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「自滅する選択―先延ばしで後悔しないための新しい経済学」の読書メモ

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読了本の読書メモを少しづつ公開していこう( 2012 第二弾) - #garagekidztweetzで告知した読了本の読書メモを共有開始します。
最初は、自滅する選択―先延ばしで後悔しないための新しい経済学です。

はじめに

食べ過ぎ、仕事の先延ばし、喫煙、ギャンブル
→長期的な視点から見れば自分の利益にならないのに抜けられない

本書の目的は、そうした不利益をもたらす自滅する選択のメカニズムを解き明かし、改善策と対応策を考えること
行動経済学の知見、心理学

双曲割引、意志決定上のバイアス
いつも目先の利益が遠い先の利益よりも大きく見えてしまう傾向のこと
→いつも、目先、がポイント

自滅と自制の問題
1. 現在から将来にかかわる選択や行動のメカニズムをできるだけ理論的に
わたしたちは単純な最適化マシーンではないが、まったくデタラメでもない
2. できるだけ多様なデータ
時間とリスクに関する選好調査 ★
3. 双曲割引の影響が自覚されるときに、その同じ選択バイアスが、拒食、ケチ、仕事の前倒しといった過度の節制につながる可能性があることをいくつかの形で説明しています

誘惑される意志実践行動経済学

第一章 なぜ太っている人は借金をするのか? ー自滅する選択のなぞ

▶ 自滅する選択とは何か?

*損をする選択
現代社会を特徴づける病理的な問題
→構成員である私たち自身の意志決定や選択にかかわっています

道徳的に抑制しなければならない誘惑に負けてしまう意志薄弱さ
→アクラシア ーギリシャ哲学

自分でえらんでいるのに自分の利益に反してしまう矛盾した行動
→自滅する選択

*太っている人ほど強い負債傾向 ー相関する自滅選択
相関関係
Aという自滅選択をする人は、べつのBという自滅選択をする
例として、肥満と借金 ー図 4,5

直接的な因果関係を示すものと解釈すべきではない
さまざまな自滅選択はその背後に選択上のバイアスが共通して働くために相関性をもってくるものと考える

▶ 現在と将来を秤にかける

*現在か将来か? ー時間を通じた選択
自滅的な選択
それらは、本質的に時間に通じた選択でしか起こらない

異時点間の選択
現在と将来の利益を秤にかけてどちらを選ぶかという選択
朝三暮四の例

貯蓄、定年までの賃金スケジュール、仕事をどのタイミングでこなすか、健康にかかわる選択、タバコを何本吸うか

自滅する選択は、自分で選んだにも関わらず後になって自分を傷つける矛盾した行動なので、時間を通じた選択だけで起きる

明日の大きな利益を捨てて今日の小さな利益を選ぶことは、とりあえずはその人の現在指向性という好みの問題、ただちに不合理な自滅選択というわけではない

*現在指向性がポイント ー時間割引率で考える
時間を通じた選択
どの程度現在指向か?
つまり、どれだけせっかちか?

通常は金利などで使われる考え方→時間割引率

時間割引率が高く、現在指向性が高い→自滅する選択をとりやすい
→しかし、その双方が揃ったからと直ちに自滅する選択をとらせるわけではない

*銀行員の割引では割り切れない現実
時間割引
最近までは、指数割引という割引モデルを前提にした抽象的な議論に終始していた

一定の割引率で将来の価値を割り引く
さまざまなタイミングで生じる価値を現在の価値に換算し、つじつまが合う長期の計画をたてていく上で大変有効

各時点で得られるであろう効用を指数割引によって現在価値に直し、その総和を最大にするように人々が行動する
→割引効用モデル
→サミュエルソン

各個人が固有にもっているとされてきた時間割引率が、実は選択の条件によりさまざまに変わることが経済実験やアンケートで明らかに

割引効用モデルでは説明できない変な現象
→割引効用アノマリー、異時点間選択アノマリー

価値の大きさにより、時間割引率が変わってくる
→マグニチュード効果

選択対象の価値がプラスかマイナスかによって時間割引率が変わる
→符号効果

▶ 双曲割引 ー目先にとらわれてブレる

*動物のように目先にとらわれている
時間割引率に観察される厄介な性質
直近の選択ほど適用される時間割引率が高くなり、将来より現在の利益に大きなウェイトが置かれてしまう傾向

