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”良い戦略、悪い戦略”の読書メモ

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読了本の読書メモを少しづつ公開していこう( 2012 第二弾) - #garagekidztweetzで告知した読了本の読書メモを共有、 7 冊目です。
7 冊目は、「良い戦略、悪い戦略」です。

序章 手強い敵

1805のイギリスの事情
フランス、スペイン
ネルソン提督
最大の課題、敵が数で上回っていること
そこで敵の艦隊を分断させるために、先頭の船を死地に飛び込ませるというリスクをとるという選択をした
敵がブンダンサレ統率を失えばこちらの思うつぼ、経験豊富な味方の艦長たちは混乱する戦況で優勢になるだろうと判断した

良い戦略は必ずといっていいほど単純かつ明快である★★
必要なのは目前の状況に潜む一つ二つの決定的な要素 ーすなわち、こちらの打つ手の効果が一気に高まるようなポイントを見極め、そこに狙いを絞り、手持ちのリソースと行動を集中すること、これに尽きる★★

戦略を野心やリーダーシップの表現と履き違えたり、戦略とビジョンやプランニングを同一視するのは間違い
戦略策定の肝は、直面する状況の中から死活的に重要な要素を見つける、そして、企業であればそこに経営資源、すなわち、ヒトモノカネをして行動を集中させる方法を考えることである
→リーダーはまさにこの役割を果たさなければならない
前進を妨げる重大な障害物をみきわまめて乗り越えるための首尾一貫した戦略

ひどく景気のいい目標をいくつも掲げて「これが戦略である」といってもすこしも驚かなくなってしまった ー例 5-
:コミットメントと取れば分からなくもないが。

良い戦略は、目標やビジョンの実現以上のことを促す
直面する難局から目をそらさずに、それを乗り越えるためのアプローチを提示する
状況が困難であるほど、行動の調和と集中を図り、問題解決や競争優位へと導くのが良い戦略
→ただし、めったにない
↓逆に
目標、努力、ビジョン、価値観といった曖昧な言葉を使い、明確な方向をしめさないのが、悪い戦略

あまりに多くのことを意味する言葉はピントがぼける
何らかの概念に内容を与えようとするならば、はっきりと境界線をひき、それが何を意味し何を意味しないか決めなければならない

戦略という言葉を考える
→よく使う比較的地位の高い人間に注目するとよい
だが、戦略で重要なのは、意志決定をする人の地位ではない
戦略とは、組織の存亡に関わるような重要な課題や困難に対して立てられるものであり、それらと無関係に立てられた目標とは異なる
戦略とは、そうした重大な課題に取り組むための分析や構想や行動指針の集合体と考えればよい

良い戦略には、とるべき行動の指針がすでに含まれている
こまかい実行手順が示されているわけではないが、やるべきことが明確になっている

今、なにをすべきかがはっきりと実現可能な形で示されていない戦略は、欠陥品
→戦略と目標設定を混同しないこと

戦略とは、組織が前に進むにはどうしたらよいかを示すもの★★
戦略を立てるとは、組織にとってよいこと、好ましいことをどうやって実現するかを考えること★★

リーダーが目標をたて、部下がどう実現するか任されるという方法はあり得る
→これは戦略ではない

本書の目的
良い戦略と悪い戦略の驚くべき違いを示し、良い戦略を立てる手助けをすること★★

良い戦略にはしっかりした論理構造がある
→カーネルと著者はよぶ
・診断
・基本方針
・行動
の三つ
状況を診断して問題を明らかにして、それにどう対処するかを基本方針として示す。これは道しるべのようなもの。方向は示すがこまかい道順は教えない。この基本方針の下で意思統一を図り、リソースを投入し、一貫した行動をとる

良い戦略が分かれば自ずと悪い戦略がわかる
とくに良くないのは、危機の根本原因は何か、診断しなかったことである

悪い戦略
単に良い戦略の不在を意味しない
固有の論理があり、まちがった土台のうえに壮大な誤りが構築される
悪い戦略が蔓延すると誰もが影響を受ける

第1部 良い戦略、悪い戦略

第1章 良い戦略は驚きである

戦略の基本
最も弱いところにこちらの最大限の強みをぶつけること
この基本を引き延ばし、潜在的な強み、すなわち「優位性」にまで押し広げている

先行者の利

良い戦略
1. ねらいを定めて一貫性のある行動を組織し、すでにある強みを活かすだけでなく、新たな強みを生み出す
2. 視点を変えて新たな強みを発見する

良い戦略に自ずと備わっている卓越した価値の第一
→新たな価値を生み出すこと★★
他の組織は持っていない、かつあなたが持っているとは誰も予想しないだけに、その価値は圧倒的

良い戦略
重要な一つの結果を出すために的を絞った方針を示し、リソースを投入し、行動を組織する
→予算をつぎ込んでひたすらがんばるは違う

▶ Apple

1997
破産寸前のApple
戻ったスティーブ・ジョブズ
誰も予想しなかったことをした
競争の激しいコンピューター業界でニッチ製品メーカーとして生き残るという現実を見据え、それにふさわしい規模までAppleを圧縮した ー24

ジョブズのApple再生戦略で何より注目に値するのは、彼のやったことはすべてのビジネスの「イロハ」であるにも関わらず誰も予想しなかったこと
・マイクロソフト officeをつかえるようにすること
・製造サイクル、DELLが成功しているのだからしっかり真似すること
・新しいOSをつくるのではなく、NeXTから買うこと

