ツイート 膨大な読書量を誇る小飼弾氏による新書レーベルの分析が豊富な本著は、新たに読もうと思う新書を探す上で最高のハブ本です。
私は著者の警告する「質、量ともに十分な本を読んでいて、人からあれこれ言われても自分の軸が揺らがない地盤ができているのであれば、他人のお勧めはよい糧になる」に気をつけた上で、小飼氏のお勧めに手を伸ばていきたいと思っています。
以下に、私が本書から得た知見を6つに分類し、まとめました。
- 読書することの目的
- 各定義
- 読書の心構え
- 新書のよさ
- Reading Hack
- 新書レーベルごとのお勧め
1. 読書することの目的
頁14-16
これからの世の中で生き残りたければ新書を読め。本書で私が言いたいことは、たったこれだけのことに過ぎません。 ...snip... 機械は給料がでなくても文句を言わず、ひたすら働き続けます。 ...snip... このような世界において人間が生き残ろうとするならば、方法はただひとつ。機械にできない仕事をするしかありません。...snip...20世紀以降、、誰もが何らかの知的なアウトプットを求められるようになってきました。
頁20
本書における読書の目的は、生きていく上での強みを養うことにあります。...1冊や2冊読んだところではあまり意味はありません。...snip...本を読むことが強みになるかどうかの境目は、1,000冊です。プロの物書きは300冊の本を読んだら1冊本が書けると言いますが、これはアウトプットがすでに習慣になっている人の話。そうでない人は、その3倍くらいは読まないと、意味のあるアウトプットになりません。...snip...コンパクトな新書だからこそ、誰でも大量の本を手元に置いておけるのです。
2. 各定義
頁18 本の定義
ひとりの著者が、独断と偏見による考えを披露するのが本です。
頁19 新書の定義
判型が 103x182 ミリの新書サイズであること。もっとも厳密にこのサイズではなく、多少の違いはあっても新書とみなします。...snip...要は、片手で持ちやすいソフトカバーであることが重要なのです。
頁63 ニセ科学の定義
代表的なニセ科学としては、「血液型性格判断」「水にポジティブな言葉をかけるときれいな氷の結晶をつくる」「ゲーム脳」などの例があげられます。
3. 読書の心構え
頁17
多様な考え方を取り入れて、自分なりの「知の体系」を構築していく ...snip... そのために必要なのは、積極的に情報を取りに行く姿勢、「情報はプルしてくるもの(引っ張ってくるもの)」という意識を持つことです。
頁26
「読んでよかったと思える本は2割、ダメ本が2割、毒にも薬にもならない本が6割」...snip...ダメ本にあたるとショックですが、そうした経験は絶対に必要です。「ダメ本とはこういうことか」と肌身で感じ、ダメ本をつかみ慣れないと、たくさんの本など読めるわけがありません。
頁34 読書レベル0からの初級編
気に入った本だけを読んで、そこから何かが得られるのではなく、たくさん読んだ中から気に入った本が見つかるのです。
頁36 読書レベル0からの初級編
図書館で借りてはダメです。それは図書館で借りるのでは、財布が痛まないから。きちんと身銭をきって痛い思いをし、手元に置いておくということが重要なのです。
頁38 読書レベル0からの初級編
大事なことは、いかに心がけずに読書できるようになるかということ。意識的に用を足そうと思って用を足す人などいないのと同じことで、読書も「しよう」と思っているうちはまだ習慣になっていません。...snip...とにかく本をウザいと感じないようにする工夫が大切です。
頁44 なんとなく読みはじめてからの【中級編】
人に勧められた本を買うのは、有るr程度読書経験を積んでからにするべきです。質、量ともに十分な本を読んでいて、人からあれこれ言われても自分の軸が揺らがない地盤ができているのであれば、他人のお勧めはよい糧になります。
頁62
この本の何がダメだったのか。論理が破綻しているからか、構成が分かりづらいのか、著者の意見に共感できないのか。共感できないのならあなた自身はどう思うのか…。ダメ本を読むことによって、自分自身の考えも読めるのです。
頁64
疑うとは、コストがかかる行為でもある...snip...