近い将来の異時点間選択に用いられる割引率が遠い将来の選択に適用される割引率よりも高くなる傾向を
→双曲割引とか、現在バイアス

*自滅的な後回しや先送り
双曲割引の下では、時間がたつにつれて、選択に適用される忍耐強さが弱くなる結果、長期的観点から以前に計画していたことに矛盾を生じてそれが実行できなくなってしまうこと
→遠い将来なら我慢できることが目先では我慢できないといったこと

後回し、先延ばしにつながる
双曲的な人ほど、過小貯蓄や過剰消費の傾向

*自滅の問題 ー天使と悪魔の葛藤
双曲割引のもとでは、時点時点で目先の利益が大きく見える違った自分がいて、利害が衝突

セルフコントロールの問題

エージェンシー問題
エージェンシーコスト

*賢い人とそうでない人
将来のダメな自分を正しく悲観している人→賢明な選択者
将来のダメな自分を過信して仕事を彼に委ねてしまう人→単純な選択者

双曲割引のもと
面倒な仕事は後回し
楽しいことは前倒し
→単純な人の場合

賢明だからといいわけでもない
過度の節制、行き過ぎた選択

▶ 将来の緩い自分を縛る

*ダメな自分を縛り付けておく
外出するときに余分なお金は持ち歩かない
テレビドラマにはまらないように初回をみないようにする、など

将来の自分の選択をあらかじめ制約してしまうこと
→コミットメント
ギリシャ神話、オデュッセイア、第12歌

*資産を使えないように凍結する
消費が過大になり思うような貯蓄ができなくなるのを防ぐコミットメント
→なかなか換金できない流動性の低い資産

不動産
解約が簡単にできない預貯金契約

▶ 自滅を避ける

*自分を知る ー自己シグナリング
明日の自分に過度の自信をおいて選択しない

自分の行動や選択の経験から自分の双曲性についての情報が発信されることを自己シグナリング

自制問題
長期利益を考えて計画を立てる依頼人と、短期利益を優先させて実行にうつす代理人の間で生じるエージェンシー問題

*選択を改善する方法
1. コミットメントの手段を用いる
→マイルール
2. 計画期間を短く刻んで行動計画を立てる
3. 食べるときに、認知判断によって選択できる状況をつくる

*行動経済学政策のすすめ ー座りそうなところに座るべき椅子を入れる
パターナリズム
強制的に何らかの規制に従わせる政策や介入を行うことにより人々の厚生をよくしたいという考え
父権的な強制による介入主義

行動経済学
リバタリアン・パターナリズム
自由主義的に介入する

意志表示がない場合に選んだと見なされる初期設定の選択肢→デフォルト

自動登録制の導入→わかりやすい例

▶ コラムA サルは朝三暮四
▶ コラムB 時間割引率を測る

37

第二章 せっかちさは変わる ー時間割引の行動経済学

*異時点間選択のアノマリー
アノマリー
従来の標準的な理論では説明できず、そのパラダイムの中で説明しようとすれば現実離れした仮定が必要になるような実証的事実を表す

▶ 少額なほど割り引かれる

*マグニチュード効果
選択対象の価値の大きさと、時間割引率の関係

人々は将来の価値が小さければそれを待つのにせっかちになり、大きな価値ほど忍耐強く待てる傾向
金額効果
→マグニチュード効果

*高まる比例感応度
なぜ少額であればあるほど大きく割り引かれるのだろうか
人は金利だけでなく、利息の額を考えて待つかどうかの意志決定をしているのではないか?
増加する比例感応度
→限界公用の逓減と矛盾 ー価値が大きいほど価値が増えることのインパクトが小さくなる

同時点の価値の評価に対する傾向

*待つための心理的固定費用
受け取りを待つという行為には自制心を働かせることが必要なために、金額の大小にかかわらず一定の心理的コストがかかってくる
心理的な固定費用が待つことに必要
→問題。将来の価値をより遠い将来まで待つ場合に観察されるマグニチュード効果の説明にならない
ー42