ジョブズの戦略が成功したのは、根本的な問題に直接アタックし、そのための行動に集中したから
→売上高、利益の目標は掲げなかった

製品ラインの整理、限定された直営店で販売するというビジネスモデルをしっかりと設計した
25

▶ 「砂漠の嵐」

1991、第一次湾岸戦争
イラク軍にたいして、アメリカ軍の司令官
ノーマン・シュワルツコフ
左フック戦略、理路整然とした戦略 ー30

包囲作戦では敵の正面を避ける。正面には敵の主力が結集し、防御も万全で、集中砲火を浴びる可能性がある。そこで攻撃側は、陽動作戦や牽制攻撃により敵の注意を前方にひきつけつつ、主力部隊を敵の周囲に回り込ませ、側面と背後から攻撃を仕掛ける
ー###image 32

教科書にでてくるような定石中の定石が使われたことそれ自体が驚きだったのである
戦略が秘密にされていたからではなく、良い戦略それ自体が驚きだった
→組織が大きくなればなるほど、あちこちの利害に配慮して、リソースをまんべんなく配置しがち。それを一点集中の行動をとっている。

★★矛盾する目標を掲げたり、関連性のない目標にリソースを分割して配分したり、相容れない利害関係を無理に両立させようとしたりするのは、資金も能力もあるからこその贅沢であり、悪い戦略
→何をするか、と同じくらい「何をしないか」が重要

第2章 強みを発見する

良い戦略、第二の価値
新たな強みを知り弱点に気づくところから生まれる

▶ ダビデとゴリアテ

紀元前1030年、旧約聖書

相手がこちらより弱いところにこちらの強いところをぶつけるのが戦略の定石
→ダビデとゴリアテの強みと弱み ー36

この物語は強みと弱みに対する既成の見方が必ずしも正しくないことを教えてくれる
自らの強みに気づき、敵の弱みを発見して戦いを一気に有利にした
気づいていないものをどうやって見抜くか?★

▶ ウォルマート

隠された強みを見つける演習、MBA
ウォルマートを例に演習 ー38
「業界の常識ーフルラインナップのスーパーマーケットを出店する条件として、最低十万人以上の人口が必要」
ウォルマートが成功したのは何故か?その原因を探る
・人口一万人の小さな町
・ロジスティックス・システム
・地域マネージャーの一週間の行動
二番目、三番目、気味が悪いほど似通っていてどちらもハブ構造と効率的な物資と情報の流れを表していた
→なぜKマートはわかっていたはずなのに、なぜ競争にならなかったのか? ー2002には破産申請
勝ち組の行動に注目しただけでは、全体の半分しか見たことにはならない

ウォルマートもKマートもバーコードスキャナーを導入していた。それなのに、ウォルマートなそのデータをKマートより巧みに活用できたのはなぜか?
→POSデータだけでは意味がなかった。Kマートは流通センターやサプライヤーにもデータを提供すべきだった
ライバル社は、ウォルマートの卓越したロジスティックス・システムをそっくりまねすべきだった
それだけか?
キーワードは常識★
常識プラス
「ウォルマートの店はネットワークの一部であることが必要」
→一店舗ではない、150店舗の地域ネットワーク
→100万人をカバーする

★ウォルトンは常識を破ったのではなく、店舗の定義を覆した
↓このことにきづくといろいろと分かる
どこに出店するか?→ネットワークの経済性を考える
一店舗では厳しいがネットワークを形成すれば交渉もスムーズに
地域ネットワークが基本、店舗ではない★
:小さな組織の集合体

▶ アメリカの国防計画

1990当時
アメリカの国防予算
ソ連がこれだけつけているから対抗すべしという理屈で決められていた
脅威に対抗、弱点をついているわけではなかった
マーシャルとロシュ
↓分析、見直しをはかるに
他国に効果的に対抗するためには、個々の領域でも全体においても、自国の明らかな能力を活かして競争優位を確立する方法をさぐらなければならない
→技術開発の分野では、人的・物的資源も能力も相手にまさるとして、そこで競争すべきだと提案
相手が対抗するにはコストがかかり、かつ相手の攻撃力にはさしてプラスにならないような技術にこちらが積極投資することを提言
ー47

第3章 悪い戦略の4つの特徴 ー49

・空疎である
・重大な問題に取り組まない
・目標を戦略ととらちがえている
・まちがった戦略目標を掲げている
50

▶ 悪い戦略の見本ーアメリカの国家安全保障戦略

国家レベルの戦略策定の質低下の理由を探る
911以降、安全保障戦略を見直す必要性はますます高まった

戦略と称されているものの大半、実際には戦略ではない。問題は、多くの人が戦略と戦略目標を混同していること
戦略がスローガンに墜ちている

ブッシュ・ドクトリン

悪い戦略とは、戦略がなにもないことではなく、また失敗した戦略を意味することでもない
悪い戦略では、目標が多すぎる一方で、行動に結びつく方針が少なすぎるか、全くないのである
中身のなさが問題になる

▶ 悪い戦略の特徴1 空疎である

空疎な戦略とは?
分かり切っていることをふんだんな専門用語や業界用語で煙に巻くような戦略★
大手リテール銀行の例 ー56
われわれの戦略は顧客中心の仲介サービスを提供することである
→われわれの基本戦略は銀行であることである、と言ってるのと一緒
ほかの例 ー57

エンロンの例ー60
そもそも市場というものは「単純」から「複雑」へ移行すると決まっているわけではなく、逆方向に進むことも珍しくない

本物の専門知識や知見の特徴
複雑なことをわかりやすく説明できることにある★★
悪い戦略は、わかりきったことを必要以上に複雑に見せつける

▶ 悪い戦略の特徴2 重大な問題に取り組まない

戦略とは、本来困難な課題を克服し、障害物を乗り越えるためのものである
その課題に取り組まないならば、それを評価することはできない
農機具メーカーのインターナショナル・ハーベスターの例ー61
戦略プランの寄せ集め
最大の問題点、部屋の中の象、つまり誰もが気づいていながら口に出さない脅威を無視していること
→しかし、プランには書かれていない
→なので見つけられない

