3 冊目は、ハーバード白熱日本史教室 (新潮新書)です。
まえがき
ハーバード大学でなぜ日本史が人気になったか?
1.氏の歴史へのアプローチが従来のスタイルとは全く異なっていたから
2. コンピューターを使って実際に日本史を体験させるような斬新な教え方が学生の心をつかんだの
*
どうして氏の日本史が新しいのか?
どうして日本史が新しくなくてはならないのか?
→氏から読者へのメッセージにたどりつくまでその2点を気にしてよんでほしい
第一章 ハーバードの先生になるまで
2004、ケンブリッジの暑い夏が始まり
▶ 大学の専攻は理系だった
カナダの州立大学、バンクーバー
数学と生命学
カナダの大学院で日本史専攻、なぜ?
卒業後の進路を考えていた秋、ある教授のアシスタントのアルバイトをしたのがきっかけ
→日本史の専門家
豊臣秀吉のことを綴った日記
昔の記録とその記録に関する日本人の議論
→漠然と大きな間違いがあるような気がしてならなかった
→相談、教授
→大学院で日本史を専攻してみないか?
▶ ハーバード大学に行こう!
進学というより突拍子もない転学
もうひとつとんでもないことをおもいついた
→ハーバード大学のサマースクールに行こう!
▶ 日本史に女性が全く登場しない!
ハーバード大学で唯一受講
ザ・サムライ
始まり、縄文時代、終わりが現代
ハロルド・ボライソ先生の数多くのサムライ・コレクション
もっぱらサムライ文化を賞賛する内容
→次第に嫌いに
→日本はサムライがすべてなのか?強さの秘密、それが日本史なのか?やっぱり日本史がおかしい
*
実際の史料にはサムライのそばにたくさんの女性が登場した
クラスメートとの話
Lady Samuraiはいたはずだと
→これがすべてのはじまり
▶ プリンストン大学の博士課程へ
アメリカの大学で博士課程に進むにあたり必要になる試験をたくさん受けた
GRE、英語、それにエッセイ★
ハーバード大学は落ちてしまった
▶ 東京、そしてニューヨーク
大学院の博士課程
どの学部でもジェネラルズやコンプという筆記と口述の試験が待ち受けている
2年目の終わり、3年目の半ば
→通ると、大学院生は博士号取得候補生になる
ー26-27詳細
*
プリンストン大学、オナーコードというシステム
試験官なしの試験、そのかわり、不正を行わないことを誓う
▶ 大雪のシカゴで面接
ハーバード大学のカレッジ・フェロー、大学院をでたての新米が1-2年教えられるポジションを見つけ、応募
→採用
ボライソ先生は退官していた
▶ 再びケンブリッジへ
ザ・サムライをLady Samurai に置き換えて新しいカリキュラムを作った
▶ 弱小の東アジア学部
ハーバード大学の学部生
必須の教養のクラスと専門科目、少しの選択科目の枠がある
教養のクラスをとる義務がある
しかし、東アジア学を専攻する学生は少ない
副専攻の学生も含めてやっと二桁
*
テニュアの教授、教養科目も教えられる
しかし、教養ではない東アジア学部専門科目の大半、家庭教師レベルにとどまっているらしかった
*
ハーバード大学には毎学期の第一週、ショッピング期間という学生が自由にクラスを見て回っていい期間がある
→学生は何でも自由に選べる
→他の学部の人気コースに学生が流れる
▶ 手応えを感じた1年目
最初の秋学期、自前の日本史コース2つ
Lady samurai 、東アジア学部の大学院生用のセミナー
*
授業にはサムライの映像は入れなかった
読み物中心
毎回授業のはじめに学生が読んできた内容についてプレゼンする仕組みに
*
大学院生用
毎回真剣な議論
毎週水曜に集まるまでに全員が一冊を読み、その本のレビューを書いてくる
*
Kyoto というお手製のクラスを教えた
中世の京都のありとあらゆるものを盛りだくさんに詰め込んだカリキュラム
↓
ティーチング・アワード
▶ 履修者が一挙に増えた2年目
2年目、教える順番を変えることにした
秋、Kyoto
春、 Lady samurai
*
最初のクラス
学生の目線から物事を始めること
彼らの知っている範囲の知識をどう広げられるか
その説明
▶ 「脱線話」に注がれた真剣な視線
ちょっと休憩、私の話をするね
こんな風に、出来事と出来事がつながりあって新しいアイデアが生まれるんだよ、と付け加えた
↓
思いがけないところに始まりがあって、歴史はそんなふうに変わっていくんだ★
▶ 大学で歴史を学ぶ意味
教えたいのは、出来事のつながりだけではない