*心理的会計
私たちがお金を使ったり蓄えたりする場合、お金の額や源泉によって、処理する心理的な勘定項目が異なっていて、その勘定項目に応じた行動をとる

▶ 利益は損失より割り引かれる

*符号効果
私たちのせっかちさの度合い
利益や満足を待つ場合と、損失や不満足を待つ場合でもことなってくる

受取時間割引率
支払時間割引率

受取時間割引率>支払時間割引率
の傾向
要するに符号効果とは、将来の損失が利益の場合ほど割り引かれない現象

*限界効果の逓減
私たちはある財を消費するときに、その量が増えると満足度が増しますが、その増え方は消費量が大きいほど小さくなる傾向がある

金額が増えると満足するが、その増え方は金額が大きくなると小さくなる
逆もしかり

*損失バイアス
私たちはときとして、利益に対してより、損失に対して過敏に反応します

損失評価の説明、前提
1. 損失回避:損失や支払いに対する不満足は同じ大きさの利益や受取の満足より大きい
2. 損失への過敏性:満足度の金額に関する弾力性は利益の場合よりも損失の場合の方が大きい

貯蓄
現在の消費を一部諦めて、将来の消費に回すこと
→金利が高くなければ貯蓄をしない

逆に借り入れとは、
現在の消費を増やすために、将来の消費の一部を返済に回すこと
→金利が十分に低くなければ借り入れをしない
→借入回避

*符号効果と借入回避行動
強い相関性 ー50

*遅れる損と早まる得
遅めと早めの非対称性
人気の携帯電話を予約することを考える
2ヵ月先の入荷が1ヶ月延びた→値引きを要求したい
→遅れのディスカウント

3ヶ月後の入荷→1ヶ月早まる
→早めのプレミアム

早めのプレミアムは、遅れのディスカウントより小さくなる

*フレーミング効果
ある選択をするときに、その文脈の中で比較の対象として決まってくる基準のことを行動経済学では参照点
その対象点からの変化や乖離を対象に評価し、選択を行う傾向がわたしたちにはある
↓結果
実質的に同じ選択でも文脈や選択の枠組みが違えば評価や選択が異なる

▶ 合計が小さくても少しづつ改善する方法を選ぶ

*満足の系列を選ぶ
遠い将来になるほど大きく割り引かれるので、できるだけ満足度の高いものを早く、低いものを後に持ってくるのが最適な選択

*少ない方の生涯賃金を選ぶ?
設問 ー56
総量が小さくても、その時点の満足の大きさが徐々に増えていくような系列を選択する

*年功賃金のなぞ
58 124

*改善そのものが満足をもたらす
改善例が好まれるのは?
・満足度の高いイベントをあとにもってくることで、期待からの満足を味わい、不安からの不快感を回避しようとしているのではないか
・私たちが習慣化の影響をあらかじめ織り込んでいることが考えられる

*味わいと習慣
楽しみを後にとっておきたいという性向がどの程度強いものなのか
楽しみを味わう程度
習慣化の影響を自覚する程度 ー64

*連なりという文脈
将来を味わう気持ちや習慣化という要因のどちらかが働かないような選択の文脈であれば、将来の満足を高く評価する傾向は弱まり、プラスの時間割引率の効果が効いて現在を優先させる選択をするようになる

フレーミングの問題
その選択の枠組みが、満足や不満足の連なった一続きの系列の中で行われるか、それだけ独立した選択として行われるか

独立した選択の場合より連なりの中で選択を行う場合に強く働くと考えられます

▶ まとめ

時間割引率は、選択対象が小さいほど大きく、人々は大きな価値ほど忍耐強くそれを待つことができる
→マグニチュード効果

将来の損失に対する時間割引率は、将来の利益に対する場合よりも低くなる傾向がある
→符号効果

一定期間にわたって、何らかの利得が支給される場合、人々は、利益や満足が徐々に改善されていくような受け取り方を選択する傾向がある

第三章 不本意な選択のメカニズム ー双曲割引

*自滅をもたらすアノマリー
選択対象となる利益、または不利益が間近であるほど、時間割引率が高くなり、せっかちになる

双曲割引、現在バイアスの説明
私たちのさまざまな日常の選択局面で経験する矛盾した選択のメカニズムについて理解を深める

▶ 間近になるとせっかちに

*間近の選択と遠い先の選択
すべての異時点間の選択
早く得られる小さな利益と遅れてしか手に入らない大きな利益のどちらを選ぶかという問題
→貯蓄の問題、健康管理の問題