余剰人員をかかえた非効率な組織が問題だった

重大な問題を無視し、分析をしようともしなかったら、戦略をたてることなどできない。重大な問題と無関係の目標や予算は戦略とは呼べない★★

今、人気の戦略プランニング
穴埋め式
→「ビジョン」、「ミッション・ステートメント」、「中核となる価値観」、「戦略目標」、戦略目標ごとの「戦略」、「イニシアチブ」
↓これもたちが悪い
企業の前途に立ちはだかる重大な問題や困難な難題が認識されていない

国防総省高等研究計画局(DARPA) ー64
良い戦略に共通する構造がある
自らの課題を注意深くみきわめ、現実のみならず世界で遭遇しうる困難を的確に予測

▶ 悪い戦略の特徴3 目標を戦略ととりちがえている

20/20プランという悪例 ー68
成功の秘訣は高い目標をもつことだ、われわれは達成するまでやり抜く、それが大事
→期待した答えではない
知りたいのは、何か飛躍のきっかけになるようなもの、テコの支点になるようなものはあるのか?
これではただの根性論

飛躍的な業績改善には、何か圧倒的な強みをもっているとか、業界の変化によって新たな商機が生まれるといったことが必要★
戦略目標は具体的で明確であるべき★★

勇気や意欲や根性を信じれば、なせばなるではない

第一次世界大戦、パッシェンデールの戦い
「最後のひとふんばり」をひたすら要求するだけのリーダーは能がない★★
→リーダーの仕事は効果的に頑張れるような状況をつくりだすことであり、努力する価値のある戦略をたてることにある

会社にとって有望な機会は何かを見極める
社内、製作工程のボトルネックを解消するなど
社外かもしれない
少人数のチームを編成
→1ヶ月ほどかけて調査してみる、競合を。
モノをいうのは、洞察力や差異化を図る能力

プランニング・プロセスを「戦略プランニング」というのは誤り★

戦略策定は時に応じて必要になるもので、毎年機械的にやるものではない★★

▶ 悪い戦略の特徴4 まちがった戦略目標を掲げる

有能なリーダーは場当たり的に目標を追いかけるようなことはせず、どれを優先すべきかをきめる
その上で社内の各部署が追求すべき下位の目標を設定する
→戦略目標に相当。どんな戦略でも遂行の決め手になる

「努力目標」「最終目標」「戦略目標」を明確にわける

高級食品大手チェン・ブラザーズの例 ー75
良い戦略の例

寄せ集めの目標
良い戦略は一つか二つの決定的な目標にエネルギーとリソースを集中投下し、それを達成することによって次々と新しい展開へとつなげていく
悪い戦略は逆に、いろいろなことを詰め込みすぎてごった煮状態の目標が掲げられていることが多い
77

第4章 悪い戦略がはびこるのはなぜか

悪い戦略とは見込み違いから生まれるのではない★★
悪い戦略がはびこるのは、分析や論理や選択を一切行わずに、言わば地に足のついていない状態で戦略をこしらえ上げようとするからである
→つまり悪い戦略は良い戦略を練り上げるためのハードワークを自ら放棄した結果
↓なぜ避けるか?
考えるのは大変だし、選ぶのは難しいから

悪い戦略はお仕着せの穴埋め式のテンプレートからも量産されている
→自社の直面する状況を見極められない

ポジティブ・シンキングに代表される思考法
信じれば思いが叶うといった思考法

▶ 困難な戦略を避ける

良い戦略は重要な課題にフォーカスする★
たくさんある課題から選び取る作業が必要になる
どれか選んで残りは捨てなくてはならない

DEC の戦略会議の例 ー84
二正面作戦は何事につけ成功率が低い

コンドルセのパラドクス★
いっこうに最終勝者が決まらない
↓解決するには
各自が優先順位をつける
→しかし、集団の民主投票においては常に悩ましい問題 ーケネス・アロー
同程度の地位と影響力をもつ三人が自説を展開、譲らないため、議論は白熱
意見に共通点もない
→空疎で毒にも薬にもならないステートメントをつくった ー88

戦略や競争優位
戦略策定の難しさは結局のところ、選択そのものにある
あれこれと願望を表明する段階ではない

選択すると選択からもれたものは悪かったものとして忘れてしまうこともある

AMD の例 ー90
戦略を転換し資金や人材やエネルギーや注意をどこか一点に集中しようとすれば、会社そのものに倒産の危機が迫っているときは別として、必ず不利益を被る人が出てくる
→ゆえに反対する

同じ行動パターンが長く続けられていると、既得権化する

▶ 穴埋めチャートで戦略をこしらえる

カリスマ的リーダーの研究から悪い戦略を量産するきっかけがつくられる★

マックス・ウェーバー
正式に任命されたリーダーとカリスマ的リーダーは区すべきと気づいた

リーダー観に関する著作

とやかく言う気はないが、変革リーダーの存在が良い戦略を保障するものではないということだけは言っておきたい★
→続けられているの追求する価値と実現する可能性を備えた戦略そのものをたてることは別物

戦略をもたないカリスマ的リーダーはいくらでもいる
少年十字軍の例 ー94
カリスマ的リーダーが人々の心を動かすことには疑う余地がない。無気力に活を入れ、士気を向上させ、自己犠牲を促す役には立つ★
→だが、数十万の命が無益に失われるケースも少なくない

