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読了、コンビニ人間。

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 社会不適合、コンビニ店員最適化人間な主人公の視点で世の中の常識を見た描写がシニカルで面白い作品だった。小説の類は寝る前に読むことが多いため、寝落ちしてしまってなかなか読了しないのだが、この作品は一晩と少しで読み終わった。読みやすい。

 Kindle で読んだのでハイライトしたものの中から、特に記憶に残ったものを抜き出しておく。

伝染し合いながら、私たちは人間であることを保ち続けているのだと思う。
at location 256

 

同じことで怒ると、店員の皆がうれしそうな顔をすると気が付いたのは、アルバイトを始めてすぐのことだった。店長がムカつくとか、夜勤の誰それがサボってるとか、怒りが持ち上がったときに協調すると、不思議な連帯感が生まれて、皆が私の怒りを喜んでくれる。
at location 286

 

性経験はないものの、自分のセクシャリティを特に意識したこともない私は、性に無頓着なだけで、特に悩んだことはなかったが、皆、私が苦しんでいるということを前提に話をどんどん進めている。たとえ本当にそうだとしても、皆が言うようなわかりやすい形の苦悩とは限らないのに、誰もそこまで考えようとはしない。そのほうが自分たちにとってわかりやすいからそういうことにしたい、と言われている気がした。
at location 363

 

正常な世界はとても強引だから、異物は静かに削除される。まっとうでない人間は処理されていく。  そうか、だから治らなくてはならないんだ。治らないと、正常な人達に削除されるんだ
at location 766

 

皆、変なものには土足で踏み入って、その原因を解明する権利があると思っている。私にはそれが迷惑だったし、傲慢で鬱陶しかった。あんまり邪魔だと思うと、小学校のときのように、相手をスコップで殴って止めてしまいたくなるときがある。
at location 538

   主人公は「死んだ小鳥を焼いて食うのがなんで悪いか分からな」かったり「喧嘩しているトモダチを止めるのにスコップで叩いて止めるのがなぜ悪いのか分からな」かったり「子どもをつくるのが世の中のためになるのか分からな」かったりなどなどわたしたちがわたしたちの常識的にそれが悪いことだと思い込んでいることに風穴をあけていく。こういうのはとても哲学的でわたしは面白い。大分前に読んだので内容がうろ覚えだがこれからの「正義」の話をしよう (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)を再読したくなった。このサンデル教授の授業を受けているような、わたしにとってのコンビニ人間はそういう本だった。

 他人の正義はわたしの正義ではない。正義とは他人の正義と自分の正義をすり合わていく中で常にアップデートされ続けていくものだと思っている。それは民主主義とかもそうであるが、世の中にこれという決まった概念なんて結局無いし永遠の未完成だからこそ楽しいのかな、と。

余談。

 そういう意味で言うと最近よく言われている正しさハラスメントっていうのは、ホントくだらなくて誰かが自分の正義で自分を叩いてきたら、自分は自分の正しいと思う正義で叩き返したらいいという話なのではないのか?という話だと思っている。叩かれてシュンとしてしまうのは、自分自身それが正しくないということを知っているからであって、叩かれて黙るならその叩かれたあるべき正義によりそうべきなのではないのか?がわたしの今の意見。

※アイキャッチはコンビニに突っ込む車のイラスト。この本には個人的に合ってるイラストかなと思って選んだ。いらすとやさんは仕事が出木杉。感謝。