関与するのは時間割引率
時間割引率が高い人ほど現在志向性が強く、少々小さくても早くもらえる利益を選ぶ

時間割引の衝撃的な特性
間近の選択ほどそれが高くなり、したがって将来より現在にそれだけ大きなウエイトがおかれてしまうところにある

間近の時間割引率が高めに →双曲割引

*指数割引と双曲割引
銀行預金の金利を考える
計算式 ー75、79
指数割引
双曲割引
準双曲割引

*マッチング法則
報酬の価値は報酬の大きさに比例し、遅れの大きさに反比例する

▶ 矛盾する選択

*明日を割り引く一方で10年後も考える二重性格
私たちは確かに目先の利益にとらわれ、近い将来の利益を大きく割り引いて評価してしまう、だが、だからといって遠い将来の楽しみや苦労を100%割り引いて無視しているわけではない
短期を大きく割り引く一方で、長期もそれなりにちゃんと評価する矛盾した傾向
→双曲割引で説明
:83にあり、わかりやすい

*矛盾する選択、破られる計測
双曲割引
二面性ゆえに、矛盾した行動をわたしたちにとらせます
双曲的な人
同じ異時点間の選択であっても、時間がたって実行時点が近づくにつれて、適用されるせっかちさが増していくために、前にたてた辛抱強い計画に矛盾が生じ、結局せっかちな選択をしてしまう
高いビルとその手前にある低い木を眺めるのに似る

双曲割引の問題
目先の利益を優先させることにあるのではなく、誘惑を間近に見た途端、それに引っ張られて最初にたてた計画を保護にしてしまう点
→選好の逆転、変心、心変わり

*長期的利益の後回し、短期的利益の前倒し
面倒の後回し、先延ばし
こどもの頃、休みに出された宿題をいつ頃やることが多かったか、というアンケート ー90
双曲割引と後回しの関係 ー91
→計画を反古にする傾向

*過剰な消費と過小な蓄積
→双曲割引との相関性

▶ 双曲割引のメカニズム

*今日の一日は長い ー心理時間の歪み
ウェーバー・フェヒナー法則
感覚として感じる刺激の大きさが、客観的な物理的刺激量の大きさではなく、その対数値ー言い換えれば、元の状態からの刺激の割合ーに比例するという経験則

97の図がわかりやすい

主観時間軸上で指数割引をしているからといって、実際に矛盾のない合理的な選択をしていることにはならない
実際の選択や行動は物理時間に沿って行われるから
→取引や契約を例に考えるとわかりやすい

*いまという真っ白な紙が汚れる ー不確実性による汚染
双曲割引とリスクの評価と関連づけて考えることもできる

将来の価値を割り引く一つの理由
→不確実性

行動経済学、プロスペクト理論、確実性効果
確実な利益に非常に小さなリスクが加わるだけで。それが過大に評価されてその価値が大きく損なわれてしまう傾向
↓説明できないケース
手前の選択肢に遅れがあっても双曲割引が観察できる

*脳にすむアリとキリギリス? ー双曲割引の脳内メカニズム
すぐの貨幣報酬と遅れを伴った貨幣報酬は別の神経系が価値を決める
脳の二つの機能
マクルアーのアリ・キリギリス説

▶ まとめ

私たちの時間割引率、銀行員が債券を割り引く場合のように一定ではなく、その異時点間選択が近いほど高くなる傾向
双曲割引
明日を大きく割引ながら、10年後も考える私たちの二面性の表れ
双曲割引の下、時間の経過とともに、にわかにせっかち度が高まり、選好の逆転がおこる

短期的自己と長期的自己の対立の中でどのような選択を行うのか

第四章 分裂する自己の自制問題 ー先延ばし・前倒し・コミットメント

▶ 分裂する自己の問題

*自制問題
双曲割引の下では、貯めるという長期的利益を追求する自分と使うという短期的利益を追求する自分がいて、各時点でお互いにとって望ましくない選択をしようとする

分裂症的な自制の問題

*将来の自分を正しく悲観する人と間違って楽観する人
その日のうちに仕事を片付ける
→自分が二重人格であることを自覚していて、短期的自己と長期的自己の利害対立を織り込んだ上で、反古にされない実行可能な選択を工夫して行っている

一年前の低い時間割引率の下で抑制の利いた辛抱強い計画を立てたいが、一年後のせっかちな自分は高い時間割引率にしたがって勝手に現在志向的な計画に書き換えてしまう
→一年前のベストだと考えていた計画は実は実行可能ではない
→早晩反古にされてしまう厳しいプランは選択肢にいれず、実行可能なプランだけを考えてその中からベストを選ぶ
→賢明な選択者

