採集民は農耕民より長命であり、しかも穀物栽培の開始と同時に幼児死亡率が上昇していると言っている
- 炭水化物に栄養がかたよったことが原因(?)
- また、農耕は人間に長時間労働を課した
- 連作障害
- 食べるために働き、働くために食べる時代のはじまりが、農耕のはじまり。これが狩猟採集生活との最大の違い
- 穀物の灌漑農法が始まって以来、人間の生活リズムは穀物栽培に合わせたものになった。
- リズムを決めるのは人間ではなく穀物
- 穀物を育てて収穫することが生活の目的になってしまった
- 狩猟中心ならそれは逆になる(それがいいという話でもないと思うが)
➤3 大脳の能力は、穀物により開花した
- 穀物栽培のために、定住した土地から人間は逃げられなくなり、狩猟採集時代には見舞われたことのない問題に次々と直面することになった
- しかし、人類の大脳はその押し寄せる難題を次々と解決していった
- 言語
- 集団内の意志疎通のテクニック
- 社会を維持するためのルールの整備→憲法、法律
- 数字、数値化
- 尋常ならざる能力をもってしまった人間の大脳は、一万二千年前の穀物農業がもたらした神社ならざる人口増加と出会うことで、あらゆる潜在能力を開花させることになった
- 穀物との出会いが大脳の持てる能力の開花につながった
➤4 神々の黄昏ー穀物は偽りの神だった
- 穀物という神は確かに一万年前の人類を餓えから救った、そういう意味では神だった
- しかし、それは現代社会に
- 肥満
- 糖尿病
- 睡眠障害
- 抑うつ
- アルツハイマー
- 歯周病
- アトピー性皮膚炎などをもたらした
- 現代人が悩む多くのものは、大量の穀物と砂糖が原因
- 人類が神だといって招き入れたのは、実は悪魔だった
- 人類の文明の発展を下支えしてきてくれた穀物に感謝はしたい
- しかし、穀物は神ではなく単なる食物の一つに過ぎない→しかも人間を不健康にする
- 従来型の灌漑農法と穀物生産はもうほとんど限界まできている
- 私たちはそろそろ、穀物という老俳優が神という配役名を捨てて、美味だが摂取しなくていい食材のひとつという配役名にもどり、舞台から静かに消えていくのを、感謝をしながら拍手で見送るべき時期にきている
- 神は死んだのではなく、最初から神ではなかったのだ
- 穀物とともに人類が黄昏を迎えるか否かの選択肢は一つしかない
- それを選ぶのは私たちの大脳であり、それこそが大脳の本来の仕事
あとがき
- 本書
- 仮説を大胆に展開している
- つまり将来間違いだと解明される可能性も、正しいと証明される可能性もある
- しかし、科学者として、仮説は公開すべきという見地にたって公開し続ける(著者)
- 参考図書ー335
5/16 12:16 読了