「引っ越し「難民」大量発生? 」に思ったこと。
今日(2018年2月11日)はさほど多くの記事に目を通している時間がなかったので、日本経済新聞一面のトップ記事についてブコメ補足しておきたいと思う。人手不足、人材難問題はムツカシイ問題であるので、主に企業人事の関係者および経営層が必死に考えるべき問題だと個人的には思っている。イチ従業員、イチ労働者の自助努力ではなかなか解決がムツカシイ問題だ。
引っ越し「難民」大量発生? 今春、人材不足で 横並び打破し生産性向上 :日本経済新聞
- [物流]
ただでさえ新学期は繁忙期で費用が高騰する上に引っ越しそのものができないかもしれないとか恐ろしいことになっているな。/ところで写真の段ボールのイラストが闇感煽ってるのは気のせいか。
2018/02/11 09:22
物流網が危機的状況に陥る中で、今春の異動期は希望のタイミングで引っ越しできない多数の「難民」が発生する恐れが強まっている。引っ越し会社は企業に3~4月の繁忙期から転勤時期をずらすよう要請を始めた。雇用逼迫の時代、春に集中する人事異動など企業の重要イベントを分散させ、日本全体の生産性向上につなげる好機かもしれない。
引用元:https://www.nikkei.com/article/DGKKZO26797770R10C18A2MM8000/
記事によると今春の異動と移動の季節は希望のタイミングで引っ越しできない引っ越し難民が大量発生する懸念があるという。この話を「人事異動など企業の重要イベントを分散させ、日本全体の生産性向上につなげる好機かもしれない。」と繋げていくのは何だか素っ頓狂な感じがするが、筆者の言わんとするところが「引っ越し難民がキテる、ヤバい。」というよりも別のところにあるからなのだろうなと考えると納得しないこともない。
先にいくつか「引っ越し難民、キテる。ヤバい。」という話から想起する問題点について自分だったらこっちの話にまずは繋げるだろうなということを書いておくと「人材難。人手不足の解消。」という話ではないのか?と思うものだ。
事実、記事でも先に報じているのは引っ越し業者がヤマト運輸などの宅配業者に人手を奪われているということだ。
「今春は企業から依頼される引っ越しを100件以上断るかもしれない」。引っ越し中堅のアップル(東京・中央)の文字放想社長の表情は険しい。年商12億円の同社が抱えるトラック運転手は70人弱に上る。
宅配へ人材流出
ところが昨年、1割の運転手がヤマト運輸などの宅配業者に移籍。宅配が値上げと労働条件見直しに踏み切り、好待遇を求めて人材が流出した。 学生アルバイトも厳しい仕事を敬遠しがちだ。「1日1万3千円を支払うとしても学生が来ない。今春は特に距離が長い転勤の仕事は受けられない」と文字氏。運転手の引っ越し作業は1人あたり1日2件から3件に増やして生産性を高めようとしているが、焼け石に水となりそうだ。
引用元:https://www.nikkei.com/article/DGKKZO26797770R10C18A2MM8000/
この内容を読む限り、引っ越し難民が発生する懸念があるのであれば引っ越し業者自体がまずは人手を集められるよう賃金の改善、それに伴った顧客への引っ越し代金の適切な値上げをするべきという話にならないか?ということである。いきなり生産性云々の話に飛ぶのはいかにも無理がある。
ちなみに実際、従前の引っ越し繁忙期よりもさらなる引っ越し代金の値上げはあるようだ。その点も引用しておきたい。
大手も異常事態だ。「引っ越しが集中する3月後半から4月1週目は料金もかなり高くなります」。最大手のサカイ引越センターの法人営業担当者は年明け早々のあいさつ回りで顧客に異動時期の分散を依頼し始めた。需要が集中した営業所単位で要請することはあったが、全社をあげた取り組みは初めてだ。 「ドライバーの自社養成で今春は乗り切れそうだが、不足感がさらに強まる来春以降を見すえて動いている」と同社。昨年1~3月期の引っ越し料金は1件あたり11万円台半ばだったが、今春は「割引キャンペーン」をする必然性も乏しく、単価は逆に上がりそうだ。
引用元:https://www.nikkei.com/article/DGKKZO26797770R10C18A2MM8000/
ちなみにこの値上げが十分な値上げであるのか否かについてはインサイダーではないわたしにはわからない。ここまでの話の流れにはとりあえず違和感はない。
しかし、以降引用するところから話が脇にそれはじめるようだ。本記事の結論ありきで話をすすめるために都合のいい企業の言い分を拾ったようにわたしには感じられる。