選択者が賢明な場合、事態はずっと複雑

1. 面倒な仕事
単純な人、これを後回し。賢明に選択するということで、実行時点が速まるということは、それによって後回し傾向が緩和されることを示している
2. レジャーの前倒しは賢明な選択によって一層強まってしまう
→前倒しの一層の悪化

*いつ掃除をするか? ー将来の行動を織り込んで弱まる後回し
単純な人の場合、全将来を考えながら労苦を最小にしようと行動するにも関わらず、逆に最も大きい、望ましくないところで掃除をする

将来、自分のせっかちが急に増すことを織り込んで選択することにより、掃除の後回しは解消される

*過度に禁欲的な選択 ー後回しを嫌って早くしすぎるリスク
掃除を3日の中日に行うのが一番コストが低い場合
賢明な選択を行う場合には、双曲割引がありながら、ときとして過度に禁欲的な選択が行われる点は注意
双曲割引とは将来の利益を現在の利益よりいつも大きく見積もる傾向、こうした現象は逆説的

*いつ映画を観るか? ー将来の行動を織り込んで強まる前倒し
双曲割引の下
→レジャーや消費の前倒し

▶ 過度の禁欲と無節制

*グランプリ映画を見るために我慢する賢明な選択
将来の自分の行動を拘束する
自縄自縛→コミットメント

*賢明な選択による過度の禁欲と無節制
一般的には私たちが将来の自分の情けなさを織り込んで選択する場合には、双曲割引と結びつかないような選択や行動を行うことができる
禁欲か無節制に向かうか?
→将来の自分に対する悲観が今日の甘い選択のコストを大きくするのか小さくするのかにかかっている

現象面から見れば、過度な節制は双曲割引の直観に反しますし、過度な無節制や放縦は賢明な選択という前提に矛盾するように見えるのですが、将来の自分を織り込むことから生まれる現在の自分と将来の自分の戦略的な相互性から見れば決して不思議な現象ではない

*将来の緩い自分を織り込むことで貯蓄は増えるのか減るのか?
将来の自分を織り込んだ賢明な選択が、単純な選択の下で発生する過小貯蓄という弊害を緩和させるのか悪化させるか、将来のもたらす二つの効果による
1. 将来の自分を悲観する効果
一方、将来の緩い自分が十分な貯蓄をしないことを知っていれば、将来消費水準を落とさなければならないことが予想できる
2. 平準化動機
→余分に貯蓄しておかなければならない必要性

▶ より大きな仕事をという落とし穴

*どの仕事をするかといつするか
長期的により大きな利益をもたらすような魅力的な仕事が選択肢にある場合、それによってそれまでになかった後回しが引き起こされてしまう
→魅力的な仕事が舞い込むとそれまでにうまく回っていたことが回らなくなる

どの仕事を選ぶか、いつ選ぶか
仕事を選ぶ場合、単純な人
長期的に最も大きな利益をもたらすものが選ばれるのにたいして、選ばれた仕事を遅滞なく行うかどうかは、先延ばしの利益があるかどうかによる

*より大きな仕事をが引き起こす停滞
仕事がルーティン化されておらず、いつ何をするか自分で決めて行っていく職業ほどマイナスの影響

▶ 自縄自縛の利益

*コミットメント
自制問題を自覚している賢明な人は、あらかじめ将来の自分の手を縛っておくことで自分の利益を確保することができます

コミットメントメントに利用できる方法や制度をコミットメント手段という
:これは元々、自分ルールとして私はやっている

将来と現在の自分との間に発生する囚人のジレンマに勝つ

そもそも経済学が、自由な選択を阻害する介入わ規制を排除するのは、基本的にはそれらが選択の効率性、ひいては資源配分の効率性を損なうからなのですが、最善の選択ができるという前提が自制問題のせいで崩れると、こうした議論は妥当しなくなる

利用可能なコミットメント手段を自ら用いて選択を改善できる

★動学的効用最大化における近視眼と時間非整合

*コミットメント手段としての非流動資産と教育
貯蓄性保険契約
定期預金
積立貯金
豚の貯金箱
国民年金
401k

非流動性資産の形で資産を保有しておくことで双曲割引の下で消費性向の高いそのときどきのいまの自分が、資産を取り崩して過剰な消費をすることを防ぐ

人的資本も流動性が低い
教育、訓練、あるいは経験を通して得た知識や技能
獲得することでゼロにはならなくなる

▶ 金の卵の理論

*金の卵を産むガチョウ
*所得ー消費サイクルー恒常所得仮説は成立しない
標準的な新古典派経済学では、消費を決めるものはそのときどきの所得水準ではなく、恒常所得つまり生涯にわたって得られるだろう所得の平均水準と考える