まず現実の問題に近い状況を想定すること
*
このクラスのモットー
まず個性、さらに付け加えるとすれば、感性。
らしさに拘ること
次なる課題は、大人になること
それは、まわりの人を愛することだ
▶ 驚異の履修者100人超え
▶ 日本史の語り方を変えたい
歴史がみんなを変える理由はふたつ
1. 時に隠された意味を見つけること。
→時は経てば経つほど遠く、古くなるわけではない。時には意味がある。意味を見つけられたら過去や意味づけられた過去は、どんなに昔のことでも、忘れかけていた一瞬でも、現在と直接の関係を持つようになる
→みんなここで一緒に新しい意味を見つけているんだよ、時の秘密を探っているんだよ
2. 時の重力を感じること
毎日どこでどんなことをしていても、その一秒一秒に同じ重力がかかっていることを忘れてほしくない
第二章 ハーバード大学の日本史講義 I LADY SAMURAI
▶ サムライというノスタルジア
海外におけるサムライ
日本の歴史の代名詞として群を抜いた魅力をもち、人気ナンバーワンのテーマとして君臨している
失われたものだからこその魅力
魅力を一言でいえば→歴史に刻まれてきた男性の強さ
*
日本の英雄にして日本の中核に位置付けられ続けてきたわけですから、サムライなしには日本史は語れないという状況が自然と発生
日本史の授業、サムライがいることが前提
*
サムライとともに生きた女性のことがそっちのけなのはおかしい
▶ 時代遅れの日本史
世界史の研究水準に照らし合わせても、日本史がサムライでがちがちなのは時代遅れなのは自明
日本史が他の国の歴史と違って難しいのは、女性に関する新しい研究を大きな構図にどのようにはめていくか
サムライだらけだった日本史に女性を組み入れる作業が難航したというより、その作業自体が不可能だと考えられてきた
→せっかくの女性研究も、「女性らしさの研究」として完結してしまった
サムライが中心で女性はその影という状況こそが見直されるべき
→半分史
▶ 目的は大きな物語を描くこと
Lady samurai
武士道を批判するのではなく、まずは武士道の陰に隠れてきた武士階級の女性の生き方にスポットライトを当てる
→彼女たちの生き方と死の意味
→どのようにサムライとLady samuraiが日本の歴史をつくってきたか
↓
豊臣秀吉の妻の北の政所ねいがメイン
*
脚色なく歴史事実だけをもとに現れてくる「戦わずに強く生きた女性」に「Lady Samurai 」という称号を与えることにした
*
サムライとLady Samurai の両サイドから、日本の武士道の再構築を試みる
女性を女性としてではなく、サムライ文化の一部として捉えることが日本の歴史研究にふさわしい歴史の語り方だと思う
*
Lady samurai
男性と女性の両方のアイデンティティを組み入れ、21世紀の時代に見合った日本史をつくる試み
▶ 武士道は「想像された日本らしさの象徴」
武士道の歴史を辿る
*
サムライや武士道はいつから存在したのか
*
武士道は新渡戸稲造の武士道で1900年以降、世界に広まった
しかし、重要なのは、いわばバイブルのような武士道があったわけではないということ
武士道という言葉が長く使われていたわけではなく、サムライが武士道を貫くために生きていたわけではないということ
*
武士道は失われた日本の社会基盤であり、日本の人々が今でも従っている道徳である
正義の概念、勇気、人徳
新渡戸稲造の武士道は、時代が新渡戸に創造させた新しいコンセプト
→史実とは異なる強すぎる武士道は一人歩きを始める
▶ 海外で教えられる日本史の時代区分
北米で教えられる日本史の構成 ー★66
日本の歴史の最初の区切りは、サムライがいなかった時代とサムライがいた時代で分けられる
サムライ中心の大きな物語を一般化
▶ ユア・サーマン、ルーシー・リュー、小雪
Lady samurai のイメージ
3つのハリウッド映画
キル・ビル、グリーン・ディスティニー、ラストサムライ
武術をあやつることができる強い女性だったり、良妻賢母
↓授業では
どちらでもありませんと切り出す
▶ サムライと同様に貴族出身
「戦わずに、かつ陰で大いに活躍する女性」
その一番古い時代
壇ノ浦、平安時代の終わり
Lady Murasaki
→紫式部のこと、Ladyは、京都の宮廷の女性にあてられる
Lady の語源は、もともと貴族文化
▶ 平家物語の女性たち
最初期のLady samurai に共通する特徴とは何か?