頁79
読書には、脳内で著者と対話するという側面があります。ですから著者と面と向かって向かい合っているときに完全に受身になってはいけません。著者の言葉に「ははーっ」と感心しているだけでは、有意義な読書にならないのです。「それはおかしいんじゃないか」と自分なりに切り返せるようになることがはじめは大事。
4. 新書のよさ
頁22
読む際に手の中でしなるのとしならないのとでは、読みやすさが全然ちがってきます。*1
頁25
また、読者にとってのコストは本の値段だけではありません。不動産コストこそが最大のコストだと言ってよいでしょう。...snip...内容だけでなく、価格、判型、どこに保管され、どのように読まれ、どう処分するか、というところまで徹底的に読者のニーズに適う新書は、ベストな本の形なのです。
頁29
...snip... 片手でもってしならせるだけで、視線の移動もスムーズに行えます。私は時々両手に新書を
持って、「二丁拳銃読み」をするほどです。
頁66
テレビの信用度は低い
...snip...最も大きな理由は、時間制限...snip...放送時間に間に合わせてバッサバッサと編集してしまい、本当に伝えるべき内容が取り除かれてしまう。
頁86
「衝突断面積」を増やす
...snip...幸もあれば不運もありますが、自分のアンテナ、つまり関心を持つ領域を広げておくことで、同じ時間内でより多くの幸運や出会いに当たる確率が高まります。...snip...まったく別の分野の本を同時に読むことで、頭の中のリンクがより複雑に絡まり合い、脳内に新しい回路が作られることになります。本の内容は「何となくこんな感じ」という印象だけ覚えておくと述べたのも、衝突断面積を増やすためです。
5. Reading Hack
頁31
「抱き合わせ」で買うと栄養が偏らない
...snip...気に入った作家はついつい続けて買ってしまいます。あるいは、ネットで本を買う際にお勧めとして表示される本は、多くが似た傾向になります。こういう本の買い方をしていると、どうしても栄養が偏ってしまいます。...教養を高めるためには、やはり様々な分野の書籍を読むべきなのです。...snip...新書であれば、装丁が同じ本を適当に手に取るだけで、多様な知識、考え方に出会えるわけです。
頁42-43 なんとなく読みはじめてからの【中級編】
ハードカバーは捨てるつもりで買う
...snip...ハードカバーが文庫化されるまで待つということですが、これには本代を節約できること以外にも意味があります。ソフトカバーで普及版がでるということは、それだけ多くの人に内容を認められたということですから、読むに値する内容である確率が高まります。普及版が出されないのは、十分な数の人が読まないと出版社が判断しているのです。
頁45-47 なんとなく読みはじめてからの【中級編】
「脳内マップ」を埋めていくように本を買う
...snip...ふた通りのやり方があります。ひとつは、自分が興味を持っている分野に隣接する内容を選んで、もっと深めていくやり方。もうひとつは、今まで読んでこなかった分野をピックアップして飛び地をつくり、それをつなげていくやり方。
頁49 なんとなく読みはじめてからの【中級編】
タイトルや目次から内容を想像する
あなたは、その本にどんなことが書かれてあってほしいですか。実際に本を読む前に想像力を働かせていると、読み進めているうちに自分とは違った著者の考えに強い印象を受けるようになるのです。
頁52 なんとなく読みはじめてからの【中級編】
何か知識を得たい分野があったら、まずその分野の土台となる新書を探してください。1冊主役となる本を決めたら、同じレーベル、あるいは別のレーベルから、似たようなトピックを扱っている新書を探してきます。主役の新書1冊プラス、関連する新書9冊がベストな配分ですね。
頁59-61
新書では、何の飾り気もないタイトルほどつけるのが難しい ...snip... 書店で立ち読みをして、「名は体を表しているか」を確認してから買うようにしましょう。
頁82
複数の本を同時に読むことの最大の理由は、「本に読まれない」ためです。1冊1冊をゆっくり時間をかけて読みすぎると、自分の価値観がその著者の価値観にすり替わってしまうことがあります。
6. 新書レーベルごとのお勧め
マイコミ新書
目次
序章 生き残りたければ、新書を読め
1 なぜ今、本を読まなければならないのか
生き残るための読書/情報は「プル」してこないと意味がない/本は、偏っているから価値がある/勝ち組になるための最低条件
2 新書以外は買わなくていい
紙の書籍の理想型 /意味ある読書に必要な冊数/ハードカバーは滅びてしまえ/1000円以上出す価値のある本は、そんなにない/コンパクトな判型だから習慣化できる/どんどんダメ本に当たろう/新書こそ中身が問われる/ノンフィクションは新書で十分/「抱き合わせ」で買うと栄養が偏らない
PartI 新書の買い方、読み方
1 読書レベル0からの【初級編】
読む本を「選ばない」/新書習慣は「大人買い」から/最初の10冊を意地でも読み通す/子どもに本を読ませたいなら、まず親が読め
2 なんとなく読めはじめてからの【中級編】
ハードカバーで気になる本を新書で探す/ハードカバーは捨てるつもりで買う/信者になるな、読者になろう /「脳内マップ」を埋めていくように本を買う タイトルや目次から内容を想像する/気軽に読書記録をつける/内容はどんどん引用して「使う」/「にわか専門家」になってみる
PartII 新書を10倍生かす方法
1 タイトルから本の出来を測る
短いほどにハズレ率は低くなる
2 ダメ本も味わう
激しくハズれた本に当たるのは、よい経験
3 疑うことを楽しむ
ニセ科学本を読み解く/疑うにはコストがかかる/テレビの信用度は低い/経済学の常識を疑う/専門家はすべてにおいての専門家ではない/歴史と宗教の楽しみは18禁!?
4 洗脳されずに自己啓発本を読む
ツッコミを入れながら読むべし/物事の実現性はセルフイメージにかかっている/人は成功ではなく失敗に学ぶ
5 話題の本とは距離をおく
「話題の本」を読む必要はない/ビッグネームは避けろ
6 ジュニア向け新書はこんなに楽しい
大人に教えるより、子どもに教える方が難しい
7 複数の新書を同時に読む
本に「読まれない」読み方をする/ 忘れたら読み返せばいい/速読にこだわらない/目次だけ読むのも読書
8 本で得た知識を活用する
知識は定着させなくてもいい/「衝突断面積」を増やす
9「超」整理法で本を整理する
アクセスした順に本を並べる
10 ウェブを使って本を読む
どんどん忘れることが大切/ツイッターをメモとして使う/「Tsudaる」読書法/書くように本を読む/出版社は読書体験を広げる取り組みをすべし
PartIII 新書レーベルめった斬り!
1 貫禄のある老舗レーベル
新書スタイルはここから生まれた「岩波新書」
じっくりと時間をかけて仕上げる「中公新書」
*1:ハードカバーとの対比