金の卵モデルを前提に説明
賢明な消費者は自制問題に対処するためにあらかじめ資産を非流動資産の形で所有するので、景気変動の影響でたまたま所得が低下したときは消費に当てるための流動資産に不足が生じる→結果、消費が減る
反対に
景気がよくなったとき、貯蓄に回すよりも消費を増やして幸運を精一杯満喫する

*所得からの消費性向の方が資産からの消費性向より大きい
何らかの理由で所得や資産が増えたときには、私たちは消費を増やすのが普通
限界消費性向
→このとき所得・資産の増分に対して消費の増分が相対的にどれだけ大きくなるか示す割合

所得・資産の増加がどのような形で生じても限界消費性向は同じなわけではない ー147

流動資産ほど、限界消費性向は高い

*負債パズル ー資産を持っているのにクレジットカード負債がある
退職後の貯蓄を行う行動とクレジットカードで借金をする行動は矛盾

非流動資産をコミットメント手段に利用し、双曲割引に左右せれないようにする

*リカードの中立命題が成立しない
恒常所得仮説が成立しない事実の裏返し
恒常所得が、変わらなくとも一時的な景気変動や政府の増減税策によって手元のキャッシュフローが変わると手元の流動性にくらんでしまういまの自分が消費を変化させてしまう

減税があらかじめ事前に予想される場合には再び中立命題がなりたつ

*金融改革の功罪 ー伸縮性かコミットメントの利益か
双曲的で自制問題をかかえる中においては、金融市場の発達は必ずしも私たちの利益にならない

非流動資産のコミットメント手段としての効用がなくなってしまったり。

資産配分の効率化のメリットはある ー154

▶ 単純かのか賢明なのか?

*部分的に単純
単純であるという自覚は不十分

*締め切りを刻むと効率があがる ーアリエリーとワーテンブロチのフィールド実験
時間点にまたがる人々の行動が、実際にそれほど賢明ではないことを示唆

*試験勉強をいつ始めるか
私たちの多くが、将来の自分を織り込む賢明さをもちながら、それが十分でないために、結果的に長期的な利益を損なうような選択をしてしまっている

自制問題に直面しながらそのことに部分的にしか気づいていない人の割合は高い

私たちは自制問題を自覚して自分でコミットメント手段を利用する知恵をもっている
それが仕事の成果や選択の効率性を高めるのは確か
自制問題の自覚が不完全であるために、コミットメントの利用に期待するだけでは不十分
選択や行動には改善の余地が多分にある

▶ まとめ

コミットメント手段
自制問題の自覚

▶ コラムC 津島家のコミットメント

太宰治の話

第五章 借金・肥満・ギャンブルに見る自滅選択

過小貯蓄、過剰負債、肥満などの健康問題、喫煙、ギャンブル
→単純な意志決定に関連することを説明
1. 時間割引率
2. 符号効果

▶ わかっていても入れば使う ーナイーブな消費サイクル

*小遣いサイクル
子供
小遣いを待ちきれず使い果たし、小遣い日には後先を考えずに大盤振る舞いしてしまう
→金の卵モデルの賢明な消費サイクルにたいして、単純な消費行動の現れ

*食料券栄養サイクル
米国、貧困家庭の生活保護政策、フードスタンプ
給付日と給付日の間の関係
給付日に最も高いカロリー、だんだん減っていく

*年金ー消費サイクル
年金生活者の消費パターンが双曲割引の影響を示唆

▶ 双曲割引と負債行動

*クレジットカードによる借り入れ
銀行金利に比べ高い金利
人々のクレジットカード負債の可能性や保有金額がその人の双曲割引の有無と相関があると示す研究

*勧誘金利に惑わされてかえって高い金利を払う
一定のお試し期間
さまざまなプラン ー176
ところが多くのユーザーは借り入れをお試し期間だけに止めておくことができない
→かえって高い金利を払うことに

現状維持バイアスと双曲割引

*欧米型消費者金融ペイデー・ローンを巡る自滅行動
ペイデー・ローン
給料日までのつなぎに借りる非常に短期のローンが貸借の対象
ー182
借り手たちの特徴
1. 借り手たちはペイデー・ローンを借り始めてから一年以内に債務不履行に陥る可能性が80%
2. 債務不履行に至るまでに平均5カ所の貸し金業者から借り入れ、平均90%の実効金利を払っている