戦略の必要性

2000年代前半
テンプレート式の戦略プランニング
その例 ー95
ビジョン、ミッション、価値観、戦略

そこから生まれたビジョンやミッションの例 ー97
→空疎な内容★

空疎なレトリックや悪い戦略の存在は重大な障害物となる
戦略なんてこんなものだという見方が定着し、意味のある戦略を掲げでもテレビCMのように聞き流されかねない

▶ 成功すると考えたら成功する

ウェルチを目指す人は、彼が書いたことではなく、行動に注意を払うべきである

ニューソート活動 ー101
引き寄せの法則に関連すること
関連書籍 ー104
フォードやアップルの成功は卓越した能力と幸運によるもので、それをあらゆるレベルで共有されたビジョンに帰するのは事実の歪曲といわざるを得ない

強く念じることや自分の内面を磨くことでパワーがでるものかどうか私は知らない★
だが、精神から発する光が現実の世界を変えられるとか、成功すると思えば成功すると信じるのは一種の妄想。
経営や戦略への取り組み姿勢として薦められないことは確か
分析→起こり得る事態を考えることからスタート、その中には好ましくないものも当然含まれる

第5章 良い戦略の基本構造

良い戦略
十分な根拠に立脚した基本構造をもつ、一貫した行動に直結する→カーネル
カーネルがなかったり間違っていたりすると、深刻な事態になりかねない
↓理解すれば
戦略は立てるのも表現するのも容易になる
→目標や中間目標、年間目標といったものとも関係なく、期限すらない

カーネルの3つの要素
1. 診断→課題の見極め、問題点の選り分け
2. 基本方針→診断で見つかった課題にどう取り組むか?
3. 行動→基本方針を実行するために設計された一貫性のある一連の行動

いくつかの例 ー109

▶ 1 診断

より根本的な問題は、状況を完全に把握することである
診断では、少なくとも悪い箇所を特定し、病名をはっきりさせなくてはならない
どこに注意を払いどこにあまり気を払わなくていいか
目の前の状況のパターンがわかれば、過去の類似の状況を探してヒントを得ることができる

スターバックスの例 ー112
何より問題なのは診断が正しいかどうか検証できないこと
的確な診断は単なる状況説明では終わらず、どのような行動が必要なのか自ずと示すことができる

診断はすでに認められている枠組みとの類似性、共通性の形で示されることが多い

▶ 2 基本方針

診断によって判明した障害物を乗り越えるのに、どのようなアプローチで臨むかを示す
基本という言葉がついているのは、大きな芳香をさし示すだけで、具体的に何をすべきかを逐一考えるものではないから
→ガードレールのように一定の方向に導き逸脱を防止する、しかし、細かい内容は指示しない

難局に立ち向かう方法を固め、ほかの選択肢を排除するのが基本方針★

戦略を基本方針で代用するのは間違い★★

良い戦略とは、「なにをやるか」を示すだけでなく、「なぜやるのか」「どうやるのか」をしめすものであるべき

優位性を見つけることな戦略の要諦
コスト削減、ブランド力の強化、開発サイクルの短縮、顧客情報の収集など
→競争優位にはつながるだろう、だが、それよりも大事なのは広い視野から自社の戦略的優位性を探すことにある
→良い基本方針をもつこと自体も優位になりうる
→一貫した行動を呼び起こす

利益の最大化? ー120

▶ 3 行動

多くの人が基本方針を戦略と名付けて、そこで終わってしまう
→大きな間違い

戦略のカーネルには行動が含まれているべき
→具体的に何をするべきかは明確にしなければならない★★

行動へと足を踏み出す
最も優先すべきことを決めるのは、戦略をたてる上で最も困難な作業
→この作業を終えてはじめて行動に移すことができる

消費財メーカーの例 ー123
行動しなければならないときには、苦渋の選択をしなければならない

一貫した行動を組織する
良い戦略のカーネルから導かれる行動は矛盾や対立が少なく一貫したものとなる★★
すなわち、リソース配分、具体的な行動計画、実際の行動が見事に噛み合っている

やることリストを寄せ集めただけでは戦略とは言えない

さまざまな行動をコーディネートすること自体が、それとして一つの優位性となる
→過小評価されがち
戦略的なコーディネーションは一貫性を実現するものであって場当たり的な妥協や融通ではない

行動をコーディネートするには、「近い目標」をたてることが良い方法
近い、とは実現可能な目標

戦略は結局のところ、コーディネートされた行動があるシステムに強制されるという形で具現化するのである
→自然発生的なものではない ー129

権限移譲ですべてが解決できるわけではない
とくに、行動の主体がそのコストを引き受けない場合、あるいは利益を手にできない場合は、権限移譲はうまく機能しない

とはいえ、中央での戦略策定と行動の調整が、つねに良いというわけではない
中央指令型のイニシアチブは現場の知識や経験や専門性と対立し思わぬコストを強いられることがある

ここぞというときに行動を一点集中するのが良い戦略、賢い組織
134

第2部 良い戦略に活かされる強みの源泉

ごくおおざっぱに言えば、良い戦略とは最も効果の大きいところに持てる力を集中投下すること
短期的には
手持ちのリソースを活かして問題に対処するのか、競争相手に対抗するといった戦略
長期的には
計画的なリソース配分や能力開発によって将来の問題や競争に備える戦略

第二部
どのように強みが生み出され、活かされているかを説明
テコ入れ効果、近い目標、鎖構造、設計、フォーカス、健全な成長、優位性、ダイナミクス、そして慣性とエントロピー

第6章 テコ入れ効果

テコ入れ効果
ここぞというときに対象に向かう集中が、幾何級数的に大きな効果をもたらす

▶ 的確な予測でテコ入れ効果を引き出す

テコ入れ効果を得るには、的確な予測を行うことが重要になってくる
最も単純な例
→マンハッタンの土地に重点投資するということ戦略は、将来ニューヨークで不動産需要が高まって値上がりするという予測に基づいている