1. 殺されない性として扱われてきたこと★
初期のサムライたちの合戦には、女房たちもちゃんと同行している
サムライとともに戦にきた女性は「女性である」という理由で殺される対象になっていない
自害するにしても切腹をしたり、戦って討ち死にしたりしない
→那須与一のエピソード
:巴御前とかどうなるの、と。→後述があった
→ただし、この時代のLady samurai は軍記もの、フィクションで語られている厳密な意味で歴史上の人物の行動であったか確認できない
特徴のある記録が少ない
↓ハーバード大学の授業
★室町時代の女性の生活ぶりや、中世の宗教がどのように女性の性を扱ってきたかについて勉強したのち、戦国時代のLady samuraiの話題に移る
▶ 「女らしさ」よりも「サムライらしさ」
戦国時代の女性、1467応仁の乱から江戸幕府を開く1603まで
彼女たちの存在意義は本当に男性に依存したものだったのか
→Lady samurai の存在を確固たるものにする新しい切り口
想像を超える範囲の女性の影響力
→「女性らしさ」よりも「サムライらしさ」を強く反映したもの
▶ 北政所ねい
ねいの一生は、さまざまな所に残されている
戦の時も、妻との連絡が途絶えるわけではない
城下町の増税
ねいの意見を尊重して、前言撤回を繰り返す
↓
サムライの秀吉が「絶対的な支配者」であるという前提に疑問
女性も政治に介入せざるを得なかったという意見
ペア・ルーラー
といっても、双方が助け合って一対で「サムライらしさ」をつくりあげていった
▶ 個人としてのネットワーク
大阪城での統治
北政所という貴族にそもそも与えられる称号をうける
天下取りの秀吉の本妻
*
男性のサムライと同じ書式で手紙を書き、他の大名と対等に会話をし、ときには彼らを諫める
83
▶ 秀吉の死後も上流階級に留まる
伊達政宗にあてた、彼の妻に対する書状
その彼女の動向や暮らしぶりを、ねいの侍女はねいの名前で政宗に逐次報告
*
1590年代、太閤検地
ねいは大名にも匹敵する広い土地を北の政所の名義で管理し、そこから入る収入で自活
→その地位と権力で秀吉の死後もサムライの上流階級に居座り続ける
*
秀吉のペアとして自分の社会的立場を象徴的に残したまま、この世を去る
↓
ねいの一生、女性が大きな役割を果たしていたことを確認する重要な史実
↓
特別だったのでは?
→他の戦国武将の女性、本妻に関する史料にあたる
▶ 側室たちの悲しい運命
豊臣秀次の側室の斬首の話
豊臣秀吉の本妻ねいとは正反対の運命を辿った側室茶々
*
本妻、側室
ひがみあう関係かというとそんなことはない
かなり本妻と側室にはステータスの差
本妻→威厳のある立場で輝いていく
側室→究極の場面での存在意義を問われる
*
究極の場面の例
秀次の切腹
→側室は連座、本妻は連座を免れる
*
サムライらしい死と言えるのはなぜか?