単純な双曲消費者モデル

*双曲割引と借金 ーわが国の場合
双曲的で単純な人は、将来の返済を十分に請け負えるほど家計状況が芳しくない場合にも、申し込みが棄却されるかもしれない水準まで借り入れを行うとしており、その結果、より高い確率で借金の申し込みを断られているのではないか

*双曲割引と多重債務
双曲割引が過剰債務を増長させる
1. 債務内容の多くがクレジットカードや消費者金融を利用した短期で高金利な借り入れ
2. 多重債務者は債務整理や自己破産に至るまでに、利息返済のための新たな借金を繰り返して借り入れの件数と金額を大きく累積させる

グレーゾーン金利の話 ー192

*符号効果による借り入れ回避
1. 将来の支払いや損失を割り引かない符号効果→借入回避の傾向を強め、負債保有を抑制する効果
2. 時間割引そのものの水準がたかいほど、人は現在志向的な消費を行い、より大きな借金をかかえる

符号効果の借入回避効果は過剰負債に対しては大きくなく、統計的な優位性も弱くなる

▶ 肥満とやせ

*体型を選択する
男性の肥満化傾向
女性の低体重化

食べることが異時点間選択である結果、人々の肥満度や健康度は、その人その人の時間割引率の高さや双曲割引の程度に依存する

*貯めずに借りる肥満者
肥えている人はそうでない人よりも強い負債傾向

無駄に蓄えた皮下脂肪や内蔵脂肪を、そのときどきの食べる楽しみのために背負った健康上の負債だと考えるとうまく理解できる

*肥満という自滅
200ページの説明がわかりやすい★
肥満が双曲割引をもたらすという意見

*やせという選択
符号効果がある人の方が多く、双曲割引の程度が高い人ほど低くなる
しかし、低体重が不健康な状態であることを考えると少し奇妙

痩身に偏った美意識が市場で形成されているということを示す

▶ ギャンブル・タバコ・酒

習慣性をもち長期的な不利益をもたらす
互いに相関性
過剰負債や肥満などの自滅選択とも強い関連性

▶ まとめ

双曲的な選択者が将来の自分の忍耐力を過信する単純な意志決定者である場合、さまざまな局面で消費を過剰に、蓄積を過小にするような選択を行ってしまう傾向があります
将来の損失を利得の場合より小さい割引率でしか割り引かない符号効果は借入回避行動をもたらし、消費や負債を抑制する方向に働きます

▶ コラムD 肥満比率 ー日本とWHO

213

▶ コラムE スーパーサイズ・ミー ー欧米の肥満事情

2004、ドキュメンタリー映画

▶ コラムF 体重を軽めに言う ー自己申告バイアスと双曲割引

自己申告バイアス

第六章 自制する知恵と手立て

自制問題への対策を考える
自滅する選択を回避し、よりよい選択をする知恵と手立てを考える

対策
1. 私たちひとりひとりが意志決定者として自制問題の中でどのように長期的な利益を確保していくかという、選択上の知恵と自制する手立て
2. ほかの人が行う選択の枠組みをデザインする立場にある場合に、どのような枠組みをつくれば、彼らの自制を助けたり、その選択を改善したりできるのかという政策の方向づけの問題

▶ 自滅する選択を避ける手立て

*将来の緩い自分を織り込む
自制問題の構造をよく理解し、将来の緩い自分を織り込んだ賢明な選択を行う
貯蓄、ダイエット、節制

*ブレてみて分かる自制問題と意志力
自分の自制問題の深刻さを理解するには?

実は経験によってしか知ることはできない
自身がどの程度ブレるのかは、何度か自分でブレてみないと分からない
ー 図解 ー225
自己シグナリング

自分の双曲性の程度を知るには、過去の行動を分析しその結果を正確に記憶していくことが必要
↓難しい
1. 分析そのもの
2. 途中で挫折したつらい経験を一つ一つ正確に記憶することはたいへんつらい作業
ワーカホリックの危険

*枯渇する意志力に対応するための2つの方法
1. 意志力や認知能力をできるだけ節約して長期的な利益を選ぶ方法
2. 意志力が効率的に利用できる環境で選択を行う方法