トヨタの例 ー136
ハイブリッド車の開発
・燃費の良い車が求められる
・トヨタが先んじてハイブリッドのライセンスをとれば、他社はそれに応じより高度なシステムを開発する方向には進まないだろう
という予測

顧客の反応を予測するよりも、競争相手の反応を予測することが重要★★

戦略的な予測では、すでに起きた出来事を起点にして、世の中の趨勢、経済や社会の動向、他の関係者の動きなどを手がかりに「下流」で起こり得る出来事を予測するのが定石

▶ テコの支点を選ぶ

テコ入れ効果を実現させるためには、エネルギーやリソースの効果を数倍に高められるような「支点」を見つけなければならない

セブン&アイ・ホールディングスの例 ー139

ニーズは高まっているのに、それに応える製品やサービスがないのは、一つの不均衡
開発された能力が十分に発揮されていないとか、他にも応用が期待されるケースも不均衡

▶ 集中によってテコ入れ効果を得る

限られているものを集中投下したときの見返りは大きい
→制約があるから。リソースが無限にあるならどの目標に投入するか迷わない

閾値効果
あるレベル(閾値)を超えるまではほとんど変化が現れないが、そのレベルを超えれば一気に大きな変化が現れることを指す
→広告などが例 ー143

組織で集中が好まれる要因、閾値効果のほか
経営幹部の注意や認識能力に限りがある

心理学の観点
集中ができるのは、閾値以下のシグナルに気づかないか、無視するから
→サリエンス効果

第7章 近い目標

幸福や美を追い求めるのは愚かである。どちらも人生の副産物に過ぎない ーバーナード・ショー

リーダーが戦略実行に使える強力な手段の一つは、近い目標を定めること
→実現可能な目標
近い目標は、高い目標であってよいが、実現不可能であってはならない

ケネディ大統領の宇宙有人飛行の実現演説 ー146
重要なのは、月面着陸は可能だと思われていたこと
149

▶ 曖昧さをなくす

近い目標には、組織のエネルギーを結集させる驚くべき効果がある

サーベイヤーの話 ー149
さまざまな脅威を思い浮かべるとどれか一つに決められないフィリスの模型、真実ではない。真実はその時点では誰も知りようがなかった、だから、技術者がプロジェクトを先に進められる予測するような近い目標を戦略的に選んだ
→「条件を指定しない限り、技術者はなにもできない」という慧眼

何に取り組めば曖昧なまま、むやみな高い目標を掲げてはならない

▶ 足場を固め選択肢を増やす


状況が流動的になればなるほど、先は見通しずらい
先行き不透明な状況ではむしろより近い目標を定めなければならない

▶ 目標設定には階層がある

組織として近い目標を適切に設定すれば…小さな単位にいたるまで近い目標が設定されていく
近い目標は階層構造の下位へと送り込まれていくだけでなく時間軸に沿っても送られていく

組織が違えば、近い目標は異なる
→持ち合わせているスキルやリソースが異なるから

ヘリのパイロットの話 ー156
何も考えずに操縦できるからこそ、危機に注意を集中できる

あることに集中する、すなわち最重要課題に優先的に取り組むためには、他の重要なことがクリアできていなければならない

第8章 鎖構造

最も弱い箇所によって全体の性能が決まってしまうようなシステムは、鎖のような構造をもつと言える
→どこかに弱い環がある場合、いくら他の環を強くしても鎖全体は強くならない

スペースシャトル、チャレンジャーの話 ー159

数が補えないような状況では、とりわけ質が問題になる

不動産業者
→「限定要因」
限定要因が改善可能かどうかを的確に判断しなくてはならない

▶ 鎖構造の問題点

企業や経済の鎖構造
個々の鎖が個別に運営されていると、「質的不整合」の問題が発生する
→ある単位だけで改善に投資してもシステム全体としては意味をなさない
→全体としてはマイナスにもなる場合もある

▶ 鎖構造問題の解決

シンプルに改善活動を順番に★★

鎖構造になった問題で難しいのはボトルネックを見つけること
→問題が鎖のようにつながっている場合、全部を解決するまでほとんど効果はない
一回に一つの問題に集中し、他の問題をシャットアウトすることでこの悩みをクリアした

リーダーがやることを決め、変革の難しさを予測し、それを引き受けている ー164

コスト削減を最後に回したのは、改善された製造プロセスと連動させたかったから

▶ 鎖構造を強みにする

鎖構造になった問題を解決するためには、強力なリーダーシップと計画的な取り組みが必要
→★★強力なリーダーシップにより巧みに鎖構造を作り上げてしまえば、容易には真似できなくなる

IKEAの例 ー166
やり方がユニークで、それらが組み合わされて鎖構造になっている
→どれか一つだけを真似しても効果が得られない

IKEAが今後も競争優位を維持するための3つ
・コア事業での卓越した効率性を維持する
・コア事業は鎖構造を維持し、一つ二つのまねではIKEAに対抗できないようにする
・鎖構造を形成しているIKEAの独自性を維持し、あるひとつのノウハウが盗まれても別のノウハウは容易に身につけられないようにする
カタログ、ロジスティクス

IKEAのように鎖構造で卓越するためには、鎖の環がどれも高いクオリティを保たなければならない

第9章 設計

軍隊の戦力に学ぶ、起源

▶ 戦略の父ハンニバル

ハンニバル、カルタゴの武将
第二次ポニエ戦争中、紀元前216年のカンネーの戦いでローマ軍に完璧な勝利

戦略の3つの面が明らかになる
・あらかじめ入念に練り上げられるもの
・敵の行動を予測していたこと
・明確な意図をもって全軍の行動をコーディネート

ハンニバルの戦略は、その場で思いついたものではない
あらかじめ情報収集、入念に計画

★★予測
戦略策定で基本的な要素のひとつ
敵の考えや行動を予測すること
★★設計
カンネーでのハンニバルの戦略
軍団の行動が時間的にも空間的にも巧みにコーディネートされ、調和がとれていた
戦争に勝つための基本はきわめてシンプル
→陣形の維持、規律を保つ、パニックに陥らず、絶対に逃げ出さない