→ここで初めて上流階級の女性が連座の際に斬首されたから
→それまでは日本の女性は血を流す死に方をさせられることはありませんでした
*
側室として女性が死を受け入れる責任感
最後に詠む辞世の句
→側室の武士道
▶ Lady Samurai と武士道の再創造
戦国時代末期も、武士の上流階級の女性は、直接戦うことはなかった
Lady Samurai のクラスで追っていたのは武士の上流階級で生きた女性のその地位の確立の仕方、生き方、そして最後のとげ方
*
Lady Samurai のクラスは、新しい歴史の見方や捉え方を提案し、男性だけで成り立ってきた日本史に、女性の生き方と命を組み込む、21世紀感覚の日本史のクラス
第三章 先生の通知表
ハーバード大学、毎学期、講義が終わると学生が先生を評価し、感想を書く
5段階評価→結果はWebで公開される
キューと呼ばれる先生の通知表
▶ キューと呼ばれる通知表
ーその結果 ー98
役割
ショッピング期間に選ぶ基準になる
▶ 学生のコメントは役に立つ
このクラスの強み、弱み、それに先生に言いたいことが自由に記入されている
賛否いずれも何も書かれないよりはまし。
▶ 履修者18人に助手1人
ハーバード大学の履修者の数はWebで一般公開されている★
:リンクとかあればより親切なのに →あった 102
*
受講生の数が多くなると、学部生18人につき、1人のティーチング・アシスタントがつく
→セクショニング
大きなクラスでも隅々まで目が届くように
▶ 「楽勝科目」は人気がなくなる
ショッピング期間と前年のキュー次第で、毎年、学生の集まり方が変わる
→最初にクラスをつくったときには予想もつかなかった状況がたくさん起こる
*
シラバス
コースの概要、課題、読み物のリストを含めた授業プラン
▶ キュー攻略の秘密
ティーチングアワードをとったとき、
「キューで高得点をとる秘密は?」
と聞かれたことがあった
↓
3つの秘密を捻り出した
大前提は、「準備がすべて」★
歴史のクラスで学ぶことが学校の枠を超えて社会生活に直結するように、できるだけ社会力がつくように課題を出すことを心がけてシラバスをつくっている
学生がどれだけ優れているか、テストだけでははかれないのは、大学も社会にでてからも変わらない
*
社会で輝ける人
→他人と力を合わせられる人、自分のオリジナリティを信じられる人
↓育てられるようにシラバスつくり
グループワーク
プレゼン
映画づくり
が課題
*
どのような課題をどのタイミングで組み込むか、そして、どれほど準備しておけるか、前の学期の意気込み
▶ 聴覚を意識的に使わせる
最後に核心、「自分の趣味をティーチングに生かすように工夫する」こと
仕事のようにプレッシャーからではなく、好きな気持ちにまかせて楽しむのが趣味なので、仕事に生かせるとなったら好都合
↓趣味にかける時間が多い、その3つ
1. 「ピアノ」 ★
→サウンド・エクスペリエント
講義の途中にバックグランド音楽を流してみたり
*
ハーバード大学の授業
60min x 3のスタイルと
週に、90minの授業を2回に分けるスタイルの講義
→氏は後者
*
飽きたら途中で出て行ってしまったりする
→あきる前に色々と音を出す
*
音に対して圧巻なのは、ラップづくり
習った内容を数行にまとめてフリースタイルのラップのコンテストをする
▶ パソコンを閉じてお絵かきを
趣味の2. 「お絵描き」 ★
*
授業はいまどき、みんなラップトップ
お絵描きを指示すると学生はラップトップを閉じざるを得ない
*
絵に描くことでイメージが膨らむ
思ったとおりに描けない場合、どこが変なのか突き止めたくなる
→ハプニング性
描いた絵は見せ合う
▶ 歴史の授業で盆踊り!
3つ目の秘密、「スケート」★
↓
「体全体でアイデアを表現する」ということに生かしている
*
大学生は座って授業を受けている
数名を指定して、授業を手伝ってもらったりする
*
特定の個人が目立たない仕組み
クイズ→ステージの真ん中を区切って
ダンス→盆踊り、YouTube観ながら見様見真似
▶ 履修する学生たちの肖像
どんな学生がいるのか ー120
専攻さまざま
人種さまざま
運動部に属している学生が大多数をしめる
▶ 花形はフットボールとバスケット
フットボール、秋学期は毎週土曜日に試合
勝ち負けに学内が騒然
氏を学生は試合に誘ってくれたりする
学生に刺激を受ける、真剣なプレーなど。
▶ 授業以外での学生と交流
オフィスアワー
→教員が一週間のうち決まった曜日の決まった時間に必ずオフィスに待機する時間
→1:1で教師と生徒が対話できる
ハウスディナー
ハウスとは?
→ハーバード大学、全寮制。2年目から「ハウス」という寮のメンバーになる、12のハウスがある
→学生はそれぞれのハウスに誇り、競争意識
↓
そのハウスで学期にいちど、1学生につき、1先生を呼んでディナーパーティー
学生が先生にタダでご飯をおごることができる素晴らしい企画
先生にとっては名誉
*
まさにハリー・ポッターの世界観
129
▶ 5つのハンデ
女性であること
若い
アジア人種であること
↑ここまではどうにもならない
→しかし、日本生まれで純日本人の見た目の先生が日本史を教えることは逆に生徒には新鮮
英語が母国語ではない
→努力でカバー
テニュア(終身在職権)つきの教授ではない
→テニュアつきだからスゴいとは限らない
▶ 「ベスト・ドレッサー」賞と「思い出に残る教授」賞
ハーバード大学の学生新聞
クリムゾン→学生による取材、執筆、編集
ガゼット→学校側が主に主催
*
ベストドレッサー賞のようなものと
思い出に残る教授
*
No proof needed, your possibility are infinite.