アートコーポレーション(大阪市)も引っ越し時期の分散と値上げを顧客に要請し始めた。昨年に働き方改革などを理由に春の受注を2割減らし、夏には業界大手で初の定休日を設けた。寺田政登副社長は「社員の働き方改善を考えると今春は断らないといけない案件が出るだろう」という。 日本通運は営業所ごとに引っ越しの需要を見極め、顧客に日にちを後ろにずらしてもらう場合がある。ヤマトホールディングス子会社のヤマトホームコンビニエンス(東京・中央)も3月ごろから顧客に引っ越し日をずらすよう要請する可能性がある。
引用元:https://www.nikkei.com/article/DGKKZO26797770R10C18A2MM8000/
上述の引用あたりから「受注を断る。ないし顧客に日程をずらすように求める。」という話が出てくるのである。ようはキャパオーバーで対応できないからということなのだと思うのだが、それこそそれは「人材難。人手不足が解消できない。」ためであると思うので引っ越し業者は自助努力では人手不足を解消できませんと言っているに等しくはないか?と心配になってしまう。たまたま今期に関しては対応が間に合いそうもないということなのか、はたまたもう今後異動と移動の繁忙期のキャパに対応していくことは無理であるとギブアップ宣言したと解釈してよいのか、この違いはかなり大きい。
とりあえず記事としては引っ越し業者は後者のギブアップ宣言をしたという解釈をしたという前提で話が進んでいく(わたしはそう解釈した)。
企業側も動く。婚礼大手のエスクリは料金高騰を避けるため、春異動の辞令は4月1日のまま、引っ越しを3月上旬や4月中旬に柔軟に変更できるようにした。関西地盤のドラッグストアチェーンは異動を「5月にずらすといった対策も検討する」。
引用元:https://www.nikkei.com/article/DGKKZO26797770R10C18A2MM8000/
移動と異動の繁忙期をズラそうという企業側の自助努力の話が書かれている。ちなみに移動と異動の繁忙期に異動を余儀なくされる業態は主に製造業や小売・百貨店業などではないのか?と思わなくもないのだが婚礼大手やドラッグストアの対応が例示されるのはどういう都合からそうなっているのかについてはわたしにはよくわからない。
不要不急の物理的なヒトやモノの移動そのものを抑止する企業および個人の自助努力が求められているようにわたしは思う。
記事のシメも「分散休暇進まず」という何だかよくわからない方向に進んでいく。キッズウィークなどを引っ張り出してくるあたりギャグなのかはたまた皮肉なのか日本経済新聞の意図を汲みかねる。
09年末、当時の民主党政権下では、星野リゾートの星野佳路社長が「休日が集中する日本では観光業は100日の黒字で、残る265日が赤字だ」と主張。民主党は景気底上げをめざし休みをずらして10月に5連休を設ける案をまとめたが、その後の東日本大震災の発生によって構想は立ち消えた。 政府は18年度に夏休みなど学校の休みの一部を別の時期に移し、親も一緒に休暇をとるよう促す「キッズウイーク」制度を創設する。安倍晋三首相は「大人が子どもと一緒に過ごす時間を多く確保するために休み方の改革を進める」と説明。祭りにあわせた休みを設ける那覇市など11自治体で試みが始まるものの、社会全体に広がるかどうかはなお不透明だ。 就職や会社の地域間異動、入学式など重要行事が春に一極集中するニッポン。人材不足の克服と生産性革命のため、慣れ親しんできた企業や学校の歳時記を思い切って見直すことも一案ではないか。
引用元:https://www.nikkei.com/article/DGKKZO26797770R10C18A2MM8000/
ちなみにわたしもニッポンは春に移動と異動を集中させすぎであるという意見には賛同する。しかし、そこでわたしなら休暇の話には繋げようとは思わない。企業に関して言えば異動はあっても不必要な移動を抑制するようにすればよいのだ。製造業のように工場などその場所にいかなければ仕事ができないのであれば仕方ないが、サービス業などの類は在宅でのリモートワークが可能な職種が実際のところ多いであろう。
必要なのは分散休暇や異動と移動の時期の分散などではなく、わたしは不要不急の物理的なヒトやモノの移動そのものを抑止する企業および個人の自助努力ではないのか?と考えるものだ。
それが生産性の向上のことだと日本経済新聞がいうのであれば、生産性の向上大いに急務だね、と考えるものだ。
引っ越し難民そのものの話が置き去りになってしまったが、それはそれで大きな問題であるなと思うので、別途自分が引っ越しすることになったら、という前提で別途書いておいてみたいと思う。
最後に、そういえば引っ越し業界といえばブラック企業として頻繁に槍玉に挙げられる「アリさんマークの引越社」が名前すら出てこなかったところには日本経済新聞の何か意図するところがあるのか否か、それもわたしにはよくわからなかった。建国記念日のトップ記事としてこういう記事をもってくるくらいなので日本経済新聞もよほどネタがなかったのかもしれない。
憶測をしてみたところで答えはでない。というわけで本稿としては以上としておく。
(了)。