有能なストラテジストが行っているのは、決定ではなく、設計
選択肢の中から選ぶのではなく、自ら設計しているのである
→ストラテジストはデザイナーといえる★

▶ 最高の組み合わせを探す

大企業の戦略立案→大規模な設計作業といえる
戦略における設計の重要さ

システム設計の大半は、実のところサブシステムの相互作用、トレードオフを見極めることにある★
無駄な重複をなくし、最適の組み合わせを見つける

★★トレードオフ
システム全体の性能は各サブシステムの能力だけで決まるのではなく、その組み合わせによって決まるのだということ
→設計とは、その最適の組み合わせをみつけること

リソースの品質とコーディーネーションの必要性とはお互いに補い合う存在

▶ 戦略的リソース

と呼べるのは、その会社が長い時間をかけて築き上げたり、独自の手法で創造したり発見したりした息の長いリソースであり、他社にはおいそれとマネのできないものである

競争の有力な武器、きわめて単純な戦略をとることができる

ゼロックスの例 ー183

ただし、既存のリソースは新たなリソースを生み出す源となりうるが、イノベーションの阻害要因にもなりうる
→賢い組織ならば陳腐化した機械設備を廃棄するように古くなったリソースを時に応じて捨て去らなければならない

成功は怠惰とうぬぼれを招き、ひいては衰退や低迷につながる
新規参入してくる企業に注目する ー186
→参考にするために

▶ バッカーの戦略

トラック業界の例 ー187
パッカーの戦略の鍵は「品質」
燃費がよく寿命の長いトラックをつくって、本体価格は高くてもランニングコストが安いとアピールすればよい
→容易ではない
・長期間走らせてみないと耐久性がわからない
・技術者の育成、定着する環境
・最終的にコストが抑えられるという理屈で高い買い物をさせるのは難しい

乗り越えるための戦略
個人営業のドライバーの視点からみた品質を重視した

パッカーの戦略で重要なのは、これと決めたことを長期に渡り一貫して続けたこと
→容易にまねのできないリソースを築き上げることができた

脅威となるのは、新たな競争相手よりも、同社の戦略の根幹を揺るがすような変化
例:NAFTAにより、メキシコのトラック業界の利用が奨励されるようになったり。

第10章 フォーカス

MBAコース
授業形式
第一の目標→企業がどんな戦略のもとで運営されているか見抜くこと
第二の目標→情報を分析するスキルを磨くこと
第三の目標→さまざまな要素を一点にフォーカスする手法を学ぶこと

あるセグメントをターゲットに定め、そこに対応できるシステムを用意してより高い価値を提供する戦略
→フォーカス戦略★

フォーカスの意味合い
・自社の方針や行動をコーディネート、相互作用やオーバーラップ効果により大きな力を生み出す
・適切なターゲットに一点集中せるという意味

第11章 成長路線の罠と健全な成長

クラウン・コルク&シールの話 ー204
さらに成長するために成長したい
買収攻勢

ペットボトルの需要減
金属缶の価格下降
→株価下落
→競争優位を失った ー207に詳細

従来の競争優位にさっさと見切りをつけ、それに代わるものを考えなかったことが失敗
ペットボトルの急成長に目がくらんだ

需要増が産業全体にわたるとき、特定の事業だけが伸びているわけではない
需要が伸びれば利益の大半は再投資に回されることになる
どの会社も設備投資して生産を拡大しようとする
→事業拡大中の企業にとって、利益というものは幻想に過ぎない
→よほどの競争優位をもっていないかぎり、失速すると利益は消し飛んでしまう

どうやら成長は誰もがすがりたいおまじないのようなものらしい

買収による成長を目指す場合
一つの問題
だいたいは払いすぎになる★
時価総額に25%程度の上乗せ、さらに手数料
→買収によりめざましい付加価値がもたらされない限り、買収による価値の創出は期待できない★★

テレコム・イタリアの例 ー211
家庭菜園の肥料をつくるために牧場を経営する必要はないのと同じで単にトラフィックをさばくために500億ドルの合併は必要ない
→契約を結べば十分な案件だった
→2社が合併してキャッシュフロー二倍というのはただの足し算であって価値の説明になっていない

結局は合併は否決
→会長兼CEO、ロシニーニョ更迭

健全な成長は、合併などの人為的操作によって実現できるものではない
独自の能力に対する需要増が原因で、あるいはすぐれた製品やスキルの結果として、あるいはイノベーションや知恵や効率や創造性の見返りとして企業は成長する

第12章 優位性

同等の実力をもつ両者、どちらが優位か?
「どちらも有利でも不利でもない」
→有利不利は違いがあって初めていえる
→敵味方は非対称でなければならない

どの非対称が決定的に大事なのか?★★

▶ ゴリラとのレスリング

どんなことにも秀でている人はいない。チーム、企業、国であれ他より秀でているのは特定の条件の下での特定の分野だけ、というのが普通
したがって、どんなところで優位にたてるかを理解することがそれを活用する秘訣
有利なところでは力を存分に発揮
そうでないところは巧みに回避

タリバンの方が優位という話 ー218

▶ ビジネスにおける競争優位

競争優位という言葉
マイケル・ポーター
[]競争優位の戦略
↓定義は明確
競争相手より低いコストで生産できるとき、競争相手より高い価値を提供できるとき、あるいはその両方ができるとき、競争優位がある★★