*2種類のコミットメント手段
1. 外的な取り決めやルール
契約や法律、ルール
2. 内的なコミットメント、ソフトなコミットメント

*ソフトなコミットメント手段
ー230 にリスト
私たちは、自分が行った選択とその結果を情報としてフィードバックすることによって、自分の自制問題の実像を正確に把握しておく必要がある

*マイ・ルールを作る
長期的な利益を守る行動をマイ・ルールとして原則化し、それに従う

私たちの内部で起こっていることの整理 ー232

繰り返し選択の結果を長期に束ねて評価する

★マイ・ルール設定に重要なこと
1. ごまかしようのない明確な内容であること
誰にでもわかる明確な一線をひく
正当化、例外化をさせない
2. たまに許す
それを遵守しつづけることでコミットメント手段としての機能が強められるもの、しかし、いきすぎると、潔癖症、拒食症などになってしまう
脅迫観念になって、マイ・ルールが選択者を害する可能性がある

*計画期間を短く刻む
待つことの利益を徐々に刷り込むことで直近の利益を相対化し、そこから受ける衝動性を弱める方法
→減衰法、フェイディング

*敵が弱いうちに兵力を集中させる
微力な意志力を効果的に生かして少しでも長期的利益にかなった選択をするには、本能や衝動性のスイッチがオンになっている選択環境を避ける必要があります
ー237
食事など、自制問題を伴う選択を行う場合には、認知能力が必要な他の作業を同時に行わないこと
ー237
長期的な選択を行うためには、いわば本能や衝動性という敵が大きくならないうちに、認知能力や意志力という兵力をそこに集める必要がある

*選択の限界
そもそも私たちの多くが自制問題に直面していることに気づかない問題

外部からの介入

▶ 選択を許す介入

*自由な選択を許して介入する
リバタリアン・パターナリズム
ビナイン・パターナリズム
わかりやすい例、自動登録制
オプトアウト形式
選び手にとって望ましい行動が、広い意味で自主的に選ばれるように選択の枠組みに工夫を凝らす
ナッジ

*手品師の介入 ーデフォルトを変えて、よい選択を誘導する
選択の意志決定をしない状態 ーデフォルト
→それを変えることは選び手を誘導するのに最も効果的な方法の一つ
選択バイアスについての実証的な知見にもとづいたデフォルト介入という手法は従来の経済学にはなかった発想


年金、401k
後発医薬品の利用促進のための処方箋の変更

*双曲割引を利用してよい選択を誘導する
1. 長期的な利益を損なう選択には大きなコストがかかり、望ましいものを選ぶ場合には手間がかからない選択の枠組みを設定する★
→サンドイッチ実験 ー245

*将来の貯蓄にコミットさせる
★将来の辛抱強い選択にいまのうちコミットしてもらう仕掛けをつくる

*逆転の発想 ー非対称パターナリズム
リバタリアン・パターナリズム
選択のバイアスをもつ選び手には影響をあたえるが、バイアスをもたない合理的な選び手には影響を与えない

*実践に向けて
指針
1. デフォルトは社会全体の合理的な判断と整合的である必要性がある
市場模倣アプローチ
→選び手の合理的な選択の見当をつけることが困難
→多くの人々の選択をそれぞれの異なった最適解から乖離させる

2. すべての選び手に明確な意思表示による選択を義務づける方法

▶ 政策を考える

*喫煙への介入
介入例
喫煙を免許制にする
20歳をすぎると自由に喫煙できるというデフォルトを喫煙免許の申請というオプトインしないとタバコをすえないというデフォルトを変える政策

*肥満の改善
食品表示を用いた政策、メタボ検診
→歪みを生み出している現状 ー256

*消費者信用市場への介入
対策
一定以上の金利による貸付けだけに課税する政策
返済遅延の場合に適用される金利や罰金に上限を加える
→単純な借り手が自分の落ち度以上に損害を被るのをある程度防ぐ

▶ 問題と課題

リバタリアン・パターナリズム
注意すべき点
1. 介入していることに変わりはないということ
2. 行動バイアスを利用し人々の選択を誘導する技術→使いようによっては社会的な利益をもたらし、使いようによっては他人から私的な利益をかすめ取る方法にもなる

[]オデッセウスの鎖
愛情や利他心といった感情が長期の利益に自分をコミットさせる機能をもつことを強調

▶ まとめ
▶ むすびに代えて

割愛した二つの問題
1. 属性と選好
2. 誘惑と自制をめぐる議論
→あらたな機会でとりあげる

6/4 12:31 読了

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