第四章 ハーバード大学の日本史講義 2 KYOTO
「場所を主体とした歴史」は、大学の歴史の授業としては珍しい試み
▶ アクティブ・ラーニング
学生中心
学生が自分たちで実際に試しながら学ぶ
「座っているだけの聴講スタイルを超える体験型の授業をする教授法」
→代表的な成功例:マイケル・サンデル
→道筋を丁寧にたどっていき、その過程を大切にする教え方
*
氏のアクティブラーニング
サンデル教授との違い
→「ものをつくる」ところ
▶ 地図を書こう!
最初の課題、フィールド・トリップ
クラス全員で教室を飛び出し、ピクニックにいく
ハーバード・マップ・コレクション
そこにいって地図を見ることと、そのレプリカの地図を描いて提出すること
*
「洛中洛外図」
▶ 嵐山のモンキーパークが人気スポット
手元にある一番大きな紙に、自分の思うとおりに京都の地図を描いてみる
↓
地図、その場所が自分とどう関係するのかをあらわす媒体
→描くと、その場所への好奇心が地図を歪めていく
▶ 時代を100年に絞る
このクラスでは1542から1642に絞る
→時間がいくらあっても足りないから
この百年で京都が劇的に変化し、面白い
*
歴史の詳細 ー146
種子島に火縄銃
ヨーロッパ人との交流
じわじわとキリスト教の布教が進んだ九州の様子と古都の様相をとどめる京都を2つの別世界のように対比させながら教える
▶ 意味合いを変えていく京都
京都、街自身の変化にとどまらず、時勢の変化の影響を受けて、刻々とその意味合いを変えていく
*
朝鮮出兵
*
1542-1642
全国統一に向けた重要な交渉場所を提供し、覇者の趣向や動向により大きな変革を強いられ、遷都後は古都として新しい地位を確立するというめまぐるしい転機をみた
▶ グループでプレゼン
大学教育
論文を書くこと
プレゼン
試験
→勉強の成果を測る手段であることは間違いない
↓Kyotoのクラスが他と違うのは
単独ではなく他の学生とプレゼンをさせるところ
↓
「10min の制限がある以外は好きにやっていい」
ひとつのリクエスト、「1人では無理な方法、つまりグループでしかできない方法をとるように」
↓
楽しく学ぶ味を知る★
▶ ヨーロッパ人が見た京都
グループプレゼンの課題
16世紀に日本にきた宣教師がヨーロッパに送ってきた書簡
→その英語訳を読んで、その内容をプレゼン
1. 京都の街について
2. 三人の覇者について
3. 天皇や貴族の文化について
4. 食べ物、飲み物、日常のマナーについて
5. 仏教や神道などの宗教について
*
この書物を読むにあたっては、「一次資料から新しく見えてくるもの」に注目するように指示する
ヨーロッパからの訪問者は、京都の様子をさまざまな角度から眺めて手紙を書いています
▶ 中間試験の課題は「タイムトラベル」
100年の中にある一定期間を選んで「タイムトラベル」した経験を書きなさい
→5つのグループに入っていることが条件
→天皇と貴族、ヨーロッパ人、三人の覇者、京都の庶民、宗教関係者
三人の覇者にあいたい場合は、トリッキー ー157
*
中間試験の課題を出す前に「タイムトラベルは可能だよ」と説得する
歴史の醍醐味は「タイムトラベル」
*
専門家以外が歴史を楽しむならば、頭の中で昔の時代や出来事を追体験するのが最良の方法
▶ ポッドキャストで番組制作
次の課題は外交
秀吉の朝鮮出兵の際に交換された書簡
中国や朝鮮からやってきた使者の記録
*
Podcastの番組づくりが次の課題
効果音、聴覚が大事
▶ ラジオの次は映画づくり
将軍が江戸に去って古都としての役割を演じ始める17世紀の京都
ここでもメインは外交
参勤交代の話 ー162
*
PC で映画づくり
IMovie などを使って。
聴覚と視覚を活用。
167
▶ 映画+タイムトラベルで4D「KYOTO」
映画とタイムトラベルのアイデアを出して、仮想現実の世界に自分が入り込む4D「KYOTO」