ただし、敵はまちまち
コストは製品や用途によって異なる
顧客も所在地、知識、好みなどがまちまち
→一概に明快な定義とも言えない

つまり競争優位はそれなりの範囲の中にだけしか効力が発揮されない

持続可能という言葉は微妙
→優位性が持続可能になるためには、模倣困難成長が条件になる

優位性を生み出すリソースがまねされないことが重要
→隔離メカニズムが必要★
評判、取引関係や人脈、ネットワーク効果、規模の経済、暗黙知や熟練技術

▶ 「おもしろみ」のある競争優位

価値を高めるためには、コモデイティー化しないことが重要★ ー223

おもしろみ
投資妙味のようなもの
自分の力で価値を高める方法がありそうだという感覚 ー具体的には224

▶ 価値の創造

競争優位に関する思考実験 ー226
シルバーマシン
競争優位があるのに、おもしろみがない
所有者にとっては価値をふやす手段がないから
マシンはこれ以上効率的に動かない、純銀には差異化の余地がない、では世界的な需要の換気は一生産者の立場では難しい
→所有者にとってはおもしろみがない

競争優位は、その価値を高められるときにこそ、楽しみがある
何か自分ができることがあるからわくわくするのである

競争優位はあるが、価値を高める余地のないものの例 ー227
eBay
→付け入る隙はないが、新しい価値をもたらしていないと言っている
ただし、シルバーマシンよりはおもしろみがある

★★価値の創造
競争優位と高い収益性は必ずしも一致しない
↓同時におこすには少なくとも4つのうちどれかを目指す戦略をとる必要★★★
・競争優位を深める
・競争優位を広げる
・優位な製品またはサービスに対する需要を増やす
・競争相手による模倣を阻むような隔離メカニズムを強化する

★★競争優位を深める
その価値とコストとの格差を拡大すること
価値を高めて価格を引き下げるか、コストを押し下げるか
売り手だけでなく買い手のコストもある
例えば、製品を探す、買いにいく、到着を待つ、据え付ける、使い方を学ぶ、切り替える、など
↓よくする方法はいくらでもあるので
失敗する主な理由を述べる
最大のものは経営陣の思い込み
→大方の経営者、現場に圧力、インセンティブを設けるかすれば、あとは自然に改善されると思っている
アメとムチよりもよい方法
→リエンジニアリング、プロセス改革 ー230
要はどのように仕事がこなされているか、虚心に観察することが肝心

隔離メカニズムでも失敗しやすい
競争相手が自社の改善にただ乗りしないような工夫
特許で保護、自社事業に深く組み込んで他社にはまねできないようにする
単にまねしてもそれだけでは役にたたないようにする
231

★★競争優位を広げる
新しい分野、新しい競争市場へ進出することを意味する
eBayはペイパルに一日の長、もしeBayがこの強みを活かしてモバイル決済システムに参入すればそれは競争優位の拡大

競争優位を拡大するには、既存の製品、顧客、競争相手から視点を移し、自社の競争優位を支えている独自のスキルやリソースを他に活かせる道はないか探すことが必要★

自社のリソースを他の市場でも活用するのが最も基本的
→しかし、大失敗につながりやすい

賢い拡大を実現するには、十分な専門知識やノウハウが蓄えられていることが条件
知識というものは、次々に応用してもすり減るどころか一層豊かに強化される
→独自の知識、ノウハウを特許などでおさえることが強みに。

お手本はウォルト・ディズニー・カンパニー ー232
ブランドの価値→製品に共通するイメージや特徴を維持するところから生まれる
映画をつくるうえで
・汚い言葉を使わないこと
・目のやり場に困るような性的なシーンはつくらないこと
・理不尽な暴力はふるわないこと

★★需要をふやす
買い手の数が増えたとき、あるいは買い手一人ひとりの買う量が増えたときには、競争優位を持っている売り手はとくに有利になる
→価値が高まるのは競争優位を支える希少なリソース

ロール・インターナショナルのPOMワンダフル
需要喚起した好例 ー235

★★隔離メカニズムを強化する
自社の競争優位を成り立たせている製品やリソースを競争相手がまねることを防ぐ
↓最もわかりやすい方法
特許、商標登録、著作権★★
アメリカの石油産業の例 ー237

ターゲットを絶えず動かしてまねしにくくする
製品やプロセスに次々にイノベーションを導入する

まねしにくくする

第13章 ダイナミクス

古典的な軍事戦略
防御側は高地をとるとよいとされている
→攻めやすく、守りやすい

ビジネスにおける「高地」を比較対照し、この高地が有利であの高地は不利なのはなぜか説明 ー戦略の学問的な研究
→重要な問題が何かないがしろにされている

未踏の高地を手に入れる方法
1. 自前のイノベーションによって作り出してしまうこと
2. 変化のうねりにのること→本章はこちら
→基本的に外からやってくるもの

変化のうねりが過ぎてしまうと、その影響は誰の目にも明らかになる、変化を活かすにせよ影響を免れるにせよ、そのときではおそすぎる★
→変化のうねりが形成される早い段階で気づいて手を打つべき

大事なのは、予測することではなく、過去と現在に目を凝らすこと★

▶ うねりの気配を感じとる

シスコの例 ー246
1996年ごろ、規模の経済から個人のスキルへ

小さなチームのイノベーションに基づく起業文化
シリコンバレー

▶ 変化の原動力をみきわめる

本質的な変化を見極めるために
→重要な細部に目を凝らす必要
その下で働いている原動力を見極める

1996ごろ、IT産業全体が突如流動的に
・競争優位の源泉としてのソフトウェアの台頭
・コンピューター業界の解体

マイクロプロセッサという共通の原因

★★ソフトウェアの優位性 ー249
ムーアの法則
設計コストに関するもう一つの法則
「カスタム・チップの設計コストは製造コストを上回るようになり、とうてい負担できない比率まで高まる」

