軽井沢バス転落事故から1年ということもあったり新年度になったこともあってなのか、交通事故に関する統計を用いたという記事を散見する。今日はその中から記事を2つとりあげてわたしが気になっていることを書く。
実は警察の統計情報自体はすぐに見つかる。統計|警察庁がトップページのようで2016年(平成28年)の白書は平成28年警察白書 統計資料のようだ。
しかし、ここ数日で記事になった情報の情報源(ソース)となっている資料をわたしは確信を持ってこれだよねというものを上記のいずれからもみつけることができなかった。
警察の統計情報とやらについての言及があった一つ目の記事は下記。
この記事は軽井沢バス転落事故に関連した記事として掲載されていた記事。気になったのが冒頭の「警察庁の統計によると、交通事故でシートベルトを着用していなかった人の致死率は、着用していた人の約14倍に上る。」という記載。このソースはどこにあるんだろう。警察庁の統計については冒頭にリンクを記載した警察の統計ページからたどるとこちらにまとめられているようだが、シートベルト着用に関する情報はそのページをみるかぎり載っていない。この情報はどこからやってきたものなのだろう。
全ての座席でシートベルトを着用しましょう|警察庁のページ中に シートベルト着用に関する統計(平成27年)というものは見つけたがこれは平成27年のもので2年あまり古い。「交通事故でシートベルトを着用していなかった人の致死率は、着用していた人の約14倍に上る」に該当しそうな情報は見当たらない。
しかし、14倍という数字だけに着目すると以下のような記述をみつけることができた。
自動車乗用中死者のうち、シートベルト非着用者が車外放出(自動車乗車中の者が車内から車外へ放出された状態)になった割合は、着用者の0.8%に対して21倍の16.5%となっている。これを座席位置別にみると、運転席:14.3倍、助手席:18.6倍となっているほか、後部座席ではシートベルト着用者は車外放出されておらず、シートベルトの着用によって車外に放出される危険性が低くなっている。
引用: シートベルト着用に関する統計(平成27年)
まさかとは思うが日経の記事中で書かれている14倍というのは「(自動車乗用中死者のうち)シートベルトの着用/非着用で車外に放出された割合の比較」のことを言っているわけではないよね?もしそうだとしたら日経および他の新聞の報じている「警察庁の統計によると、交通事故でシートベルトを着用していなかった人の致死率は、着用していた人の約14倍に上る。」というのは少なくとも正確ではない。これがソースでないということを願うばかりだ。
さて、もうひとつ警察の統計という言葉が出てきた記事で気になっているのが以下の記事。
免許保有 500万人超す 地方の「足」 返納鈍く :日本経済新聞
- [社会]
75歳以上の運転免許保有者。3月からは交通違反がなくても、免許更新時の検査で認知症の疑いがあるとされた人は医師の診断が義務付けられる。
2017/01/17 07:44
こちらの記事では「75歳以上のドライバーが2015年に起こした交通死亡事故を警察庁が分析したところ、人的要因の約3割がハンドルやブレーキなどの不適切な操作だったことが分かった」。これもソースがどこにあるのかよくわからなかった。警察が分析したというのはわかった。だがその分析した結果はどこにまとめておいてあるのだろう。これまでみてきたページ内には「75歳以上のドライバーが2015年に起こした交通死亡事故」の統計らしいものをまとめたものがない。
シートベルト着用の方はそれらしいものは見つけたがそれが正しいなら新聞各紙の報道は間違っている(少なくとも正確ではない)。後者の高齢者ドライバーの事故の人的要因の方にいたってはどこからとってきた情報なのかが分からない。それぞれソースはどこにあるのだろう。
各紙そろそろいい加減情報のソースをきちんと記事中に記載するようにしてほしいのだが、書けない理由がなにかあるのだろうか。
余談。
イカれた交通ルールを紹介するぜ!!(略 - Togetterまとめ146: 大抵のことは法律にちゃんと書いてある。オレオレで解釈してレリゴーレリゴーしているヤツが多すぎるだけ。
2017/01/16 20:38
道交法について書かれたエントリがホットエントリになっていた。無知というのは恐ろしい。大体のことについては法でルールは定められている。知らないからという理由でやぶっていいといいのであれば警察はいらない。自転車も改正された道交法では車両扱いになったというのにいつまでも歩道を我が物顔で歩行者につっこんでくる人間があとをたたない。
警察にはちゃんと仕事をして欲しい。
※アイキャッチは警察官のイラスト(職業)。いらすとやさんにはいつも感謝。