ハーバード大学のメディアスタジオを使う
緑のスクリーンの合成映像用スタジオを使う
演技した映像が出来上がったら、それを各自のPCに取り込む
この課題でも学生たちには「自由なスタイルで映画をつくってよい」と声をかける
*
面白かったムービーの紹介 ー169
▶ 不思議なつながり
歴史は現代の学生の生活を楽しくさせる道具にもなりうる
→アクティブラーニングがなせる技
学生は京都と、一生、不思議なつながりを持ち続けることができる
*
インターネットで日本の様子をリアルタイムでみたり、ちょっとした海外旅行先として日本を選ぶことは容易になった
そんな時代に、自分で読めばわかる教科書をわざわざ読み上げて外国の歴史を教えることは、本当に時代遅れだと思う★
*
最後の授業は着物で
▶ 日本史の外交官的役割
「KYOTO」の授業は実際の外交にも貢献しうる歴史クラスのモデルになりうるものだと考えている
:少し自慢や誇張気味になってきている
*
歴史はそもそも、日本の歴史教科書問題が典型的なように、外交問題に発展しうる政治的にセンシティブなテーマを含んでいる
しかし、外交に貢献しうるような歴史学の試みはほとんどない
→ポジティブな貢献はできないかとつくったのが、「KYOTO」のクラス
↓
京都なら一応は完結した歴史を語ることができる
→東京はまだ完結した歴史として語れる状況にない
*
もちろん、よい面だけを選りすぐって教えることはできない
歴史は「嘘のない出来事のつながり」であり、悪い面を隠すことはできません
→豊臣秀吉の朝鮮出兵など
第五章 3年目の春
▶ 歴史は時代にあわせて書き換えられる
↑
自分自身、まだまだまなぶことがある
▶ 印象派歴史学
海外で教える日本史は、少々荒削りでも、良い影響力と強い魅力を発するものでなくてはならない
→氏は、「印象派歴史学」として自分の歴史研究を位置づけている
*
研究者は「鳥」と「カエル」の二つのタイプ★
鳥→高い視野
カエル→ひとつの話題を掘り下げる
↓
氏は前者
*
日本史とは何なのか?
その全体像について問題提起していくことは、一つ一つの対象物の輪郭線を固めるより、はるかに喫緊の問題だと思う
▶ 「大きな物語」がない日本
学者
→こだわりが多く、かつ狭い動きをするもの
学校の中で働いて、学会の議論に燃える
しかし、悲しくも多くの場合、大学関係者以外の人の生活に直接のインパクトを与えない
↓
もっと広く多くの人に歴史の楽しみ方や語り方を発信することの重要性を感じている
*
発信できるメッセージ
「日本のイデオロギーを目に見える形で作ること」
↓この本の終着点
実際に読んだ読者にアクティブに考えてもらうための、ひとつの「難題」を提示すること
*
イデオロギーとは?
ここでは、「日本とは何か?、という質問に対してしっかりした答えを構築すること」とする
国のアイデンティティを形成する上で、必然的に重要になるのが、その国の歴史★
→歴史を知ることの重要性につながる
↓残念ながら
第二次世界大戦後、日本には「大きな物語」がない
:それは言い過ぎ。高度経済成長はひとつの大きな物語であるはず。
▶ マイケル・サンデルの言葉
「わたしたちは、地球市民なのです」★
どこの国で何が起こっても、それが瞬時に世界中に伝わり、たくさんの人々の生活に直結する時代
→歴史も例外ではない
→外交的な歴史叙述を日本国内外で語りはじめていかなくてはならない時がきている
↓
この機会に日本の内部からも活発に日本人改革を進めてほしい
→日本史は教科書を読むばかりではない。つくるもの。生き物。★
→生活の一部として位置付けてほしい。
→新しいアイデアが生まれるきっかけともなるはず
▶ 20人のクラスに140人が
2年目
申し込みはきたが、絞って36人に絞らざるを得なくなった
▶ 251人の学生とともに
ハーバード大学3年目の春学期
記録を大幅に更新
あとがき
読了 7/8 16:41
190ページ