ソフトウェアの優位性
開発サイクルが短く、アイデアを出してからプロトタイプをつくり、エラーを発見して修正するまでが短時間かつローコストでできることにある

★★コンピューター業界の解体
1996、インテル
インテル戦略転換
コンピューター業界が「垂直」から「水平」に変貌を遂げたことに注目 ー技術の分業 ー252
システムエンジニアリングが必要とされなくなってきた
→いまではコンポーネントがどれも賢いから(マイクロプロセッサ)

システム・インテグレーションがより容易に

システムすべてを自前で手がけられる巨大企業が存在しないことである
:Oracle がそうといえば、そうでないの?と。

▶ うねりに乗ったシスコ・システムズ

ー258

▶ うねりを察知するためのヒント

ノーベル物理学賞、ルイ・アルヴァレ教授
「まだよく分かっていない変化には「先端的」とか「高度」といった形容詞がつく。すでにわかっていることは「基礎」と呼ばれる」★

変化のうねりを察知するための手がかり
1. 固定費の増加
2. 規制緩和
3. 将来予想におけるバイアス
4. 変化に対する既存企業の反応
5. 収束状態

★★ヒント1. 固定費の増加
製品開発コストの増加、とりわけ
→大手でなければ耐えられなくなる→業界の合従連衡が進む

★★ヒント2. 規制緩和
政府の重要な方針転換を起点に。
一部の買い手に補助金、他の買い手を犠牲にする
不公平

★★ヒント3. 将来予想におけるバイアス
現在のトレンドはいずれピークを迎えて下り坂になると予測できる人はめったにいない
ある製品の売れ行きが好調だと「もっと伸びる」と予想するのが普通

耐久消費財が伸び続けることはまずない

ピークがくることは予想できても、それがいつくるのか、伸びのペースが鈍化するまで分からない

もうひとつのバイアス
変化の大波が押し寄せると大方の人が「巨人同士の対決」を予想する
→中小は太刀打ちできないと。しかし、そうとは限らない。 ー262

ありがちなバイアスの三番目
変化のうねりに襲われたら、とりあえず今成功している企業のやり方に従えばよいという考え方

★★ヒント4. 既存企業の反応
→14章で詳しく

★★ヒント5. 収束状態
新しい技術や構造変化に直面した産業がどのように動いていくべきかを考え、どこに落ち着くかを考える
→べき:変化は効率化の方向へ向かうべきだから
買い手のニーズに可能な限り効率的に応じられる方向へと変化は進む★

収束状態の分析★
促進要因と阻害要因
促進要因→「示威効果」
従来の認識や行動を覆すような大胆不敵な証拠や事実が明らかになることの効果
ー266

第14章 慣性とエントロピー

企業経営においては、組織が状況の変化に適応できない、あるいは適応しようとしない性質を「慣性」と呼ぶ★
変革に賢く対応できたとしても、もうひとつの力が働く
→エントロピー
おおざっぱにいえば、不確実性や無秩序の度合いを表し、熱の移動などの変化に伴って増大する
→組織は長い間には必ず秩序が緩み焦点がぼやけてくる

ふたつは戦略に重要★

戦略がうまく機能するときには、ライバルの慣性と非効率に助けられる場合が多い★
組織にとって最大の問題は外からの問題ではなく、身のうちにあるエントロピーと慣性である

▶ 慣性

三種類ある
1. 業務の慣性
2. 文化の慣性
3. 委任による慣性

★★業務の慣性
ある程度の年月を経た企業、ある程度業務の手続きが決まっている ー271
普段は気づかず、危機がきたときに気づくことが多い
飛行機業界の例 ー272

陳腐化した業務慣行がもたらす慣性は退治することができる
最大の障害は経営陣の意識なのだから、そこが変わればよい
↓そのためには
会社の業務慣行を見直すことのほか、進取の気性に富んだ人材を外部から雇用する
変化に抵抗する人には退場してもらうこと
組織の再編

★★文化の慣性
AT&T の例 ー278
1984
製品開発が得意でなかった
仕事のやり方や意識の問題
しかも悪いことに悪い文化の慣性に逆らおうとする人がいなかった

「文化」という言葉はどっしりと根を下ろした社会的行動や価値観を意味し、それは変化に強く抵抗すると考えられる
→カンボジアの例 ー281
ポル・ポト政権のやったこと

企業文化の慣性を打ち破る方法
1. 単純化
むやみにややこしい業務手続きを簡素化し、部門間の隠れた力関係を明らかにし、埋もれていたムダや非効率を排除する
次には、組織単位の分割が問題になるかもしれない
次に、適切な優先順位づけや取捨選択が必要
必要におうじて、閉鎖、修復、再編を行う
業績だけでなく、文化にも注目する→良い業績でも好ましくない文化が根付いているなら、対策を講じなければならない

文化を変えるとは?
企業の場合、業務行動規範を変え、職場の価値観を変えることだと考える★★
規範は、上層部の意向に添って少人数の集団が日々監督・指導し、強制することで定着する
→上層部が変わることが必要、まず。

★★委任による慣性
あえて企業が変化に対応しない、抵抗することを企業が自ら選ぶことがある
既存の利益の源泉がまだまだ安泰と見込めるときは有効
→顧客の慣性が働く
1980年の銀行の例 ー282

委任による慣性は、既存企業が古い収入源にしがみつくのをやめ、競争環境に対応しようと決意した瞬間に消滅する★
逆に新参企業が価格優位に加えてクオリティの面でも顧客の信頼を